ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

短編 r+ 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

花嫁の父が遺した未来 r+2941

更新日:

Sponsord Link

これは、ある結婚式の司会を務めた女性から聞いた話だ。

式場は、木々に囲まれた閑静なチャペルだった。柔らかな陽光がステンドグラスを彩り、厳かな雰囲気の中、挙式は進んでいった。感動的な誓いの言葉が交わされる中、司会の彼女は、進行スケジュールの次の一項目に注意を向けた。

花嫁の父親からの手紙。実は、その手紙は少し特別だった。父親は花嫁が13歳のときに他界しており、生前に「娘が結婚するときに渡してほしい」と母親に託していたものだったという。花嫁自身も、その手紙を初めて目にするのは式の当日だ。

緊張の面持ちで花嫁の母から手渡された封筒。古びた茶封筒には丁寧な筆致で娘の名前が記されていた。中を覗くと、しっかりとした書き心地の便箋に、やはり同じ筆跡で文面が綴られている。司会者はその手紙を、まるで自分が父親になったつもりで読み上げた。


「久しぶりだね。この手紙を通じてだけど、こうしてまた話せるのはうれしい。結婚式には父がいなくて申し訳ない。一緒にバージンロードを歩きたかったよ。でも、君が選んだ健吾君は、とても素晴らしい人だと確信している。これからは、彼と一緒に幸せになりなさい。父の分まで、人生を楽しんでほしい。」


場内には涙をすする音が広がった。ハンカチで目元を押さえる花嫁の姿が、参列者たちの胸を打つ。感極まった新郎も、健気に「精一杯頑張ります」と誓いの言葉を述べた。感動の渦に包まれた会場。読み終えた手紙を司会者は、花嫁の前にそっと置いた。

その瞬間、彼女の表情に微妙な変化が訪れた。手紙を覗き込むその瞳が、途中で驚きと困惑に固まったのだ。まるで時間が止まったように。震える指先が、便箋の文字をなぞっているのが見えた。

式はその後も無事に進行し、盛大な拍手の中で幕を閉じたが、花嫁の笑顔はどこか引きつっていた。その不自然さに気づいた司会者が、ひそかに理由を尋ねたのは、式が終わった控え室だった。


「お父様の手紙に、何か気になることがありましたか?」

花嫁は戸惑い、声を低くしてこう言った。

「健吾さんとお付き合いを始めたのは二年前。大学で出会ったんです。地元ではなく、遠く離れた北海道の大学で……。それなのに、どうしてお父さんが彼の名前を知っているんでしょう?私が十三歳だった頃、健吾さんはもちろん、同級生にもそんな名前の人はいませんでした。」

驚きに満ちた表情で、再び手紙を取り出して見せる花嫁。その便箋には、確かに亡き父の筆跡で「健吾君」と書かれている。まだ中学生だった娘の未来を、父がどうやって知り得たのか。それを考え始めると、答えが出るどころか、逆に底知れない寒気が背筋を走らせる。

あの手紙は、一体どのようにして、誰によって書かれたものだったのだろうか。

(了)

出典:719 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2016/08/18(木) 22:41:31.04

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2025 All Rights Reserved.