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子供の頃に体験した、忘れられない不思議な出来事がある。

それは、小学校五年生の冬のこと。当時、私は田舎の静かな町で暮らしていた。小学校は統合され、通学にはスクールバスが必要なほどの距離があり、バスが停まる場所は廃校になった小学校の校庭だった。

ある初冬の日、いつものようにスクールバスで帰宅した私は、校庭で一匹の子犬の遺体を見つけた。茶色い体毛に、四肢と尻尾の先が白く、鼻周りが黒い、雑種らしい子犬だった。その無惨な姿に胸が痛み、「せめて埋めてあげなければ」と思い立った私は、子犬の体を抱き上げた。

だが、体からは体液や排泄物が漏れ、運ぶのも一苦労だった。校庭の隅に埋めようとしたものの、地面は固く、掘ることができない。埋葬場所を求め、私は子犬を抱えたまま校庭内をさまよった。そして最終的に、町民体育館の脇に場所を見つけた。

砂利を手でどけ、木の枝で必死に土を掘り、近くのスーパーで小さな段ボール箱をもらってきた。これを棺代わりにして子犬を入れたが、花を添えてあげたいと思っても、季節は初冬。周りには咲いている花がなく、仕方なく近所の庭木から一枝を失敬して、棺に添えた。そして土をかぶせ、手を合わせた後、私は家に帰った。

その日は『なかよし』の発売日だったので、ランドセルを置くと本屋へ向かうことにした。途中、ふと町民体育館の方を見ると、一匹の犬がこちらに向かって駆けてくるのが見えた。農閑期の畑の中をまっすぐに私めがけて走るその犬は、埋めた子犬に瓜二つだった。

「もしかして、兄弟かな?」そう思った私は、「捨てられたのか?でも、うちじゃ飼えないんだ」と犬に話しかけた。触らないようにしながら本屋に向かおうとしたが、犬は笑顔のまま私の後ろをついてくる。可愛いけれど、車通りのある道を歩かせるのは危険だと感じた私は、本屋に行くのを諦め、その犬と遊ぶことにした。

両親から「飼えない犬に構うのはかわいそうだ」と言われていたが、目の前でお腹を見せて甘えてくる犬を無視することはできなかった。私は門限ギリギリまでその犬と走り回り、撫でて遊んだ。だが帰る時間になり、「家に帰るよ」と告げると、犬は笑顔のまま町民体育館へと走り去った。

その姿を見送る私の頭に、ある考えがよぎった。「あの子……埋めた子じゃないか?」そう気づいた瞬間、犬は埋めた場所に立っているのが見えた。そして次の瞬間、その姿がふっと消えてしまった。

全身が心臓のように脈打つ感覚に襲われた。「お礼を言いに来てくれたのかな……」そんな風に思うしかなかった。

今でもあの日の出来事は鮮明に覚えている。子供の頃に体験した、不思議で、どこか暖かい記憶だ。

(了)

[出典:212 :本当にあった怖い名無し:2006/04/16(日) 14:30:45 ID:7bRJj+4y0]

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