短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

最強の守護霊【ゆっくり朗読】6844-0110

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僕の知り合いにお祓いの仕事をしている人がいる。

知り合いというか、最寄り駅の近くの立ち飲みで出会ったおばさん。

SMAPの世界に一つだけの花が流行っていた頃だと思う。

引越ししたばかりの頃で、仕事帰りに一緒に飲む友達がいなくて、気軽に入れそうな立ち飲み屋で飲むようになったのがきっかけ。

で、そのおばさん俺を見るなり

「ギャーッ」って叫び始めた。

実を言うと、結構慣れっこで、よく知らない人から叫ばれます。

叫ぶならいいんだけど、

「あの人、怖いんです。捕まえてください」って通報されたこともあった。

なので、「またかよ……」みたいな気持ちで無視してた。

けど、そのおばさんは今までの人と違って話しかけてきた。

「どこからきた?」

「仕事はなにしてる?」

「両親はなにしている?」

なんて、まるで尋問のように矢継ぎ早に質問された。

まぁ、こんなおばさんの友達も良いかと思って、質問に答えていた。

それからしばらくして、そのおばさんが

「今度、あたしの店に来い!」って言いながらお店のカードみたいなものを渡された。

まぁ、興味ないし、凄い上から目線で話されてムカついていたから、直ぐ様、そのカードは捨てた。

ところが、後日、その立ち飲み屋でまた会ってしまい、その時は無理やり店に連れてかれた。

というのも、おばさん以外に痩せたおじさんと若い女がいて、ちょっと逃げれなかった。

ちなみにおばさんは「フジエさん」

若い女は「ミドリちゃん」

おじさんは「サダオさん」ていう。

「絶対、宗教の勧誘だよなぁ……」

そう思いながら、その三人の後ろに付いていった。

店に行くまで、誰も喋らないもんだから、ミドリちゃんに話しかけてみたら、

「ヒィぃいー」

とかいって、会話ができなかった。

それからサダオさんに、

「ごめんな、君が怖いんだ」

なんて言われたから、なんか凄い悲しかったの覚えている。

で、店に着いた訳だが、だたの占いの館だった。

宗教の勧誘じゃなさそうだなと思い、「占いでもしてくれんのかな」と期待していた。

で、店に着くなりフジエさんが、

「あんた、私たちと仕事しないか?」

って言われた。

「はぁ?」と言いながら聞いていたら、なんでもその三人はお祓いを仕事にしているらしく、僕に付いてきて欲しいと言われた。

その当時は一応、ある会社の社員だったので、「仕事あるんで、無理ですよ」と断った。

でもそのおばさんは引き下がらず、

「土日のバイトだと思ってやってくれないか?」

と頼まれた。

まぁ幽霊とか神様とかまるで信じないので、まぁいいかなぐらいでOKした。

早速、次の週末にお呼びがかかり、都内某区のある一軒家に連れてかれた。

家からそう遠くは無いので自転車で待ち合わせ場所に行ったら、「徒歩で来い、アホ」と怒られた。

渋々、近くに自転車を止めて、その一軒家に入っていった。

入った途端、フジエさんと連れにミドリちゃんが、

「あぁ、いますね、いますね」とか言い始めて、しかめっ面になった。

ただ、僕には何がいるかも分からなかった。

普通の一軒家だと思った。

居間には中年夫婦がいて、僕らにお茶やら、お菓子を出してくれた。

笑ってたけど、かなり引き攣ってたの覚えている。

しばらくすると、フジエさんが、

「早速、始めましょう。その部屋に案内してください」といって、立ち上がった。

何が始まるのか、よく分からないまま、二階に案内された。

階段上がると左右に二部屋あって、その右側の部屋の扉の前で止まった。

扉にはアルファベットで「TAKESHI」って書いてあった。

「ここです」

そう中年夫婦に言われた。フジエさんとミドリちゃんは、背負っていたリュックサックの中から、塩を出して、ペットボトルの水と振りかけ、両手にまぶした。

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何が始まるんだろう?

とか思いながら、俺も両手に塩まぶした方が良いのか聞いてみると、

「お前には必要ない。ただ言われたとおりにしろ」と言われた。

中年夫婦には何があっても、絶対に取り乱すなと注意をしたフジエさんは、扉を開け中に入った。

僕も後ろに続こうとした時、中から黒い影がフジエさんに覆いかぶさってきた。

TAKESHIという中学生ぐらいの少年だったが、異様に眼がギラギラして歯をむき出しにして

「ガジャガジャ、ガジャー!」

みたいな事、叫んでた。フジエさんの首に噛み付こうとしていたので、流石に僕もこりゃイカンと思い、少年を引き剥がそうと彼に近寄った。

TAKESHIくんは僕の顔を見るなり、震え始め、ベッドの隅っこに逃げて身を丸めた。

「体のどこでもいいから、引っ叩け!」

フジエさんにそう怒鳴られた。

なので、悪いなぁとは思いながら、丸まってる背中を引っ叩いた。

そんなに強く叩いた覚えは無かったが、

「うぎゃー!」

とか言って、TAKESHIくんは泡吹いて倒れた。

倒れているTAKESHIくんを介抱しようと両親が近寄る。

「そんな強く叩いてないよな」とか思いながら横目で、フジエさんを見ていると、

「これでお祓いは終りました、もう大丈夫」

そう言った。たしかそう言ったと思う。

それから、TAKESHIくんをベッドに寝かして、中年夫婦にお礼を言われながら帰った。

なんでもTAKESHIくんが大人しく寝たのは、半年振りだったそうだ。

ちなみにTAKESHIくんの部屋は物凄い事になっていた。

物は多分危ないから片付けたのだと思うけど、壁という壁に切り傷や穴があった。

帰り道、あまりに意味がわからなかったので、フジエさんに「意味がわかりません」と素直に言って、色々聞いてみた。

可哀想に一緒に来ていたミドリちゃんは帰り道の途中でゲロを吐いていた。

「あんたは相当なモノをもってるね」

フジエさんにそう言われた。

どうやら、言い方は宗教やお祓いの流派によって変わるらしいが、「守護霊」や「気」なんて言われてるものらしい。

そんなに凄いのかと思って、「そんなに良いんですか?」と尋ね返すと、

「いや、逆だ。最悪なんだよ、あんたの持ってるもの」

そう言われた。

最悪じゃダメじゃないか、と思ってたので、「最悪って、それじゃ駄目じゃないですか」と言うと、

「普通はな。だけどお前は普通じゃない。なんでそれで生きてられるのかおかしい」

フジエさんに言わせると、俺のもってる「モノ」ってのが、相当ひどいらしい。

実はミドリちゃんがゲロを吐いたのも俺がTAKESHIくんを叩いたときに、祟られたらしい。

まぁ色々聞きたかったのだが、あまりにミドリちゃんが気分が悪くなってしまったので、フジエさんとミドリちゃんは、先にタクシーで帰った。

僕は止めておいた自転車で帰った。

フジエさんのお店でなんと一〇万円ももらえた。

本当はいくらもらってんだろう?そう思ったけど、中学生の背中引っ叩いて一〇万円ならいいや、と思って喜んでた。

実を言うと、それから少しして、僕は留学した。

その当時の仕事よりも、やりたい事があったのが理由だ。

まぁ結局三年前に戻ってきたものの、仕事がなくキャリアも無く、派遣をやりながら生活している。

三年前に帰国した後に、フジエさんにあった時に言われたのが、

「あんたのそれ、かなり逞しくなってるよ」

そう言われニヤっと笑われた。

なんでも僕の「モノ」は異国の地でセイリョク(精力?生力?どちらかわかりません)を養ったらしく、以前よりパワーアップしているらしい。

一応真面目に勉強してただけなんですけどね。

それから三年、お祓いのバイトをしている。

ただ、フジエさんや、ミドリちゃん、サダオさんは、いわゆる霊感的なものがあるらしく、色々見えるらしい。

ところが僕は本当に何も見えない。

なので、今でも引っ叩いたり、話しかけたりするだけである。

残念なのは今でもミドリちゃんは仕事が終わるとゲロを吐く。

僕のせいなので、いつも申し訳ない気持ちで一杯になる。

で、明日も実は一個仕事が入り、終わったら風俗行こうと考えてます。

(了)

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