ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚 n+2026 オリジナル作品

壺の音がする家《月うさぎ4》 iwa+

更新日:

Sponsord Link

今日は、家のことを書きます。

学校のことより、たぶんこっちのほうが本当は怖いです。

うちのおばあちゃんは、昔からある団体の信者です。
宗教って言うとすごく怒ります。
「これは愛の集まりなの」「救われる人が集まっているだけ」って、いつも同じ言い方をします。

リビングの隅に、大きな壺があります。
茶色で、つやつやしていて、床の間みたいに一段高い台の上に置いてあります。
誰も近づかない場所です。

「家を守る壺」だそうです。

値段は聞いたことがありません。
でも、前にお父さんが小さい声で「そんな高いもの……」と言って、おばあちゃんににらまれていました。
それ以上、誰もその話をしません。

壺の横には、金色の縁取りのある印鑑ケースがあります。
中に入っている印鑑は、見たことのない形をしています。
丸でも四角でもなくて、少しゆがんでいて、持つところが妙に長いです。

「これで運命が変わるのよ」と、おばあちゃんは言います。
笑っているのに、目は笑っていません。

私は、できるだけ触らないようにしています。

この前の日曜日、おばあちゃんの集まりに連れて行かれました。
駅前のビルの一室でした。
白い壁で、匂いもなくて、病院みたいにきれいすぎる部屋でした。

正面に、大きな額がかかっていました。
年配の男の人の写真です。
やさしそうな顔で、でも目だけが強くて、まっすぐこっちを見ている感じがしました。

名前は覚えていません。
でもおばあちゃんが、「先生は海の向こうから来られた尊い方なの」と言っていました。
海の向こうってたぶん韓国だと思います。
その国の言葉が混ざった歌も歌いました。
意味は分かりません。

何度も「血が清くなる」「家系が救われる」と言っていました。

そのとき、背中がぞわっとしました。
家系って、私もその中に入っていると思ったからです。

集まりのあと、おばあちゃんが私の手を強く握りました。
細いのに、すごく力がありました。

「あなたは選ばれているの」と言われました。

何にですかと聞いたら、「まだ言えない」とだけ言われました。

家に帰ってから、壺のふたを開けるのを初めて見ました。
中は暗くてよく見えませんでした。
でも、少しだけ鉄みたいな匂いがしました。

前に書いた、あの匂いと同じでした。

偶然だと思いたいです。

でもその壺、夜になるとカン、と小さい音がします。
金属が当たるみたいな、乾いた音です。

家族は誰も気にしていません。
テレビの音のせいだとか、気のせいだとか言います。

でも音がするとき、おばあちゃんは少しうれしそうにします。
「守られている証拠よ」と言います。

この前、印鑑を私の手のひらに押されました。
インクはついていなかったのに、うっすら丸い跡が残りました。

丸の中に、小さい点がいくつもあって、
目みたいに見えました。

お風呂でこすっても、完全には消えませんでした。
次の日も、うっすら残っていました。

おばあちゃんは「もう大丈夫」と言いました。

何がですかと聞いたら、

「これで、増えても怖くないわ」と言いました。

増えるって何のことか、聞けませんでした。
聞いたら本当に増えそうな気がしました。

夜中、リビングから小さい声が聞こえることがあります。
おばあちゃんが壺に向かって話しているみたいです。

返事は聞こえません。

でも、間があります。
誰かの話を聞いてうなずいているみたいな、間です。

最近、家の中の人数を数えることがあります。
なんとなくです。

たまに、一人多い気がします。

でも、家族は五人です。
ちゃんと分かっています。

だから数え直すのをやめました。

数えると、増える気がするからです。

[出典:133 :月うさぎ ◆x7J8mY2Q:2004/05/05(水) 20:58:11 ID:Yp6kHvZe]

[投稿者:志那羽岩子 ◆PL8v3nQx6A]

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
-

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2026 All Rights Reserved.