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短編 r+ ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間 ほんとにあった怖い話

おおいさん r+10,707

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長野県の山あいの町にある、古びたコンビニの話。

あれは、職場の同僚から聞いたことだ。もう十年も前になるというが、今でも夜勤に入る若いバイトたちの間では、密やかに語り継がれているらしい。

そのコンビニでは、奇妙なルールがひとつだけ存在していた。

――「おおいさん」と名乗る客が来たら、目を合わせるな。

理由も聞かされないまま、ただそれだけを新人たちは言い含められる。

最初は誰もが笑って流す。だが、数か月も勤めているうちに、何人もが奇妙な体験をし、次第にその忠告の重みを思い知ることになる。

ある男がいた。仮にKとしておく。その夜、彼は後輩のバイトと二人で夜勤に入っていた。店の裏で煙草をふかしながら、廃棄寸前の弁当をつついていたときのことだ。

監視カメラに映るのは、雑誌コーナーで騒ぐ三人の中学生。

後輩はレジ前で、彼らをじっと見張っていた。万引き防止のためだ。何かあったか?と画面を見つめていたKは、奇妙なものに気づいた。

後輩が、誰もいないレジに向かって何度も頭を下げていた。

次の瞬間、バックヤードを呼ぶブザーが鳴った。何か盗ったな、とKは思った。

店内に出てみると、レジ前には小太りの中年男が立っていた。笑顔を浮かべながら、のっぺりとした声で言う。

「こんにちはー。おおいさんです」

その言葉に、Kの背筋が粟立った。忘れかけていた警告が、脳裏に蘇る。

後輩が耳打ちした。「おおいさん、出ました……。目、合わせないでください」

目を合わせぬよう視線を逸らしながら、おおいさんの注文を聞く。タバコ、ガム、から揚げ……と、いかにも普通の買い物客のように振る舞っていた。

だが、突然、陽気にこう言った。

「どっちかの命、ちょーだい」

一瞬、冗談かと思った。気味の悪いジョークだと流したが、おおいさんは続けた。

「じゃあ、あそこの三人のうちの一人でいいや。いのち、ちょーだい」

雑誌コーナーの中学生たちは、おおいさんの声など聞こえていないかのように、ぺちゃくちゃと喋りながらページをめくっている。

Kたちは困惑しながらも、丁寧に断った。するとおおいさんは「じゃあ、ぜんぶもーらーおっと」と言い、奇妙な針金細工を三つレジに置いて去っていった。

翌日、店長とパートの女性に話すと、血の気が引いた顔で訊かれた。

「何か、置いてった?」

三つの針金細工を見せると、店長は厳しく言った。「次に来たら、必ず返すんだよ。必ずだ」

それから数日間。夜になると、針金細工がうねうねと動き出した。虫のように、蠢きながら這い回る。誰も触れていないのに、店のバックヤードで這いずり回る。

バイトたちは次第にそれを見るのを避けるようになった。目にした誰もが、得体の知れない気持ち悪さにやられてしまうからだ。

やがて、一つの針金細工の動きが鈍りはじめた。

その晩、近くの交差点で事故が起きた。暴走バイクがトラックに衝突し、同乗していた中学生が一人死亡。トラックの運転手はこう証言していた。

「バイクの前に……誰かが立ったんです。急に……それで、ハンドル切って……」

次の夜。おおいさんが再び店に現れた。

レジ前に立ち、少年の首をぶら下げていたという。店長も先輩も、その場で震えが止まらなかった。

針金細工を返しに走った先輩は、監視カメラを覗いたという。

そこには、少年の身体だけが映っていた。レジ下を這い回りながら、何かを探していた。

だが、映像におおいさんの姿はなかった。

レジ前にあったはずの首も、記録には残っていなかった。

以来、そのコンビニでは、「おおいさん」の話をする者はいなくなった。だが、近隣の他店舗でも、深夜にあの声を聞いた者は少なくないという。

「こんにちはー。おおいさんです」

もし聞こえてしまったら、どうか目を合わせないでくれ。

ひとつでも目が合えば、きっと「針金細工」は、また動き出すから。

[出典:530 本当にあった怖い名無し sage 2010/07/22(木) 01:22:38 ID:Py3Z2MhG0]

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