東京都から山梨に抜ける道で『和田峠』というのがある。
2014/09/13(土) 09:14:01.00 ID:MGmxOAvG0.net
昔から「何か出る」とネットで噂される和田峠で、知人のおばさんが不思議な体験をした話だ。
おばさんの夫は釣り好きで、あちこちへ出かけるタイプ。そして二人は非常に仲が良く、いつもおばさんも一緒についていく。和田峠も何度か通っているが、おばさんはどうもあの峠が苦手らしい。
「和田峠はね、なんだか怖いのよ。東京から山梨に向かうときはまだいいけど、帰り道がとても気味が悪い。窓を開けていると、何か入ってきそうな気がして、つい閉めちゃうの」とおばさんは言う。
その日も、夫婦は山梨で釣りを楽しんだ後、深夜に和田峠を通ることになった。
「ああ、もうすぐ峠だな…」とおばさんが何気なく外を見たとき、木々の間に青っぽい光がチラチラと見えた。一瞬「釣り人かしら」と思ったが、車が走っているのにその光はずっと前方にあるまま動かない。
不気味に思い、運転している夫に「ねえ、お父さん、あの光、懐中電灯の明かりかな? ずっとついてきてるんだけど」と尋ねると、
「わかってるよ。あれは人の明かりじゃない」と夫は答えた。
その時、おばさんは気がついた。光が増えているのだ。最初は一つだったはずが、いつの間にか数が増え、前後左右から車を囲むように迫ってくる。
「お父さん、もっとスピード上げて!」
おばさんは怖くなり、光を見ないように目を閉じてしまった。峠を越える時間が異様に長く感じられ、心の中で「早く、早く」と繰り返し祈っていた。
やがて、車が下り坂に入った瞬間、おばさんは「峠を越えた」と直感した。恐る恐る目を開けると、そこはもう東京側の山道。周囲を見回しても、さっきまでの青い光は影も形もなく、ただ黒々とした木々が静かに立っているだけだった。
ほっとした瞬間、おばさんは自分が冷や汗をかいていたことに気づいた。
「よくプラズマとか言うけど、あれは違う。なんだか生き物みたいだった…」
おばさんはそう話していたが、結局、あの光の正体はわからないままだ。
和田峠は、高尾から陣馬街道を進み、陣馬山頂直下のピークを越えると藤野へと至る。この藤野は神奈川県内に位置し、さらに国道20号を経由して大月側へ向かえば山梨県の上野原に入るルートだ。
陣馬山頂にある茶屋の関係者がよく車を停める場所でもあるが、オウム真理教の事件以降、山中にも警戒の看板が目立つようになった。特に高尾側からのアクセスは人家が途切れる区間が長く、夜間はまさに孤独そのものだ。
ただ、和田峠で「鬼火が出る」という話はあまり聞かない。しかし山梨の小菅から上野原へ下る道には「首切り清水」と呼ばれる“出る”沢があるらしい。
和田峠の青い光…あれは一体、何だったのだろうか。
(了)