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短編 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

九官鳥の伝言【ゆっくり朗読】5489-0103

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友人から聞いた話です。

友人が大学生の時、当時付き合ってた男性が母子家庭だったそうです。

そのわりに元々裕福な家系らしく高級マンション、しかも大学から近かったので格好の遊び場になっていた。

友人もしょっちゅう遊びに行き、時には泊まる事も。

とはいえ実家だし一応遠慮はするものの、彼の「大丈夫大丈夫」の一点張りに負け、お互い浮かれていたのもあり、そんな日々がズルズル三ヶ月程続いた。

問題は彼のお母さん。

結構若いが、特に働くでもなくいつもほぼ在宅。

それはいいのだが、本当にこんな人いるのかというぐらいひねくれた性格なのだという。

息子の男友達には騒ごうが泊まろうが愛想をふりまくが、同性相手には冷たい。

まして彼女である友人にはあからさまで、打ち解ける気皆無。

まあ、しょっちゅうお邪魔をすればそりゃ誰でも不愉快になるよなーと悪く思い、これから彼が何と言おうがひかえようと決意し、いつもすみませんと菓子折りを差し出した。

ところがバカにしたように鼻で笑い「そういうわざとらしいのいいから(笑)」と突き返された。

わざとらしい!?

意味不明な上、四十路の大の大人がそんな言い草ないんじゃないか?と友人は憤慨し、今まで通り彼の言う事にだけにしたがえばいいや、と開き直ってしまった。

ちなみに母側は息子に溺愛(一人っ子だしよけい)だったらしいが、幸いにも彼はマザコンではなかった。

むしろそんな母親をじゃっかんうっとうしがってたとか。

いつもあんなんだから気にすんな、みたいな。その辺の面倒そうな事はとにかく干渉したがらなかった様子。

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ところがある週末、泊まって彼の部屋で寝ていたら、友人はトイレで目が覚めた。

携帯を見るとAM4:34頃。

変な時間に起きたなーと爆睡中の彼を尻目にトイレへ行き用を足す。

部屋へ戻ろうと廊下を歩いてると違和感に気付く。先ほど部屋を出てトイレへ向かった時は視界がほぼ真っ暗だった。

だが今はリビングから漏れている電気のオレンジ色で薄ら明るい。

おばさんが起きたのかな……?と一瞬ドキっとしてすぐ部屋へ引っ込もうとドアノブに手を掛けた。

「ピーちゃん!ピーちゃん!」

心臓が止まるかと思ったと。暗闇に突如響いた異質な声が気になり、そっとリビングを覗き込む。

声の正体は九官鳥だった。ピーちゃんであろうその九官鳥が入った鳥カゴは、テレビボードの横の棚に置かれていた。リビングにおばさんはいない。

今までリビングにこの鳥カゴが置かれているのを一度も見た事がなく、しかしそういえば彼が以前ペットの話になった時、母親が部屋で鳥を飼っていると一言つぶやいていたのをその時思い出したそう。(どうでもいいと記憶から抹消してたらしいが)

誰もいないのでつい鳥の前まで行きマジマジと観察する。

くちばしでカゴを突いたり鳴き声ともつかない声を出したりしている。

そして時おり「ピーチャン、イイコネ オリコウサンネ」とかしゃべるのだという。

友人は思わずスゲー……と漏らしてしまう程素直に感心したという。

よく仕込んであるなーと。

しかし次の瞬間

「マユミ シネ。 マユミ シネ。 マユミ シネ。 マユミ シネ。 マユミ シネ」

マユミは友人の名前である。友人は目を見開き戦慄した。

すると後ろから笑い混じりの大きな咳払いが一つ。

驚いて振り返るとそこはおばさんの部屋。

ドアはしまっている。しかし今の咳払いから考えるとおばさんはドアにベッタリ張り付いて明らかに聞き耳を立てていた。(もしかして覗かれていたかも?)

その咳払いはそれこそ、いかにも「わざとらしい」不自然な咳払いだったそう。

友人はすぐさまダッシュで荷物を持ち一目散に逃げた。始発までコンビニだかで時間を潰して。ショックのあまり頭は真っ白だったが、メールで彼に別れを告げた。

当然しばらく揉めたし未練があって大泣きもしたが、もうそんな事どうでもいいぐらい別れてよかったと言ってた。

この先あの母親がいる限りうまくいくはずがないと確信し。

何が怖いって、友人がトイレに行ってる間にわざわざリビングの明かりつけて、仕込んだ暴言を聞かすために鳥を置いたのかな?と思うと。

(了)

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