短編 洒落にならない怖い話

怪奇バス停【ゆっくり朗読】3300

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昔俺が一八、九の頃、近所に綺麗なバス停があった。

979: 本当にあった怖い名無し 2016/08/03(水) 23:33:51.96 ID:6I4LHXmC0.net

俺の家は結構な田舎で、そのバス停は山の中の人気のない場所にあった為か利用者はほとんどいないらしかった。

なのにあまりにも新しい上にしっかりとした東屋(あずまや:壁のない小屋のようなもの)が建てられていて少し奇妙に感じていた。

ある日、友人の一人が例のバス停について妙な噂を耳にした。

「あのバス停、少し前に近所の婆さんが焼身自殺をしたらしい。で、小さな屋根があったのだけど一緒に燃えてしまったから建て直したんだって」

そういえば確かに焼身自殺の話は聞いたことがあった。

「肝試ししない?お前平気なんだろ?」

友人が俺に挑発的な言い方で誘ってきた。

俺は昔から霊的なものは一切信じていないと公言していた故の発言だ。

ちょうどその時、女の子を含む七人で集まっていたため、カッコいいとこ見せられるかな?と俺は「今から行こうか」と皆を連れて行くことにした。

時間は深夜二時ぐらい。

街灯もない暗い山道を車二台で向かっていると、うっすらとバス停が見えてきた。

誰も通らないからとバス停の前に適当に車を停めて東屋の中に皆で入った。

「こうして見ると綺麗すぎて雰囲気でないねー」と女の子も平気そう。

コンビニで買ってきた食い物を食いながらしばらく皆でワイワイしてると、一人の友人が

「なあ、あそこなんか気持ち悪くね?」と言い出した。

バス停の周囲は竹藪に覆われており、月明かりに照らされてなんだか不気味に思える。

どこどこ?と指差す方を見てみると一ヶ所、竹の生えていない場所がある。

「着いた時から妙に気になるんだよなー」

確かにぽっかり空いて見えるその場所に違和感を感じる。

「そう言われるとなんか気持ち悪いね」

怖がり始める女の子達を見て、「俺が近くに行って見てこようか?」と俺は格好をつけた。

「絶対やめた方がいい!なんだか嫌な感じがする」と一人の子が言い出した。

「大丈夫だよ。余裕余裕!」と、俺は一人でそこに向かった。

 

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足場の悪い中を慎重に進んでいくと竹のない場所が出てきた。

暗い竹藪の中を見回すが何もい。

「なーんにもないよ。ビビる要素なし!」

と、皆を振り返りおどけて見せた時だった。

「おいっ!早く戻ってこい!」

と友人がすごい剣幕で叫ぶ。

「はぁ?もういいって!そんなの言われてもビビらねーら」

「いいから走れ!冗談じゃねーんだよ!」

六人が一斉に動き出す。

「何?何?皆でビビらせようっての?」

と言いながらゆっくり皆の方に歩くことにしたその時、

「もうだめだ!逃げよう!」と友人達が車に乗りだす。

「助けて!歩けない!」と腰を抜かし、泣きじゃくる女の子。

それを助けるように友人達が肩を貸す。

完全にパニック状だった。

さすがに俺も気がつく。

「これは本当にヤバい!」慌てて車に向かい乗車。

急いで車を走らせる。長い下り坂をブレーキも踏まず駆け抜ける。

「ヤバいヤバい…」を連呼する友人や「助けて!」と泣きわめく女の子達。

何があったんだ?と思いながらも俺は夢中で車を飛ばした。

そんな時だった。(ブゥーーン)と車のエンジンが切れると同時にヘッドライトやオーディオまで切れてしまった。

「何なの!?」と半狂乱になる女の子達。

「わかんねーよ!」と叫びながら必死にキーを回す。

かからない。

「下り坂だから行けるか?」

車を走らせるもエンジンが切れたものだからレーキが効かなくなってしまった。

ハンドブレーキを使いなんとか停車。

「このままじゃヤバいよ。車を置いて歩こう」

友人が女の子達を車から降ろし早足で歩きだす。

しばらくして見えなくなった俺達を心配した友人達が戻ってきてすし詰め状態でなんとかその場を離れた。

ふもとの少し開けた所まで来たところで車を降りた。

「お前本当になにも気付かなかったのか?」と、友人が俺に尋ねる。

「本当に分からないんだ。何があったんだ?」

「お前があそこに近づいた時、お前の右側に婆さんがいたんだよ」

「!?」

「皆に聞くと同じように見えるって言うんだ」

「全員見たのか?」

そう聞くと六人全員頷く。

「俺が声をかけたとき、その婆さんゆっくり手をあげていたんだよ」

友人が青い顔をして話をする。

「私見たの…」と震えながら女の子が話し出した。

「お婆さんが包丁みたいなのであなたを殺そうとするのを」

その後、夜が開けてから別の友人達を連れて車を取りに向かうと不思議なほど簡単にエンジンがかかった。

それから例の場所を見に行くとそこには小さな地蔵のようなものが竹の落ち葉に埋もれていた。

(了)

読者のコメントより

人っ気のない所になぜバス停があるのでしょう。これが最初にわいた疑問。私の住んでいるのは開けた地域ですが、車で20分も走れば山の中。バスも通っていますが、集落以外の場所にはバス停などありません。
老婆が焼身自殺。何やら物悲しい話だな、辛い過去があったのか、と思って読み進んだら、老婆の霊が包丁で切りかかって来たのですか。嫌な展開です。もっと気の利いた話にならなかったのでしょうか。
気分直しに、強引な解釈を。投稿主様の友人たちは、一人で藪に入って行った主様を脅かしてやろうと示し合わせ、老婆の幽霊が出た振りをして芝居を打ったのです。ところが、まだ思春期を過ぎるか過ぎないかという不安定な精神状態にため、ほぼ全員が集団催眠に掛かったようになり、芝居だったはずの事が彼ら自ら本当のように感じてしまい、恐怖を覚えて逃げ出した。それだけの話です。主様の車が動かなくなったのは、日頃の点検整備を怠っていたところに、逃げようとしてアクセルを踏み込みすぎたり急ハンドルを切るなどして、エンジンや電気系統に大きな負荷をかけたためでしょう。そんな不調は半日もすれば自然に回復し、動くようになります。仲間たちもほどなく正常に戻ったものの、今さら、あれは芝居だったとは言えず、本当に老婆の幽霊が包丁で主様を狙っていたと答えた、というお話。

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