霊能者のところでバイトしてた時の不思議なこと書く
22: 本当にあった怖い名無し 2015/07/29(水) 11:50:35.43 ID:ZTIbccny0.net
実際に俺が経験した除霊的な儀式の話。
とある霊能者のとこでアシスタント始めて数ヶ月経った初夏のある日。
学食でダラダラしてたら霊能者に持たされたPHSが鳴った。
今日の夜八時に家に来い、赤ワイン一本買って来い、と。
俺は安物の赤ワインを買って指定された時刻に霊能者の家に行った。
霊能者の家に着くと、俺はいつもの通りに到着を知らせる裏口の横にある。
ブザーのスイッチを押して来訪を知らせて、母屋の裏にある待機小屋に行く。
しばらくすると霊能者が来て、俺に指示をだすってのがいつもの流れ。
その日も俺が到着して部屋で待機してると霊能者がやってきた。
この霊能者ってのが見た目はちょっと派手だけど普通のおばさん。
デブでもブスでもなくて見た目で言えばキレイ目な四〇半ばくらいの女性。
ただし性格はこの上なくエキセントリックだった。
その日はまず車に荷物を積むように指示された。
荷物の内容はゴチャゴチャ小物が入った大きいブランド物のカバンがいくつか。
それと白木で作ったテーブルのようなもの。
あとは除霊時のお約束グッズのラジカセだった。
俺は指示の通りに仕事用のワンボックスカーに機材を積むと、霊能者を乗せて指示された場所に車を走らせた。
指示された場所は結構近所にある史跡的な公園というか広場のようなところ。
敷地の中に資料館的なものや林やら公園的な広場があるところ。
そこの来客用駐車場に車を止めると、正門のところにオッサンが立っていた。
そのオッサンがここの責任者なのか依頼主なのか知らないが、うちの霊能者と話し始めた、俺は車で待機してた。
手招きされて俺も呼ばれ、敷地内の丘のようなところへ車を移動させ、しばらくそこをうろついた霊能者の指示で祭壇を組み立てる。
祭壇って言ってもさっきの白木の机に塩やら線香やら、その時の霊能者の気分と指示でいろいろ置かされる。
そして準備が終わると俺は車を置いてくる。
そしてその間に霊能者自身が自分の気の済むように準備を済ませておく。
いつもそんな感じだったしその時もそうだった。
そして俺が戻ってくると、俺がしゃべることは許されないのがお約束だった。
霊能者に言いつけられていたことは、儀式が始まったら……
・お前は喋るな
・お前はできる限り動くな
・もしなにかお前が異常に気がついたら私の視界に入らないように、後ろから腰を二回叩いて知らせろ
・私がなにか指示したらその通りに動け
……こんな感じのことを言われていた
そして儀式が始まった。
ラジカセから流れる一定のリズムに合わせて霊能者のおばちゃんが、俺に聞こえるか聞こえないかの声でなにかつぶやきながら踊る。
これはいつものことだったが、そのときは俺が買ってこさせられた。
赤ワインを時折撒きながら踊ってた。
そしてさほど長くもない時間、五分くらいだったんじゃないだろうか?
これもいつものことなんだけれど霊能者のテンションが上がってきて、ワインを激しく振りまいたり浴びたりしながら踊りが激しくなる。
そして霊能者がワインの瓶を放り投げて急に動きを止めた。
その時の俺は、今日は案外早く終わったようだ、と思っていた。
が、その時霊能者が俺の方に向き直って手招きしたあとに、ゆっくりした動作で少し離れた資料館の建物を指さした。
資料館の外灯で薄ぼんやりと見える外壁のところに、一人の女性の姿が見えた。
顔まではわからないけれど黒っぽい服を着た女性がいた。
俺は正直言って、イタイことしてるところを見られた恥ずかしいと瞬時に思ったが、霊能者はその女性を指さして俺にこう叫んだ。
「つかまえろ!」
俺はやべえ、変態扱いされる、女性を捕まえたらワケを話して謝ろう。
でも指示通りにしないと怖いのでその女性に向かって駆け出した。
儀式してた丘の中腹からその資料館までは100mくらいだったんじゃないかな?
その中間点位に俺がたどり着くまでその女性は動かなかった。
でも、もうすこしで表情が見えそうな距離に来たところでその女性が逃げ出した。
資料館の奥の方にある膝丈くらいの草が生えた藪のようなところへと、俺は足が結構早いほうだと自負していたけど結局は追いつけなかった。
不思議なことにその女性は焦って逃げている感はなくて、常に一定の距離を置きながらスイスイ歩いているような感じ。
ちなみに足はあった。
30mくらいだろうか、その距離を保ったまま女性は藪の中に走っていく。
そして俺が藪のところにたどり着いた瞬間女性が消えた。
その時の俺は、うおおお、逃げられた!と単純に思っただけだった。
そしてその藪のあたりで女性が出てこないかウロウロしていると、霊能者がやってきて俺にこういった。
「バカだね、逃げられたじゃないか!あれが今回のターゲットだったのに」
俺は普通の女性だと思ってたけど、あれは霊だったらしい。
霊能者はいつも俺に仕事の細かい内容は話さない。
何をしてるのか?相手はなんなのか?そんなことを話してもお前には意味ないし、余計面倒くさいことになるだけだから、と霊能者はいつも俺に言ってた。
でも霊能者は俺にその時はこういった。
お前があれに触れてれば一番いい解決だったんだけど仕方ないね、と。
俺が、「でもあれは普通の人でやべえから逃げただけじゃないの?」と聞き返すと
「そうかもしれないね、でもお前はあれの顔が見えたかい?」というようなことを言い返された。
その後霊能者は、地祭りするからと言ってその藪で塩を撒いて歩き始めた。
しばらくその行為を眺めてたら霊能者が、片付けな、というので、俺は車を取りに行って荷物を積み込み正門横まで戻った。
出迎えた責任者に霊能者は、「とりあえず終わりましたけど、また何かあったら連絡をください」と言って車に乗り込んできた。
そして霊能者の家まで送り届けて片付けをし、控えの離れで待っていると、霊能者がやってきて
「今日はお前はヘマをしたから」と言い一万だか二万だか貰った。
あとは帰る前にこれを飲んでから帰れと、塩っぱいお神酒をもらって飲んだ。
家に帰るときに空を見ると白み始めていたから、朝の四時くらいだったんだろう。
その金でデニーズでハンバーグ食って帰ったのを覚えている。
俺には霊能力なんてものはないらしい、が、霊らしきものをはっきり見たのは、今のところあれが最初で最後だし、あの時も正直アレが霊だなんて俺は思ってなかった。
オカルト話や怪談は大好きだけれども俺にとっての実際の霊体験は、こんな微妙な不思議といえば不思議な話しかない……
[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1437785102/l50]
(了)
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