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短編 怪談

マッチ箱

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小学校六年の頃の話である。

148 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:02/12/15 06:37

私は父親の仕事の関係で、

一時期鎌倉市から宇都宮市に転校していた。

転校後しばらくすると「検便」のお知らせがあった。

「検便」ってのは、「ポキール(だっけ?)」とかいうシールとか、

銀の容器とか、ビニール瓶とかを使うあれだよね。

しかし、検査する人も嫌だろうね。

さて、検便の前日、帰り際のホームルームで、担任は

「明日は検便だから絶対忘れるなよ!」

と念を押した。

だが、ホームルームが終わっても容器などが配られる気配もない。

「おかしいなー、忘れてるのかなー」

と思い、私は隣の席の友人に

「容器は配られてないよね」

と話しかけてみた。

すると、彼は怪訝そうな顔で

「(栃木弁で)マッチ箱は自分で用意するに決まってるでしょっ」

と言うのだ!

・・・決まってんのぉ? ねぇ。

疑問が怒りに変わった私は、

「おいおいマッチ箱だってよ、ふざけんな!」

と思ったが、友人はどうも本気でそう言ってるらしかった。

私の憧れの栗原さんも、当然の顔をしてうなづいている。

「嘘だろー!!」

私は小六にして群集の中の孤独を味わっていた。

家に帰って、私は母親に検便とマッチ箱の話をしたが、

当然のごとく信用してくれない。

あげくのはてに、

「いつまでふざけるんや」

と怒られる始末だ。

しかし、私がなおも必死で訴えるため、ようやく母親も

半信半疑ながら、マッチ箱を探し始めた。

既に夜中である。

ところが間が悪いときはしょうがないもので、いくら探してもマッチ箱は見つからない。

このままでは「検便忘れ」ということでさらし者になってしまう。

転校生の立場は微妙なのだ。

必死で捜索を続けていると、「あったわよ」という母の声。

ほっとした。

しかし、母親が持ってきたマッチ箱は、なんと

商店街でもらってきたお得用のでかいマッチ箱だったのだ!

私は小六にして、人生の岐路に立たされていた。

「検便忘れ」という汚名をかぶり、別の日に一人だけ

ウンコの入ったマッチ箱をもっていって笑い者になるか、

それともお得用マッチ箱で、笑い者になるかだ。

だが私は楽天的な子供だった。

「まあマッチ箱なんていろんな大きさがあるし、

適当な大きさのものが見つからないのは自分だけじゃないだろー」

と考えて、そのまま提出することにしたのだ。

翌日、担任の机の上にマッチ箱が載せられていく。

なんだかお楽しみ会のプレゼント交換みたいな

光景であるが、中身は大違いだ。

しかも集まりゆくマッチ箱は、どれも皆小さかった!

そんな中で…

私のお得用マッチ箱はやはり異様だった。

まるで箱いっぱいにうんこが詰まっているように見える。

私は恥ずかしかった。

畜生、俺は大グソ垂れだと思われるのだ。悔しい。

皆が大笑いしている。

その笑いのさなか一人の女生徒が席をたった。

憧れの栗原さんである。

彼女は、私が笑い者になるのが耐えられなかったのだ。

「うやー、なんだよ。俺って好かれてんじゃん」

と、ちょっぴり嬉しい私である。

しかーし! 

隣の友人は私にささやいた。

「(栃木弁で)おまえ、栗原んちのマッチ箱を

検便に使ったんか」

なんということだ。

そういえばマッチ箱には、「栗原輪業」と書いてあった。

私は憧れの女生徒の家のマッチ箱に

うんこを入れてきてしまったのだった。

その後、彼女とは卒業まで二度と口をきくことはなかった。

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