ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

短編 r+ 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

除霊の儀式 r+1354

更新日:

Sponsord Link

俺が体験した、ちょっと不思議な「除霊」の儀式の話。

霊能者のアシスタントを始めて数ヶ月が経った初夏のある日のことだ。昼間、学食でのんびりしていると、霊能者から持たされていたPHSが鳴った。「今夜8時に家に来い。赤ワインを一本買ってこい」とのこと。言われた通り、安い赤ワインを一本手にして霊能者の家に向かった。

霊能者の家に着くと、いつものように裏口の横にあるブザーを押して到着を知らせる。それから母屋の裏にある待機小屋に行き、指示を待つのがルーティンだった。その日も同じ流れで、待機していると霊能者がやってきた。

その霊能者というのが、見た目は派手だけどどこにでもいそうな普通のおばさん。40代半ばくらいで、美人とまではいかないがキレイめな人だ。ただし性格はかなりエキセントリックで、ちょっと扱いづらいところがある。その日はまず、車に荷物を積むよう指示された。

荷物は、ブランド物の大きなバッグがいくつかに、白木で作った小さなテーブル、そして儀式でおなじみのラジカセ。これらを仕事用のワンボックスカーに積み込むと、霊能者を乗せて近所の史跡的な広場へ向かった。

広場に着き、来客用駐車場に車を停めると、正門の前に立っているオッサンがいた。彼が依頼主なのかは不明だが、霊能者はそのオッサンと何か話していた。しばらくして俺も呼ばれ、車を敷地内の丘のような場所に移動させると、霊能者の指示で祭壇を組み立て始めた。

祭壇といっても大げさなものではなく、白木の机に塩や線香など、霊能者の気分次第でいろいろ置いていく簡易的なものだ。準備が終わると、俺は車を戻しに行き、その間に霊能者が自身の準備を済ませていた。そして戻った俺に、儀式中の心得を伝える。

「喋るな、動くな。何か異常を感じたら後ろから腰を2回叩け。指示があればそれに従え。」

こうして儀式が始まった。ラジカセから一定のリズムの音楽が流れる中、霊能者は何かをつぶやきながら踊り出す。この儀式自体は見慣れていたが、その日は赤ワインを時折撒きながら踊っていたのがいつもと違った。5分ほど経ったころ、霊能者のテンションが上がり、ワインを激しく振り撒き、瓶を放り投げると急に動きを止めた。

「今日は早く終わったな」と思った矢先、霊能者が俺を手招きし、資料館の外壁を指差す。その外壁のところに黒っぽい服を着た女性が立っていた。顔まではよく見えなかったが、俺は「儀式を見られて恥ずかしい」と思っただけだった。しかし、霊能者が突然叫んだ。

「つかまえろ!」

俺は焦ったが、言われた通り女性に向かって駆け出した。丘の中腹から資料館までは100mほど。その間、その女性はほとんど動かずに立っていた。だが、俺がある程度距離を詰めると、女性は急に動き出し、膝丈くらいの草が生い茂る藪の中へ入っていった。

俺も追いかけたが、女性は常に一定の距離を保ちながらスイスイと藪の中に進んでいく。そして、藪に足を踏み入れた瞬間、その女性の姿が消えた。

「逃げられた!」と思った俺が辺りを探していると、霊能者がやってきてこう言った。

「バカだね、逃げられたじゃないか!あれが今回のターゲットだったのに。」

俺は「普通の人だと思ってた」と言ったが、どうやらあれは霊だったらしい。霊能者は「お前が触れていれば終わったのにね」と言いつつ、「あれの顔、見えたか?」と問い返してきた。その後、彼女は藪の周りで塩を撒いて歩き回り、「片付けな」とだけ言った。

荷物を車に積み込み、正門横に戻ると霊能者は責任者に「とりあえず終わりました」と告げ、家まで戻った。最後に塩味の強いお神酒を渡され、「今日はヘマしたから」と言って一万か二万を渡される。

その帰り、夜明けの空を見上げながら「デニーズでハンバーグでも食うか」と思ったのを覚えている。結局俺に霊能力なんてものはない。ただ、あの女性のような存在を目にしたのは、あれが最初で最後だ。

(了)

[出典:22: 本当にあった怖い名無し 2015/07/29(水) 11:50:35.43 ID:ZTIbccny0.net]

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2025 All Rights Reserved.