ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚 n+2026

汽笛のリズム nc+

投稿日:

Sponsord Link

家でネタ作りをしていた時のことだ。

仕事の疲れが溜まっていたのか、気づかないうちに机に突っ伏したまま眠ってしまった。

目を開けると、見知らぬ和室に立っていた。畳の匂いが妙に生々しい。正面には、正座をしたもう一人の自分がいる。表情のない顔で、口だけを動かし、

「あー、あっ、あー」

と一定のリズムを刻んでいた。

その隣に、女が立っていた。顔には荒いモザイクがかかっていて、輪郭だけが分かる。もう一人の自分の声が大きくなるにつれ、女の顔のモザイクが少しずつ薄くなっていく。

そのとき、正座した自分がぽつりと言った。

「ファーっといった瞬間、全部わかる」

意味はわからなかった。ただ嫌な予感だけがあった。
次の瞬間、もう一人の自分が大きく息を吸い込み、

「ファー」

と声を出した。同時に女の顔のモザイクが完全に消え、はっきりと顔が見えた。

そこで目が覚めた。
全身びっしょりと汗をかいていて、心臓がうるさいほど鳴っていた。

その日の夜、芸人仲間との飲み会に顔を出したが、どうにも調子が悪い。早めに切り上げ、終電で帰ることにした。

ホームで電車を待っていると、数メートル先に女が立っていた。コート姿で、線路の方を向いている。顔は見えない。

電車が近づいてきた。
その音を聞いた瞬間、背中に冷たいものが走った。

「ふぁー、ふぁっ、ふぁー」

汽笛が、夢の中で聞いたあのリズムとまったく同じだった。電車が迫るにつれ、音が大きくなっていく。

最後に、

「ファー」

という耳をつんざくような音が響いた。

その瞬間、女がこちらを振り向いた。
見覚えのある顔だった。さっきまで思い出せなかったはずなのに、はっきりとわかった。

女は何も言わず、そのまま前へ踏み出した。

その後のことは、よく覚えていない。
気づいたときには、駅員や乗客に囲まれて座り込んでいた。

翌日、ニュースでその事故を知った。
映像に映った女の顔を見て、胸がざわついた。

似ている。
だが、夢で見た顔と、どこかが決定的に違っていた。

どこが違うのか、今も思い出せない。

(了)

[出典:BBゴローさんの体験談]

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2025 All Rights Reserved.