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そこにいたはずの子ども rw+7,896-0110

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静岡県に住む小野さん(仮名)から聞いた話だ。

昔の不審者は、今よりずっと狂っていたと彼は言う。子どもの頃、運動会の徒競走に、裸の男が当たり前のように並んだことがあったらしい。笑いながら列に入り、走り出すと案外速くて、先頭集団に追いついた。ゴール前で女子児童を追いかけ、泣き声が上がった。保護者が取り押さえるまでの短い時間、会場だけが音を失ったように静まり返ったという。

異常は、日常の一部だった。小学生のうちに一度は露出魔を見るものだと彼は笑ったが、その顔はどこか硬かった。

高校生の頃の話になる。当時、彼の住む地域は治安が悪いと噂されていた。入学直後、親戚から「あそこは女の子、殺されてるんだよ」と言われたのを覚えている。親は過剰に心配し、自転車通学を禁じた。三年間、バスで通った。バス停から家までは少し距離があり、街灯の少ない道を毎日歩いた。

その頃、ひとりの少年が消えた。名前は仮に淳二としておく。

失踪の翌日には公開捜査になり、テレビでも繰り返し報じられた。父親の職業や家族構成まで流れ、警察は異様なほどの人員を投入していた。身代金目的ではないとされていた。

不思議だったのは、失踪現場だ。山奥でもなく、複雑な土地でもない。交通量も多く、人目があって当然の場所だった。それでも淳二は二日間、見つからなかった。

「おかしいわよね」
母がぽつりと言った。
「子どもが二日もそこにいたなんて」

彼女は、昔のことを思い出していた。

小野さんが小学生の頃、未咲という少女が同じように姿を消したことがあった。夜十時、警察の巡回中に保護されたが、場所が妙だった。家から徒歩で五十分以上。低学年の子が、迷っただけで辿り着く距離ではない。

「その未咲ちゃんが見つかった場所と、淳二くんが消えた場所、歩いて五分も離れてないんだって」
そう言ってから、母は口をつぐんだ。

淳二は結局、無傷で見つかった。失踪した場所のすぐ近くだった。警察犬が何度も探した場所でもある。警察は「本人がそこにずっといたと証言している」とだけ発表した。

「最初からいたなら、見つかってるはずだよね」
小野さんがそう言うと、母は苛立ったように答えた。
「子どもが無事だった。それでいいの。……嘘に決まってるでしょうが」

それ以上、誰も深く聞かなかった。

数年後、ふと思い出して、彼は地図を広げた。未咲が保護された地点と、淳二が消えた場所を線で結ぶ。その周囲に、小さな公園、空き家、古い神社、土手沿いの道が点在していた。どれも昼間でも薄暗く、人が長く留まらない場所ばかりだった。

淳二が見つかった数日後、近所の空き家が取り壊された。長年放置され、「出る」と噂されていた家だ。理由は知らされなかった。昼間に重機が入り、数時間で更地になった。古い家具や布団が、ブルーシートに包まれて運び出されていた。

その様子を見た人が、後で小声で教えてくれた。
「中、すごかったらしいよ。子どもの絵みたいなのが、いっぱいあったって」

どんな絵かは、誰も詳しく言わなかった。ただ、同じ形が何度も繰り返されていたらしい。

淳二が見つかったのは、その家の裏手だった。

今でも小野さんは、あの道を避けて歩くという。理由を聞かれても、うまく説明できない。ただ、地図を思い出すと、足が止まるのだそうだ。未咲も、淳二も、確かに無事だった。それで終わりになった。

彼は地図を折りたたみ、引き出しの奥にしまった。
その線を、もう一度なぞる気にはなれなかった。

[出典:407: 本当にあった怖い名無し:2011/07/07(木) 16:01:02.14 ID:VjDppBXA0]

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