短編

禁忌の地下【ゆっくり朗読】3900

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子供の頃、家族で父の実家に帰省したときの話。

父の実家は築百年位の古い日本家屋で、地下があった。

でも地下へ続く階段はとても急で「危ないから下りちゃダメだ」と言われてた。

だけどそこは小学生男子二人、弟と二人でこっそり下りる事に。

最初は一段二段と降りて「キシシ」と笑う程度だったが、段々エスカレートしてきてもっと下までおずおずと下りた。。

下で弟が「ダメだよ、怒られちゃうよ」と言うと、兄としてはびびってると思われたくないと思い、おっかなかったが虚勢を張ってついに地下へ。

ギシギシ鳴る廊下、古く黒化した木の扉、空気も重くて正直怖かったんだが、また虚勢を張って弟に下りてくるように言った。

弟がそろそろと下りてきた後、二人でしばらく黙り込んだ。

子供ながらに何か不穏なものを感じたのかもしれない。

そっと「ここ開けてみよう」と言って扉に向かったら弟は「怒られるよ~」と泣き声、さらに兄の威厳を示すべく扉に手を掛けるも動かない。

ちょっと向きになって力いっぱい引いたがそれでもあかない。

ホッとして「鍵かかってるよ」と言うと、弟も近寄ってきて扉に軽く手を掛ける。

仙台箪笥のような金具がうってあり、いかにも重そうだったんだが、扉は「カラカラカラ……」と軽やかな音を立てて開き、そしてそのままビビリなはずの弟はスッと中へと入っていった。

そこから次の記憶は夕飯を食べている所。

その時の気分は「何となく変だと思ってるし、記憶が飛んでるのも分かってて、不思議だなと感じてはいるがあんまり気にしてない」ってとこ。

弟も普通にご飯食べてて、何となくボーっとそれを見てたと思う。

その夜、寝ていたら両親と祖父母が何やら騒いでいて目が覚めた。

弟が高熱を出した……

心配になって起きだし、弟の所へ行くと真っ赤な顔でぐったりしている。

祖母が慌てて「こっち来ちゃダメ!」と言い、俺は母に押されて布団へ戻った。

次の日になっても弟の熱は下がらず、医者が言うには「疲れてるんだと思う」との事だった。

夜に母が「今時そんなバカな事!」と言っているのを聞いた。

救急車を呼ぶか、今すぐ病院に連れて行くかと口論してるようだった。

その次の日の朝、祖父が死んだ。

弟の熱はウソのように下がった。

父が祖父の遺体に「親父親父……ありがとう……ありがとう……」と言って泣いてた。

母は土下座して泣いてた。

病み上がりとは思えない位元気な弟は「さっきおじいちゃんと話したばっかりだったのに」と泣いてた。

後で思ったがこれも明らかにおかしい。

弟の熱が下がったのは、祖父が息を引き取った後だったのだ。

その後は祖母を引き取ってあの家を取り壊す事に。

祖母は数年後に亡くなったが、あの時の事は話してくれない。

両親も、弟ですらなぜか教えてくれない。

お互いいいおっさんになって家庭も持った今でも口には出せない。

(了)

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