ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

短編 r+ 洒落にならない怖い話

ゴミ袋が招いた夜の侵入者 r+3337

更新日:

Sponsord Link

大学進学を機に、静岡から神奈川へと引っ越し、一人暮らしを始めた。

新しい生活には少なからず期待と不安が入り混じっていたが、慣れない環境に順応するため最初のうちはきちんとした生活を心がけていた。しかし、次第に大学生活にも慣れ、だらしない性格が顔を出すようになってきた。

ゴミ出しの習慣もその一つだった。最初の頃は、きちんとゴミを仕分けし、指定の曜日と時間に鍵を閉めてゴミ捨て場へ向かっていた。しかし、次第にその行為が面倒に感じ始めた。深夜に適当に仕分けもせず、玄関の鍵を開けっぱなしにしてゴミを捨てに行くようになったのだ。

そんなある日のこと。大学の課題に追われ、深夜3時を回ってもパソコンと睨み合っていた。その日は締め切りが迫っていたため、つい夜更かしをしてしまった。そして、課題を提出し終えた後、思い出したようにゴミ出しへ向かった。玄関の鍵を閉めるのも面倒に感じ、そのままゴミ袋を持ち出し、適当にポイっと放り投げて帰ってきた。

玄関に戻った瞬間、奇妙な違和感が襲った。風呂場のドアが閉まっていることに気がついたのだ。自分は普段、風呂場のドアを閉める習慣がない。体の奥底からじわりと冷たいものが這い上がってくる感覚に駆られた。

包丁を手に取り、震える手で風呂場のドアをゆっくりと開けた。そこには、ボサボサの髪をした中年の女が立っていた。目が合った瞬間、彼女は驚くどころか、鋭い視線でこちらを睨みつけた。

理解が追いつかないまま、反射的に風呂場のドアを勢いよく閉めた。心臓の鼓動が耳に響くほど早まり、震える手で警察に通報する間、女はドアを激しく叩き続けた。ドアが壊れるのではないかと思うほどの衝撃音が続く。恐怖に凍りつきながらも、全身でドアを押さえ、ただひたすら警察の到着を待った。

やがて、警察が駆けつけ、女を取り押さえた。だが、連行される間際、その女は声を張り上げ、こう叫んだのだ。

「こんなはずじゃなかった!なんでこんな冴えないブサイク男なのよ!クソが!」

不法侵入されただけでも十分な恐怖を味わったというのに、挙句の果てには容姿を侮辱される始末。怒りと情けなさが入り混じり、何も言い返すことができなかった。

その後、警察から聞いた話によると、女はゴミ捨て場で自分が出したゴミ袋を漁っていたという。そこに入っていた大学からの書類や生活感の滲むゴミの数々を手がかりに、「男子大学生が一人暮らしをしている部屋」だと判断し、侵入を企てたらしい。

どうやらその女は、「男子大学生」という響きに夢を抱いていたらしい。しかし、実際に侵入した部屋の住人が「冴えない男」だったことに激怒したのだろう。だが、その怒りをぶつけられる筋合いなどない。勝手に侵入され、勝手に失望され、勝手に罵られる。この理不尽さをどう受け止めればいいというのか。

それ以来、鍵をかけることには細心の注意を払うようになった。同時に、ゴミ出しの仕方も改めた。とはいえ、事件の恐怖が完全に消えるわけではない。ふとした瞬間に、風呂場のドアの向こう側にあの女の姿が浮かぶような気がするのだ。

「ストーカーされるのは美男美女だけ」
そんな誤解は捨てたほうがいい。容姿など関係なく、他人の生活に侵入しようとする人間は、どこにでも潜んでいるのだから──。

(了)

[出典:614 :本当にあった怖い名無し:2016/07/22(金) 05:15:18.08 ID:Xwlp7Kw90.net]

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, r+, 洒落にならない怖い話

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2025 All Rights Reserved.