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短編 カルト宗教

霊感商法に魅入られた男【元統一教会信者の独白/ゆっくり朗読】n+#3461-1220

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元統一教会信者『おやぢ』さんが遺した幻のメルマガ『おやぢの独白』復刻シリーズ

はじめに

Truth is stranger than fiction. 事実は小説より奇なり。
リアルな体験はフィクションに非ず(あらず)

この体験談は、お人好しの土木青年のぼくが某カルト教団でケツの毛まで抜かれ、やっと目がさめたときには莫大な借金を背負っていたという、なんとも情けない超典型的騙されパターンから始まります。
しかし、これではいけない!と一念発起して起業家を夢見ながらさまざまなサイドビジネスを手がけたのはよかったものの、気がついたらますます貧乏になっていた・・・という可笑しくも悲しく生々しい実態が浮き彫りにされています。

巷では、将来に備えてサイドビジネスをやっている人が多いと聞く。だが、
「貴方の今までの年収額が、月収に変わるビジネスです!!」
などと景気のいいことを言ってるわりには、やってみると経費が年収に近づいてしまったりするものだ。(体験者は語る)
男なら誰でも思うのではないだろうか。金持ちになること、一国一城の主として独立すること、起業家になることなぞを。

ぼくは一生サラリーマンなんかで終わりたくないんだ。こんなに能力があるのになぜ上司はわかってくれないんだ!給料だって安いし。ぼくにいわせれば、あんなもの大した仕事じゃない。ぼくにやらせてくれたら、もっと実績あげられたのに。そんなもの自分でやったほうがはやいって。ん?まてよ、あっそうか、独立すればいいんだ。なあんだ、そうすれば思う存分能力を発揮できるじゃないか。なんでそんな簡単なことに気づかなかったんだろう。僕っておばかさん。よぉし、会社をつくるぞ!社長になるぞ!儲けるぞ!うおおぉーっ。
よくこんな奴がいる。困ったものだ・・・すっかり気分はビルゲイツ状態。

ぼくの場合、おとなしく土方をやっていれば、今ごろ土建屋のおやじくらいにはなっていただろうが、どこかで歯車が狂ったらしい。サイドビジネスに手を染めたばかりに儲かるどころか、銭を失い貴重な時間と青春を失ったジャンキーな男。日本中探してもこんなアホな男はどこにもいないだろう。
キャッチ商法、霊感商法にはじまり、次々商法、ねずみ講、マルチ商法、ネットビジネス、ありとあらゆる怪しいビジネスを体験した「バカお人好し」が過去を回想しながら告白する、驚愕の実態の数々。

それでは、非フィクション劇場を最後まで存分にお楽しみください。

プロローグ~サイビジャンキーへの道

十七の春だった。雪まだ残る山形から、東京に出てきたのは・・・
しぇんしぇ(先生)が言ってた。
「東京てば、オッカネェどごなんだぞい。とぐに、ワリイ女さ気ぃつけろよ」
ぼくは、足立区の土建屋で一所懸命働いていた。
そこは、盆、暮れ、正月くらいしか休みのない忙しい(労基法なぞ関係ない)とこだった。背広を作ったものの、なかなか着る機会もない。憧れの東京を満喫することもできなかった。
「たつっ!チンタラしてんぢゃねぇ!気合入れて穴掘れ!コノヤロ」
「オラオラ、腰入れて!こうだ。ちゃんとやれ、このバカ」
「おうおうっ!型枠パンクしたぞー。たつ!バケツでコンクリ、カッパげい!」
親方の罵声が容赦なく飛ぶ。

仕事が終われば毎日酒盛りだ。そう、あの山谷ブルース(ふ、古い)♪今日の仕事はつらかったぁー・・・あとはー焼酎をあおるだぁけぇー♪の世界である。
雨がふれば、朝から酒かっくらって、花札マージャンチンチロリン。土日はもちろんおンマちゃん、片手にツルハシ、耳はラヂオに釘付けさ!てなものだ。ぼくは土とコンクリにまみれながら、酒と博打に明け暮れていた。青春だった。

ある時、珍しく休みがとれたので、ショウノウ臭い一張羅の背広を着て、花の銀座に出かけることにした。たっちゃん上京して3年目、はたちの春である。

もの珍しそうにキョロキョロしながら銀ブラをきめていると、一人のオニイチャンが目の前にあらわれた。
「映画に関するアンケートをお願いします」と頼まれたので、小学六年生から献血をしてるぼくとしては、お安い御用と快く受けることにした。
一通りアンケートに答えると今度は映画を無料で見れたり、いろんなサービスがついているとかいうチケット綴りをを薦められた。なんでも一冊3000円らしい。へぇーそりゃお得だな、そいじゃ友達の分もと3冊買った。

今でこそ、そりゃインチキだ!とすぐわかってしまうこのぼくだが、当時は純粋無垢な好青年ゆえ、人を疑うことなど全く知らない。そういえば、じいちゃんは連帯保証人になって借金をそっくり被ってしまった経歴の持ち主だったそうだ。そのせいだろう、自慢じゃないが、ぼくはよく「人が好いねぇ」と誉められたものだ(苦笑)

「たつ、おめぇって人がいいんだなぁ」
「金もたくさん持ってるし。ねっ、たつセンセ」
親方と先輩が羨望のまなざしで言う。
「いやー、そ、そうでもないっすよ」
フッ、よせよおい、そんな・・・ぼくの寛容な人格にあらためて感動されちゃっちゃあ、照れるじゃないか。

英会話のセットを買った。恋人紹介センターの会員にもなった。競馬丸秘必勝法も買った。しあわせの壷は買ったし、開運の印鑑も買った。あれも買った、これも買った・・・
「ぼく、いいもの買ったんすよ」
仕事を終え、飯場で一杯やりながら、ぼくは得意になってその商品の説明をしていた。
いまだから告白しよう。実はつい最近まで『人が好い』を誉め言葉と思ってい
たオメデタイ人だったのだ。
ぼくって、セールスマンやマルチ商人、はたまた新興宗教の勧誘をするには格好のカモだったのだろうな、きっと。とほほ・・・

「東京てば、オッカネェとこなんだぞい」

気がつくと、しぇんしぇの言葉は遠い過去のものとなっていた。
そもそも、なぜぼくがサイビジャンキーになったのかといえば、土方以外に副収入が必要となったからである。
まじめに土方をしていれば食うには困らなかったにもかかわらず、副収入が必要になってきたのは、他でもない、借金地獄に落ちたからである。
自分で作った借金ならあきらめもつくが、お人好しの上にバカがつく『バカお好し』なものだからサラ金の名義貸しをしてしまったのだ。これが引き金となって地獄に転がり込んでいくことになるのであった。

借金地獄に落ちた決定的な原因はサラ金に手を出してからだが、下地となったのは実は、カルト的宗教団体との関わりなのである。
お布施という名目で金は吸い上げられるわ、布教という美名のもとに人狩りを暗に強制させられるわで、これに関わったらケツの毛まで抜かれるとは良く言ったものだと思う。
『○ムウ○イ教』などと揶揄されるように、基本的にぼくは、ネットビジネスもあやしい新興宗教も、同じカルトだと思っている。信者もディストリビュータも
『教えられたことを素直に信じている』こと
『絶対視している』こと
『自分達の世界以外を蔑んでいる』こと
『きれいごとをいう』こと
『自分の価値観を押し付ける』こと
『熱狂的であること』こと
『平気でうそをつく』こと
『人の意見進言に耳を貸さない』こと
『まともな話し合いができない、議論にならない』こと
等などがその理由である。(もっとあるがキリがない)

豊田商事事件がおきたのは昭和六十年(1985年)だったが、それと同じ頃霊感商法というのが流行っていた。
ぼくは年寄りではなかったので、豊田のセールスマンから勧誘を受けたことはない。そのかわり、ずーっと以前から朝鮮人参エキスからはじまって、幸福の壷、開運の印鑑、などを次々と買っていたおとくいさんであったのだ。もうこの時点で『霊感商法』と『次々商法』に引っかかってしまっていたってわけである。

サイビジャンキーへの道はここからはじまった。
霊感次々商法で金を取られて貯金もなくなったころ、カルト教団でボランティアのような真似事をしているうちに、世のため人のために生きる!為に生きる!なとど分不相応なことをやり出し、ますます貧乏になっていった。
そうしているうちに今度は、知人からサラ金の名義貸しを頼まれた。親から借りた金を又貸ししたこともある。『バカお人好し』は借用書など書かないから、結末はもうお分かりだろう。

時は流れ……

自分の足元も固まっていない奴が世のため人のためなど出来るわけがない!
『バカお人好し』は少し目が覚めた。
バカがとれて『天然お人好し』になった。ボランティアなどやってる場合じゃない。家族のために頑張らねば!そう思った。
だが、気づくのが遅かった。その頃は、もう親方、呆れてモノが言えない状態。仕事にならない奴をおいておく訳にはいかない。自然と『脱ドカタ』になった、てなわけである。さあ、いよいよ起業家の道を歩む時がきたのだ。
その時、負債総額1,200万円。四人家族を養うには少々荷の重い、決してメデタクナイ船出ではあった。

さて『脱ドカタ』したのはいいのだが、何をしたらいいのやら・・・。
起業家になりたいのだが、何をやりたいのか(やるのか)わからない間抜けな状態だったのである。そこで、巷に溢れる起業、独立、ビジネス情報誌を片っ端から集めて情報収集することにした。
これがきっかけで、宗教カルトと縁が切れたと思いきや、今度は経済カルトに引きずり込まれるとは誰が予想しただろうか。サイビジャンキーへの道、泥沼にハマるのは実はこれからだったのである・・・(涙)

■次話 ⇒ 霊感商法(1)
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