短編 怪談

駅の掃除屋【ゆっくり朗読】

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オレにはトラウマがある

890 :本当にあった怖い名無し:2023/07/17(月) 18:47:50.27 ID:7/+Tc+uP0.net

高校受験の際に、様々な理由からオレは少し遠くの高校に電車で通うことになった
その高校では入学時から地元の生徒の間で変な噂が流れていた
帰りが遅くなると駅のホームに不審者が出るというものだ

これだけの内容の噂だったら割とありきたりである
大抵は教師が生徒を早く帰宅させるためにつく嘘だ
だが、この噂はそういったものとはちょっと違った

生徒の多くがこの噂について把握してるのに、教師の方は噂について尋ねても全く知らない様子なのだ
しかし、この噂のおかげか生徒のほとんどは帰宅時間が早く、運動部の生徒でも居残り練習をせずに早く帰宅していた

オレの通っていた高校は地元の生徒がほとんどで、この噂は地元の生徒の間じゃあ有名らしい

ただ、オレが詳しい内容を聞こうとしても全員が口を揃えて「駅の掃除屋については聞かないでくれ」と言う

どうやら、噂の不審者は“駅の掃除屋”と呼ばれているらしい

噂の真相が気になったオレは、いっそのこと自分の目で確かめようと思い、夜の9時くらいの電車に乗ることにした

わざとその日は部室で時間を潰し、時間を見計らって駅に向かった

駅のホームで電車を待っていたが、その日のホームは誰かしらの食べカスだったりゴミだったりが散乱していていつもより汚かった

しかし、駅員が掃除をサボっているのだろうとあまり気にしなかった

食べカスとゴミには多種多様な虫が集っており、気味が悪かったためそれらからは少し離れた位置で電車を待つことにした

不審者がいつ現れるのか不安だったが、しばらくして電車が来たため、オレは期待外れのような、どこか安堵したような気持ちでドアの前まで近づいた

しかし、電車内にいたやつが変なやつだった

当時は冬場の冷え込む時期だったってのに、丈の合ってないせいで腹が出てる赤色のTシャツにグレーの短パンを履いた、角刈りのデブのおっさんが目を見開いた状態でドアの目の前に立っていた

コイツが噂の不審者だと、そう直感した

恐怖に支配されたオレは、急いでそのドアから離れて別のドアへと向かった

だが、電車内に乗り込む際、好奇心に負けてその男のことを横目で見てしまった

その男は降車するなり虫の集る食べカスへ向かって行き、それを無我夢中に拾い食いし出した

突然のことに思考が止まり、男の行動を凝視してしまう

男は落ちているものをなりふり構わず口に詰め込んでいく

その口からは食べカスと虫が溢れ落ち、その度に男はそれをかき集め、拾い直しては口に運んでいく

横顔しか見えなかったが、その形相は恍惚とした表情をしている

ハッとしたオレは怖くなって急いで電車内に逃げ込んだ

男はオレのことを気にもせず、拾い食いを続けている

不気味なことに、他の乗客は男のことを気にした様子がなかった

最後の乗客が乗り込んでからドアはゆっくりと閉じ、電車は発進した

電車に揺られながら、車内で何度もあの男が食べカスやゴミを拾って食べる姿がフラッシュバックした

しばらくの間は食欲が失せ、吐き気が常に付き纏った

あの日以来、オレは駅のホームに近づくたびに動悸がして、落ちてる食べカスを見た時には吐き気と共にあの時の男の顔がフラッシュバックするようになってしまった

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