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中編 カルト宗教

霊感商法(3)【元統一教会信者の独白/ゆっくり朗読】n+#1718-1220

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お待ちかね、やってきました日曜日。

今日も先週と同じく10万円投資してみたのだが、結果は大ハズレ!かすりもしなかった。
これにはさすがのたっちゃんも青くなった。

「封印を解いたのに、なぜ効果がないんだ!?」
「このシールは封印のはずだが」
「そうに違いない。きっとそうだよな」
「そうなんじゃないかな」
「そうあってほしいなぁ・・・」

・・・そう思い込まずにはいられなかった。

「こりゃ、騙されたかなぁ」(気づくのが遅いちうの!)
「んー、くやしいな、返そうかなぁ」
「ん?まてよ。そうだ、佐藤大工に売っちゃうべぇ」

早速次の日現場で、草加から来ていた型枠大工の親方に話を持ちかけることにしたのだった。
自分でも機転が利くなあ、グッドアイディアだなぁ、と思った。

「佐藤さん。美術品に興味ないっすか?」
「なんだよ、おめえ、なに売りつけるつもりだ?」
「大理石の壷なんすけど、古賀政男も持ってるらしい、いい壷なんすよ」
「ふーん、いくらすんの?」
「200万」
「なにぃ、にぃひゃくまあーん?ばかやろ、んなもん買うか!」
目がマジで怒っていた。やっぱりだめか。トホホ・・・

それで、とうとう彼女に電話でクレームをつけることにした。

現場では、このやろう、てめぇ、ばか、こんちきしょう、すっとこどっこい、というような罵声が飛び交っていて、聞いたり言われたりするのには慣れているのだが、人を脅かしたことなどないぼくは、精一杯ふてくされた物腰でクレームをつけてみた。

「ぜんぜん、いいことないんすけど、どうしたんすかねぇ」
「ぼくの部屋、どろぼうから入られるし、車、運転してたら追突されたりとか、お金だって出ていくだけっすよ。なんにもいいことないじゃないっすか」

どろぼうも追突も、方便で言ってるのではない。実際あったことだ。(しかし、どろぼうも目もくれないという、高級美術工芸品って一体、何?)
その事件がますますお壷さまに不信感を募らせる要因となった。ぼくとしては、彼女に精一杯のクレームをつけたつもりだった。
が、彼女の口からは予想もしないこたえが返ってきた。

やけに明るい声で
「そうですかぁ。でも追突だけでよかったですね。命が無事だったのはお壷さまのお陰ですよ」
「へ?」
「もし授かっていなかったら、命を落としていたかもしれませんよ」
「どろぼうに入られたのも、なにかの警告ですよね」
「たとえば、大難の前の小難のような・・・」
「もしかしたら、工事現場でクレーンが倒れてきて、下敷きになってしまうかもしれませんよね。足場から落ちてしまうかもしれませんよね」

たしかに。現場は常に危険があぶない。
「ですから、どろぼうに入られたことで、大難を防ぐことが出来たのかもしれません」
「これもお壷さまと、ご先祖さまのお陰なんですよ」
「あ、そうだったんですかー」

ぼくは、妙に納得してしまった。
「じゃ、今度こそ、いいことあるんすかねぇ」
さっきまで入っていたブルーはどこかへ消えていた。

※その後のぼくとお壷さまの関係はというとですね。実は寮が火事になってしまいまして、そのドサクサに紛れてお壺さまはどこかへ行ってしまったのです、はい。きっと土に還ったのでしょう。

火事に遭って、ぼくは思った。

お壷さまのお力で大難を小難にしてくださったのだろうか。とゆーことは、火事で焼け死ぬところだったということなんだろうか。うわぁー、こわいなー。そう考えるとありがたいなー。お壷さまあー。うう・・・(歓喜の涙)
このように、どこまでもどこまでもプラス思考のたっちゃんだったのである。

だがまてよ。そういえば・・・
「酒田の大火のときでさえ、私の家だけは燃えなかったんだっス。ホントにお壷さまのお陰だっスぅ」
とかなんとかいう体験談のビデオを見たことがあったような気がするぞ。
この記憶が蘇ってきたのはズーッとあとのことだった。時すでに遅し。

お壷さまに聖なる神秘のパワーを感じて(信じ込まされて)いたぼくは、俗に言う『おつぼさま教』の信者のようなものだった。売った側からすれば、優良顧客になるのだろう。(いいカモという説もある)

その後、『生水』とかいうビンに入った炭酸水を売りにきた。ちなみに "なまみず" とは読まず、せいすいと読む。いかにも胡散臭そうな"聖水"と書くより、生きた水ということで、飲めば元気になりそうなネーミングだ。(どこが!?)
なんでも韓国の有名な鉱泉だそうだ。早速、勧められるままに、サンプルを飲んでみると_________
「まずーーーーい!」(こころの叫び)
夏みかんに重曹をつけて食べたときのあの忌まわしい記憶が蘇ってきた。
そう、あれは小学生の時分、重曹をかけすぎた夏みかんを食べ過ぎて、ゲロしてしまった思い出がある。あのいやーな感覚は今でも忘れられない。生水は、あの「しゅわしゅわー」な味そっくりだったのである。

「あんまり、うまいとは思わないっすけど」
「そうですか、最初は皆さん、飲みづらいというんですが、慣れてくると病みつきになるそうですよ。なんといってもミネラル分が豊富、健康にいいですからね」
結局、巧みなトークに畳み込まれて1ダース買うハメになった。

しばらくすると今度は、姓名学の先生とやらを突然連れてきた。

無料で姓名判断をしてくれるらしい。占いは好きなので断る理由はない。

「こちら、天水先生といわれまして、姓名学の専門家です」
「てんすいです。よろしくお願いします」

男の先生で、黒ぶちの眼鏡をかけたやせこけた貧相な人だった。歯も少し出ている、顔色も悪い。一応スーツは着ているが、襟が汚れているし、ヨレヨレだ。岩下志麻から、しゃきっとせんかい!などと怒鳴られそうな身なりである。肩に落ちている"フケ"もたっちゃんは見逃さなかった。ま、人を見かけで判断してはいけないので、いかんいかん、などと反省しながらポジティブシンキングして先生の話を聞く体制を整えた。

で、先生はというと、慣れた手つきで画数をしゅるしゅるさっさとレポート用紙に書きながら、画数の意味なぞを説明しはじめた。ところが画数を目で追っていくと龍の画数がちょっと違っている。十六画のはずなのに十七画と数えている。

「あのぉ、先生、ちょとすみません。たつっていう漢字の画数なんすけど、ちょっとちがうんでないすか」
「あ?どれどれ。いーちにいさんしーいごおろくひちはち……ん?…」
「あ、いや、私の流派はですね、この画数でと、とってるんですよ…ゴホン」
「あぁ、そうなんすか」

どうやら、画数の数え方を先生が間違ったと思ったのはぼくの思い過ごしらしい、流派によって画数の取り方が違うことを知って、ひとつ利口になったような気がした。でも、お壷さまの先生の画数の数え方と違うのはどういうことなのかな?と思ったが深くは考えない様にした。きっとお壷さまの先生とは流派が違うのだろう。

しかし、次の言葉には驚いてしまった。
「たつさん。今、凄い転換期ですねぇ」
「はぁ!?、お壷さまの先生も同じこと、言ってました」
「…殺生因縁と色情因縁と財因縁が出てますね」
「は、あ…」
なんだかお壷さまの先生と似たような話をしているなー、と思った。が深くは考えないことにした。

「姓名の姓という漢字は女から生まれると書きますよね。女から生まれる、つまり姓名は生命、いのちを表しているのです。たつさんが生まれたのはお父さんとお母さんがいたからですよね。その父母もその父母、つまり祖父母がいたから生まれたわけです。その又父母のまたまた父母と辿っていくと、相当の人数のご先祖さまがおられることがわかると思います。結果として、たつさんがこの世に生まれたのはご先祖さまという原因があったからですよね。ですから、ご先祖さまのいろいろなものを受け継いでいるのです。よく、名は体を表すといいますが、名前を見ればご先祖さまのことがわかります。良い種からは良い実がなりますが、悪い種からは悪い実しかできません。原因がわかれば結果がわかるし結果を見ても、因縁などというと八つ墓村のような恐ろしいイメージを浮かべますが、そうではありません。因縁には良い因縁と悪い因縁があるのです。八つ墓村は悪い因縁の例ですね。『因縁果報』という言葉を聞いたことがあると思います。『因縁果報』の因は原因の『因』、縁は血統、血縁の『縁』、果は結果の『果』、報は"親の因果が子に報いー"ってありますけど、因果応報の『報』です。原因が結果にあらわれて、報いを生じるということですね。たつさん。どうですか、わかりますか?」

やっぱり、人は見かけによらないものだ。冴えない風貌の先生だったが、しゃべりはじめると、立て板に水の如く流暢に話す。意外に話は上手い。ぐいぐい引き付けられるようだ。

「…ですから、結果としてあらわれた名前を通して、原因である先祖を知ることが出来るのです。画数には吉数と凶数がありますが、吉数が良い因縁を、凶数が悪い因縁を表しています。たつさんの場合、ほらこの吉数がご先祖さまの功労を表していますから、世のため人のために尽くしたかたがおられるのです。それと、凶数と凶数を結んだこの線。この線ことを因縁線と言って、いろいろな因縁がわかります。これは悪因縁を表しているのです。たつさんの名前を見ると『殺生因縁と色情因縁と財因縁』が出ていますね。先祖に悪い原因があれば後孫には必ず悪い影響が出てきます。丁度、種と実の関係ですよね。種が悪ければ実も悪い
のです。たつさんの家系はお武家さんの血統なので、人を殺めています。刃物で傷つけてますので、その結果として体にメスが入ったり、脳の血管がぶちぶち切れたりする、ほらちょうど刃物で血管を切ったようになる脳溢血になったりするんですよ…」

そういえば、ぼくは、小学校に上がる前にだっちょうの手術をしているのだ。じ
いちゃんは脳溢血で亡くなった。当たってる…。
おそるべし天水先生。

つづく……
■次話 ⇒ 霊感商法(4)
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