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■見えない壁

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数年前のこと、俺がまだ中学生だった時の話だ。

92 :怖いお話ネット:2024/06/15(土) 16:32:45 ID:9wJOsjL90

雑誌の懸賞ハガキを出すために、駅近くの郵便局に向かっていたんだ。
俺の住んでいる地域はK県の田舎で、最寄り駅から続く大通りも人通りや車通りが少ない場所だった。

その日は、新しく手に入れたばかりのiPodをいじりながら歩いていて、前をあまり見ていなかった。
郵便局まであと数十メートルのところで、突然、頭から何かにゴツンとぶつかり、尻餅をついたんだ。
人にぶつかったと思って「すみません!」と慌てて立ち上がろうとしたが、周りには誰もいなかった。
障害物もなく、いつもと変わらない景色が広がっているだけだった。

「何だったんだ?」と不思議に思いながら再び歩き出そうとしたその瞬間、またゴツッと石にぶつかるような音がした。
何もない空間に足をぶつけたんだ。思わず「は?」と声に出してしまった。目の前には何もないはずなのに、進むことができない。

まるでRPGやアクションゲームで見かける見えない壁みたいだった。その壁は完全に透明で、光にも反射しなかった。
手で触ってみると、大理石のような冷たい感触があった。

周りを見渡すと、壁の向こう側では普通に人が歩いていた。俺が手を振っても、誰も気づかないようだった。
仕方なく、別の道を探そうと来た道を引き返した。

その後、壁に背を向けて歩き始めた直後、前方から赤いスポーツカーが猛スピードで迫ってくるのが見えた。
スピード違反のような勢いで、「急いでいるのかな」と思っていたが、車が俺の近くを通り過ぎた瞬間、
「あの見えない壁にぶつかったらどうなるんだ?」と急に恐怖が襲った。

直感的に危険を感じ、iPodをポケットにしまい、全力で駆け出した。その数秒後、背後からガシャーンという轟音が響いた。
振り返ると、赤い車が見えない壁にぶつかって停止していた。心臓がバクバクしていたが、そのまま家に逃げ帰った。

翌日、地元の新聞に「駅前の道路で事故、一人死亡」とだけ小さく載っていた。その事故の詳細は何も書かれていなかった。
両親や友人、教師たちもその事故について何も話さず、まるで何もなかったかのようだった。

それ以来、あの見えない壁は現れず、俺もその話を誰にもせずに過ごしている。でも、あの日の記憶は鮮明に残っていて、今でも思い出すと背筋が寒くなるんだ。

みんなも気をつけろよ。見えない壁がどこかに現れるかもしれないからな。

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