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中編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

明晰夢の女

投稿日:

俺は明晰夢を見ることができるようになりました。

15 名前: ◆nWGcrqn3AM 投稿日:02/10/23 16:06

俺は寝ていて夢を見ないということはほとんどなく、そのうち三回に一回ぐらいは確実に夢の中で、これがは夢なんだと気づくことができます。

慣れて来ると、ある程度コントロールできるようになり、空を自由に飛んだり、意識した場所に無条件にテレポートすることができるようになってきました。

俺の場合は子供の頃から夢の内容をほとんど記憶していて、一時期は夢日記のようなものまでつけていたことがあります。

どうしてそんなことをするのかというと、いわゆる既視感(デジャブ)が起こったときにそれを記録していると、その内容を改めて見かえしてみると単純に楽しいからです。

それと同時に、「やはり運命というものはあるんだな」と実感していました。

過去に見た夢が数ヶ月、もしくは何年か経って実現するのだとしたら、それは変えられないことに思えるからです。

しかし、やはり不安なこともあります。

明晰夢じゃない状態、つまり普通に夢を現実だと思っている状態で自分自身が死ぬ、という夢を見たときです。

もし、これが同じ状況で既視感が起こったとしたら、それはもう変えられないからです。とても恐ろしく思えます。

その明晰夢の中での話です。

今まで見た中であの出来事が一番不思議でした。それをお話します。

いつものように眠りにつき、そして夢の中に入っていきました。

現実的で尚かつ自然な始まり方だと、気づかないときが多いのですが、その日は夢の始まりが唐突にビルのエレベーターの中のような場所だったので、なんなくこれが夢だと気づけました。

エレベーターは動いたままでした。

どうやら下に向かっているようです。

回数のボタンをみると14階まであり、B2のボタンが点滅していました。

どうやら地下二階に向かっているようです。

「チン」という音ともに多少の振動があり、そしてエレベーターが停止しました。

ドアが開くとそこは普通の地下駐車場。

少し薄暗く、でもどこにでもあるような普通の駐車場でした。

車もちらほらと止まっています。

明晰夢の状態なのでさっさと外に出て、好き勝手にやろうかとも思いましたが、今回はその夢にもう少し便乗しようと思いました。ただの気まぐれです。

止まっている車を適当に選びドアを開けて、キーを回してエンジンをかけました。

そして普通に外に出てみました。

しかし自分がイメージがそうさせているのか、外に出ても明るさからもまだ昼間だというのに道路に一台も車が走っていません。

人も歩いていませんでした。

普段見る場合は大抵現実と同じように人が行き来し、ゴミゴミとした街中が出てくるので、なんだか貸し切りのような良い気分でした。

辺りは高いビル郡が建ち並ぶ都心のオフィス街のような雰囲気。

そのまま車を適当な方向に走らせのんびりとドライブを楽しんでしました。

そのまま車を走らせていると突然バス停のような場所に一人の女性が立っていました。

こちらに向かって手を上げています。

今まで全く人が登場しなかったので、退屈ということもありこれはいい機会とばかりにその女性の前に車を止めました。

すると当たり前のように普通に車に乗り込んできます。

その女性は綺麗めな顔立ち、髪がセミロングくらいで、ベージュ色のスーツを着たほっそりとした印象の女性でした。

なんだか嬉しくなり、車を走らせて、声をかけてみました。

とりあえず第一声は

「こんにちは」

すると笑顔で

「こんにちは。乗せてくれてどうもありがとう」

と答えてくれました。

俺は続けて、

「ええーと……お名前は?」

と少し照れくさそうに聞いてみました。

「わたしは鈴子っていいます。あなたは?」

「俺は清助。よろしく」とすぐに返答しました。

その後も車を走らせながらありきたりな会話をしました。

そして、ふと我に返り、一ついじわるな質問をしてみることにしました。

「えーとさ、ちょっと聞きたいんだけど……」

「え?なに?」

「これってさ。あ、いやこれって言うのは今のこの状況」

「うん」

「これがさ、夢だってもしかして気づいてる?」

「え!!」

「どうしたの?」

「あなたもなの?私はてっきり清助さんは私の夢に登場する単なる登場人物だと思っていたのよ。ほんとに驚いたわ……」

「え……君もそうだったのか。驚いたよ……俺もそう思ってたから」

「まさか、同じような人に会えるとは思わなかった。こんなことは初めてだし」

「俺も初めてだよ。ほんとまさかだね」

「……ということはつまり、わたしと清助さんの意識が繋がってるってことになるのかしら?」

「多分そういうことだろうね。つまり現実でも会おうと思えば会えるってことになる」

「あははは。そうよね。おもしろそうだし、会ってみる?なにから教えたらいいからしら。やっぱまずは電話番号かな?」

「メモる物がないからちょっと不安だけど……まあそうだね」

「私の電話番号は090-1234-5***よ。暗記してね(笑)」

「……うん。暗記した。たぶん大丈夫(笑)」

「それじゃ夢から醒めたら絶対するよ」

「うん、絶対ね」

とこんな感じで話をしました。

この後からは残念ながらよく憶えていません。

しかし夢の中で電話番号を聞けるなんて思ってもいなかたったし、そしてそれを正確に暗記していたことが今考えてもすごいです。

夢から醒めて、すぐ直後にその番号を紙にメモしました。

そしてすぐにかけてしまいました。

トゥルルルルル……

コールが2回も鳴らないうちに……

「はい、もしもし??」

焦ったような感じの女性の声がしました。

「あの……鈴子さん?……ですか?」

「え!!……やっぱり。清助さんだよね?」

「あ!!!!そうそう!清助です。清助!」

「キャーーやっぱりぃ!!ほんとにほんとだったんだ!あの夢」

「おーー!すごいな。これ。ほんとに……」

「ほんとに?これほんとに?現実だよねえ??」

「うん、ほんとにほんとだったんだよ。ていうかそんな興奮しないで少し落ちついて(笑)」

「車に乗せてくれた清助さんだよね?(笑)」

「うんうん、だからそうだって(笑)」

そして、その後も話が弾み、やはり当然のように会ってみようということになりました。

その日は平日だったので、すぐに会いたいという気持ちもありましたが、距離も少し離れていたし、なによりその鈴子さんは仕事が忙しいとのことで今度の日曜日にでも、ということになったのです。

 

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そして三日後。

その日曜日になりました。

それまでも毎晩電話をしていました。

また同じように夢の中で会ってみようなどと話していましたが、その三日間はお互い明晰夢を見れずそれは叶いませんでした。

電車に乗って待ち合わせ場所に向かいました。

そこに行くまでの間、あらぬ期待まで抱いていました。

なぜならその頃俺には彼女もいなく、一人寂しい毎日を送っていたからです。

そして、待ち合わせ場所に到着。

一目でわかりました。

そこには紛れもなく鈴子さんが立っていたのです。

すぐに声をかけました。

「鈴子さん?」

「あ!清助さん?!キャーほんとに会えたね!」

「びっくりしたよ。あのとき見たまんまだったから……」

「そうなの?あ、でもわたしも同じだよ。夢で見たまんま!」

「え、そうなんだ?自分で出てくる自分自身を見たことないからもしかしたら違う風に映ってるのかと思ってたよ」

「うん。そうだよね。まさかそのままだなんて……」

その後、とりあえず立ち話もなんなので、とりあえずどこか店に入ることにしました。

お互い夕食もまだだったので、どこかで食事をしようということになりました。

鈴子さんはその場所に詳しかったので知っている店があるということで、そこに案内されました。

店に入るとすぐに適当にオーダーし、もちろんその夢の話で持ちきりでした。

そして……

話が進んでいるうちに少しがっかりしました。

鈴子さんは既婚者ですでに子供が二人いるということが分かったからです。

年齢的にもかなり若そうだしとてもそんな風に見えないのに、かなり早婚だったらしく、子供がすでに3歳と1歳になってるとのことでした。

こんな奇跡的な出会いなのに、こんな形で会うことになったのはなんだか複雑で、そして残念でたまりませんでした。

一体世の中にこんな形で出会う人間が何人いるんでしょう?

運命というものを呪いました。

そして話しているうちに既視感を感じ、帰ったあとに昔書いた夢日記を見返してみると、その店の雰囲気から何を注文したかも明確に記録してあり、そして知らない女性と話していると記されてました。

その女性の人とは今も友達……です。

たまに電話したり、何回か会ったりしています。

この話はこれで終わりです。

余談ですが、あれから二回だけ夢の中で会うことに成功しました。

お互い意識しているほうが成功率が高いようです。

(了)

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