短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

もうひとりの俺と暮らしてた#963

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大震災の後に、会えなかったけど半年くらい俺が俺と暮らしてた時があるよ。

418:本当にあった怖い名無し:2014/02/06(木)11:18:56.51ID:56wzbksJ0

どう考えてもいまだに納得できないし、理解できないけど、もう一人俺がいるって気持ち悪かったわ。

震災の後、仕事関係の対応で一週間ぶりに家に帰ったら風呂が沸いてて、俺っぽい声で『お帰り』って言われた。

そのあと、もう一人俺がいるとしか思えないことが色々起こった。

あの震災のあった三月の末に近所に住んでる親戚に電話をした。

俺の住んでる地方は地震は大したことなかったけど一応義理でね。

そしたら叔父さんが「こないだはありがとう」って言うんだな。

要領をえず、日曜にその叔父さんの家に車で行った(俺の車は白い軽)

で、叔父の第一声は「こないだの車どうした?」だった。

どうも俺がその前の週末に黒のセダンで、俺の家のそばの銘菓を持って様子を見に来たらしい。

もちろん俺は行ってないし、そんな黒いセダンも知らない。

適当に話を合わせて帰ったけど、なんか良く分からなかった。

俺は一人暮らしで、家に帰ると勝手口から入るんだ。

そしてポケットの中の小銭を洗濯機の上に置く。

バスで通勤するから、バス代があるか分かりやすくするためにそうしてる(今でも)

で、毎朝バス代があるかを確認して、その小銭をポケットに入れて家を出るんだけど、そのもう一人俺がいるような気がした期間は、その小銭がよくなくなってた。

そういう気がしなくなってからは小銭はなくならない。

あとその期間は壁にかけているジャケットの順序が変わってる気がした。

めったに着ないはずのジャケットが一番上になってたりね。

あとは冷蔵庫の中のものがなくなってたり、特に俺が好きなようかんがなくなることが多かった。

あとは何回か、ゴミ出しの前夜にまとめといた可燃ゴミがなくなってた。

それが何度か起きた後、いつものゴミ捨て場を見たらそのゴミがちゃんと捨ててあったりした。

震災の数か月前に彼女が出来てた。

今は別れてるけど。その彼女から電話が来た。

こないだしたデートの件について。

そんなデートしてないよ。

行ったのは俺が一人でたまに行く水族館。

一人でしか行ったことないよ。

ちなみにそのデートも黒いセダンで行ったらしいわ。俺は知らんけどね。

そんな感じのことがいろいろあった。

けどある日突然なくなった。

なんでかはっきりとは今でもわからない。

でもこないだテレビを見てて、そのことをボーっと思い出した時。やっとなんとなく原因がわかった気がする。

年末にテレビを見てて震災の話をしてた。

そのときに天皇陛下がどこかを慰問した映像を見て思い出したんだけどさ、というか思いついたんだけど。

 

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あの震災のあった時、家に帰るまでの間、俺はずーっと職場に寝泊まりしてた。

そのときテレビで何度もあの津波に流される家々や車の映像を見た。

俺は気持ち悪くなって職場で何度も吐いた。

空っぽになるまで吐いた。

胃の中のものと言うより心まで空っぽになるくらい吐いたよ。

でさ、すげー虚しくなったんだよね。

親戚はいるけど両親も兄弟も家族もいない。

人間なんていつ死ぬかわからない。

そう思ったら凄く虚しくて。

あのころ多分アタマおかしかったと思う。

無感動な人間になってたんだろうな。

そんな時期にもう一人の俺がいたんだと思う。

もしくは、俺が別人格で動いてたのかもしれない。

でもそれは物理的に無理なことが何度かあったから、やはりあの頃はもう一人自分がいたんだと思ってる。

で、もう一人の俺がいなくなったと思った時期に(これが年末に思いついたことなんだけど)俺はテレビを見てて、天皇陛下がどこかを慰問してるニュースを自宅で見た。

そのとき俺は家で一人で号泣したんだな。

なんでかは分からないけど、きっとあの無垢で無私で美しい天皇陛下夫妻に感動したんだと思う。賛否両論はいろいろあるだろうけどね。

でも俺は感動したんだと思う。

めちゃくちゃに泣いた。

今思えば、あれでなくした何かが帰ってきたんじゃないかな?ってこないだ思ったわけで、仕事が暇だから何となくそのことを今日書いたんだわ。

全くの蛇足でくだらないことだけど、今でもその黒のセダンってのはどこから出てきたのかわからない(笑)

あと、彼女がもう一人の俺とデートしたって言ってきたすぐ後に、銀行口座の残高が俺が覚えてたより二万円減ってた。

記帳したら、そのデートした朝に俺がおろしてたみたいだ。

もちろん俺に(ややこしいな)心当たりはない。

すごく損した気分になったのは覚えてる。

でも、なぜか仕方ねーなってすぐあきらめられた。

今なら千円落としたとしてもなかなかあきらめられないのに(笑)

(了)

 

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