短編 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間 n+

★忌み子だった僕の罪と罰

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俺は忌み子だった。

母と部落の男との間にできた私生児で、母は若くして亡くなり、母の妹夫婦に引き取られた。
この事実を昨日知ったばかりだ。もっと早くに教えてほしかった。
ガキのころ、自分が家族に嫌われる理由がわからず、散々莫迦なことをしてしまったのが悔しい。

小学校に上がってから、兄が母に母の日のカーネーションを贈るのを見て、母が大喜びしていた。
それを見て「贈り物が必要なんだ」と悟った自分。
図工の時間に『おとうさん』というお題で絵を描いた。思いのほか上手く描けて、裏に作文を書き校内放送で発表された。
父の日にその絵を義父の枕元に置いた。次の日、反応をうかがったが話題にものぼらない。
どうなっているんだろうと部屋を覗いたら、絵は捨てられていた。
間違って捨てたのかと思いながら絵を枕元に戻し、学校に行った。
学校から帰ってきてまた確認すると、絵は破かれて捨てられていた。半泣きになって絵を拾った。
その晩、部屋への出入禁止を言い渡された。

次の年の母の日。図工の時間にカーネーションを作った。

俺は前年の母の、兄への笑顔を思い出し、それだけでとろけそうになり、一目散に家へ帰った。
花を差し出すと、義母は「そうまでして機嫌をとりたいの?しかもそれ偽物でしょうが」と言った。
想像もしなかった反応に、どうすればいいのかわからず「ごめんなさい」と謝って逃げた。
逃げた先の神社で俺は泣いた。人の心を物で釣ろうとした自分のあさましさ、それを見透かされた恥ずかしさで。
その後、せめて本物をと思って山に行ったけど、カーネーションなんてどこにもなく、近所のスーパーで万引しようとして、そこのおばちゃんに見つかって学校に通報されたというオチ。

自分語りすまん。これで最後にする。

高校は特待生で奨学金を取って寮に入った。もう家には帰らないつもりでいたが、じいちゃんが亡くなったので、帰った。
そしたら「おまえがいるとみんなが嫌な思いをする、じいちゃんが成仏できない」とのことで、参列できなかった。
しかしそのままだとあんまりだと思い、初七日過ぎてから線香をあげに行った。

その夜、義母から電話があり、「お金が無くなった、あんた取っていったでしょう?」とのこと。
知らないと言っても「昔から手癖が悪いからねえ」と言われ、ガチャンと電話を切られた。
あまりにせつなすぎて死にたくなった。本当に。

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