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中編 師匠シリーズ

師匠シリーズ 013話~015話 魚男・水の音・降霊実験

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013 師匠シリーズ「魚男」

ああ、夏が終わる前にすべての話を書いてしまいたい。

もう書かないと言った気がするが、そうして終わりたい。

俺、色々ヤバイことしたしヤバイ所にも行ったんだけど、幸いとり憑かれるなんてことはなかった。

一度だけ除けば。

大学一年の秋ごろ、サークルの仲間とこっくりさんをやった。俺の下宿で。それも本格的なやつ。

俺にはサークルの先輩でオカルト道の師匠がいたのだが、彼が知っていたやり方で半紙に墨であいうえおを書くんだけど、その墨に参加者のツバをまぜる。

あと、鳥居のそばに置く酒も、二日前から縄を張って清めたやつ。

いつもは軽い気持ちでやるんだけど、師匠が入るだけで雰囲気が違って、みんな神妙になっていた。

始めて十分くらいして、なんの前触れもなく部屋の壁から白い服の男が出てきた。

青白い顔をして無表情なんだけど、説明しにくいが『魚』のような顔だった。

俺は固まったが、他の連中は気付いていない。

「こっくりさん こっくりさん」と続けていると、男はこっちをじっと見ていたが、やがてまた壁に消えていった。

消える前にメガネをずらして見てみたが、輪郭はぼやけなかった。

なんでそうなるのか知らないが、この世のものでないものは、裸眼、コンタクト、関係ない見え方をする。

内心ドキドキしながらもこっくりさんは無事終了し、解散になった。

帰る間際に、師匠に「あれ、なんですか」と聞いた。

俺に見えて師匠が見えてないなんてことはなかったから。

しかし、「わからん」の一言だった。

その次の日から、奇妙なことが俺の部屋で起こりはじめた。

ラップ音くらいなら耐えられたんだけど、怖いのは、夜ゲームとかしていて何の気もなく振りかえると、ベットの毛布が人の形に盛りあがっていることが何度もあった。

それを見てビクッとすると、すぐにすぅっと毛布はもとに戻る。

ほかには耳鳴りがして窓の外を見ると、だいたいあの魚男がスっと通るところだったりした。

見えるだけならまだいいが、毛布が実際に動いているのは精神的にきつかった。

もうゲッソリして、師匠に泣きついた。

しかし師匠がいうには、あれは人の霊じゃないと。

人の霊なら何がしたいのか、何を思っているのか大体わかるが、あれはわからない。

単純な動物霊とも違う。一体なんなのか、正体というと変な感じだが、とにかくまったく何もわからないそうだ。

時々そういうものがいるそうだが、絶対に近寄りたくないという。

頼りにしている師匠がそう言うのである。こっちは生きた心地がしなかった。

こっくりさんで呼んでしまったとしか考えられないから、またやればなんとかなるかと思ったけど、「それはやめとけ」と師匠。

結局半月ほど悩まされた。

時々見える魚男はうらめしい感じでもなく、しいて言えば興味本意のような悪意を感じたが、それもどうだかわからない。

人型の毛布もきつかったが、夜締めたドアの鍵が朝になると開いているのも勘弁して欲しかった。

夜中ふと目が覚めると、暗闇の中でドアノブを握っていたことがあった。

自分で開けていたらしい。

これはもうノイローゼだと思って、部屋を引っ越そうと考えてた時、師匠がふらっとやってきた。

三日ほど泊めろと言う。

その間なぜか一度も魚男は出ず、怪現象もなかった。

帰るとき「たぶんもう出ない」と言われた。

そしてやたらと溜息をつく。体が重そうだった。

何がどうなってるんですかと聞くと、しぶしぶ教えてくれた。

「○○山の隠れ道祖神っての、あるだろ」

結構有名な心霊スポットだった。かなりヤバイところらしい。

うなずくと、「あれ、ぶっこわしてきた」
絶句した。

もっとヤバイのが憑いてる人が来たから、魚男は消えたらしい。

半分やけくそ気味で、ついでに俺の問題を解決してくれたという。

なんでそんなもの壊したのかは教えてくれなかった。

師匠は「まあこっちはなんとかする」と言って、力なく笑った。

014 師匠シリーズ「水の音」

大学一年の夏の始めごろ、当時俺の部屋にはクーラーはおろか扇風機もなくて、毎日が地獄だった。

そんな熱帯夜にある日、電話が掛かった来た。

夜中の一時くらいで、誰だこんな時間に!と切れ気味で電話に出た。

すると電話口からは、ゴボゴボゴボ……という水のような音がする。

水の中で無理やりしゃべっているような感じだ。

混線かなにかで声が変になっているのかと思ったが、喋っているにしては間が開きすぎているような気がする。

活字にしにくいがあえて書くなら、ゴボゴボ……ゴボ……シュー……ゴボ……シュー……シュー……ゴボ……ゴボリ……

いつもならゾーっするところだが、その時は暑さでイライラしていて頭から湯気が出ていたので、「うるせーな。誰じゃいコラ」と言ってしまった。

それでも電話は続き、ゴボゴボと気泡のような音が定期的に聞こえた。

俺も意地になって「だれだだれだだれだだれだ」と繰り返していたが、十分ぐらい経っても一向に切れる気配がないので、いいかげん馬鹿らしくなってこっちからぶち切った。

それから三ヶ月くらい経って、そんなことをすっかり忘れていたころに、留守電にあのゴボゴボゴボという音が入っていた。

録音時間いっぱいにゴボ……ゴボ……シュー……ゴボ……

気味が悪かったので消そうかと思ったが、なんとなく友人たちの意見を聞きたくて残していた。

それで三日くらいして、サークルの先輩が遊びに来ると言うので、そのゴボゴボ以外の留守録を全部消して待っていた。

先輩は入ってくるなり、「スマン、このコーヒー飲んで」。

自販機の缶コーヒーを買ってくるつもりが、なぜか『あったか~い』の方を間違えて買ってしまったらしい。

まだ九月で残暑もきついころだ。

しかし例の留守電を聞かせると、先輩はホットコーヒーを握り締めて、フーフー言いながら飲みはじめた。

先輩は異様に霊感が強く、俺が師匠と仰ぐ人なのだが、その人がガタガタ震えている。

「もう一回まわしましょうか?」と俺が電話に近づこうとすると、「やめろ!」とすごまれた。

「これ、水の音に聞こえるのか?」

青い顔をしてそう聞かれた。

「え?何か聞こえるんですか?」

「生霊だ。まとも聞いてると寿命縮むよ」

「今も来てる。首が」

俺には心当たりがあった。

当時、俺はある女性からストーキングまがいのことをされていて、相手にしないでいるとよく『睡眠薬を飲んで死ぬ』みたいなこを言われていた。

「顔が見えるんですか?女じゃないですか?」

「そう。でも顔だけじゃない、首も。窓から首が伸びてる」

俺はぞっとした。

生霊は寝ている間、本人も知らない内に首がのびて、愛憎募る相手の元へやってくると聞いたことがあった。

「な、なんとかしてください」

俺が泣きつくと、先輩は逃げ出しそうな引き腰でそわそわしながら、「とにかく、あの電話は掛かってきても、もう絶対に聞くな。本人が起きてる時にちゃんと話しあうしかない」

そこまで言って、天井あたりを見あげ目を見張った。

「しかもただの眠りじゃない。これは……へたしたらこのまま死ぬぞ。見ろよ、首がちぎれそうだ」

俺には見えない。

引きとめたが先輩は帰ってしまったので、俺は泣く泣くストーキング女の家に向った。

以降のことはオカルトから逸脱するし、話したくないので割愛するが、結局俺は、それから丸二年ほどその女につきまとわれた。

正直ゴボゴボ電話より、睡眠薬自殺未遂の実況中継された時の電話のほうが怖かった。

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015 師匠シリーズ「降霊実験」

大学一年目のGWごろから、僕はあるネット上のフォーラムによく顔を出していた。

地元のオカルト好きが集まる所で、深夜でも常に人がいて結構盛況だった。

梅雨も半ばというころに、そこで『降霊実験』をしようという話が持ち上がった。

常連の人たちはもう何度かやっているそうで、オフでの交流もあるらしかった。

オカルトにはまりつつあった僕はなんとか仲間に入りたくて、『入れて入れて。いつでもフリー。超ひま』とアピールしまくってOKがでた。

中心になっていたKOKOさんという女性が、彼女曰く霊媒体質なのだそうで、彼女が仲間を集めて降霊オフをよくやっていたそうである。

日にちが決まったが都合がつく人が少なくて、KOKO、みかっち、京介、僕というメンバーになった。

人数は少ないが三人とも常連だったので、「いいっしょー?」

もちろん異存はなかったが、僕は新入りのくせにある人を連れて行きたくてうずうずしていた。

それは僕のサークルの先輩で、僕のオカルト道の師匠であり、霊媒体質でこそないが、いわゆる『見える』人だった。

この人の凄さに心酔しつつあった僕は、オフのメンバーに自慢したかったのだ。

しかし、師匠に行こうと口説いても、頑として首を縦に振らない。

「めんどくさい」「ばかばかしい」「子守りなんぞできん」

僕はなんとか説得しようと詳しい説明をしていたら、KOKOさんの名前を出した所で師匠の態度が変わった。

「やめとけ」と言うのである。

「なぜですか」と驚くと、「怖い目にあうぞ」。

口振りからすると知っている人のようだったが、こっちは怖い目にあいたくて参加するのである。

「まあ、とにかく俺は行かん。何が起きてもしらんが、行きたきゃ行け」

師匠はそれ以上なにも教えてくれなかったが、師匠のお墨付きという思わぬ所からのオフの楽しみが出てきた。

当日、市内のファミレスで待ち合わせをした。

そこで夕食を食べながらオカルト談義に花を咲かせ、いい時間になったら会場であるKOKOさんのマンションに移動という段取りだった。

KOKOさんは綺麗な人だったが、抑揚のないしゃべり方といい、気味の悪い印象をうけた。
みかっちさんはよく喋る女性で、KOKOさんは時々それに相槌をこっくり打つという感じだ。

驚いたことに、二人とも僕の大学の先輩だった。

「キョースケはバイトあるから、あとで直接ウチにくるよ」とKOKOさんが言った。

僕はなんとなく、恋人どうしなのかなあと思った。

そして夜の十一時を回るころ、みかっちさんの車で三人でマンションに向かった。

京介さんからさらに遅れるという連絡が入り、もう始めようということになった。

僕は俄然ドキドキしはじめた。

KOKOさんはマンションの一室を完全に目張りし、一切の光が入らないようにしていた。

こっくりさんなら何度もやったけれど、こんな本格的なものははじめてだ。

交霊実験ともいうが、降霊実験とはつまり、霊を人体に降ろすのである。

真っ暗な部屋にはいるとポッと蝋燭の火が灯った。

「では始めます」

KOKOさんの表情から一切の感情らしきものが消えた。

「今日は初めての人がいるので説明しておきますが、これから何が起こっても決して騒がず、心を平静に保ってください。心の乱れは、必ず良くない結果を招きます」

KOKOさんは淡々と喋った。みかっちさんも押し黙っている。

僕は内心の不安を隠そうと、こっくりさんのノリで「窓は開けなくてもいいんですか?」と言ってみた。

KOKOさんは能面のような顔で僕を睨むと囁いた。

「窓は霊体にとって結界ではありません。通りぬけることを妨げることはないのです。しかし、これから行なうことは私の体を檻にすること。うまく閉じこめられればいいのですが、万が一……」

そこで口をつぐんだ。僕はやりかえされたわけだ。

逃げ出したくなるくらい心臓が鳴り出した。しかしもう後戻りはできない。

降霊実験が始まった。

僕は言われるままに目を閉じた。

蝋燭の火が赤くぼんやりと瞼に映っている。

どこからともなくKOKOさんの声が聞こえる。

「……ここはあなたの部屋です。見覚えのある天井。窓の外の景色。……さあ起き上がってみてください。伸びをして、立つ。……すると視界が高くなりました。あたりを見まわします。……扉が目に入りました。あなたは部屋の外に出ようとしています」
これはあれではないだろうか。

目をつぶって頭の中で自分の家を巡るという。

そして、その途中でもしも……という心理ゲームだ。

始める直前にKOKOさんが言った言葉が頭をかすめた。

『普通は霊媒に降りた後、残りの人が質問をするという形式です。しかし私のやりかたでは、あなた方にも“直接”会ってもらいます』

僕は事態を飲みこめた。恐怖心は最高潮だったが、こんな機会はめったにない。

鎮まれ心臓。鎮まれ心臓。

僕はイメージの中へ没頭していった。

「く」と言う変な声がして、KOKOさんが体を震わせる気配があった。

「手を繋いでください。輪に」

目を閉じたまま手探りで僕らは手を繋いだ。

フッという音とともに蝋燭の火照りが瞼から消え、完全な暗闇が降りてきた。

かすかな声がする。

「……あなたは部屋を出ます。廊下でしょうか。キッチンでしょうか。いつもと変わりない、見なれた光景です。あなたは十分見まわしたあと、次の扉を探します……」

僕はイメージのなかで、下宿ではなく実家の自室にいた。すべてがリアルに思い描ける。
廊下を進み、両親の寝室を開けた。

窓から光が射し込んでいる。畳に照り返して僕は目を細める。

僕は階段を降り始めた。キシキシ軋む音。手すりの感触。

すぐ左手に襖がある。客間だ。いつも雨戸を降ろし昼間でも暗い。

僕は子供の頃ここが苦手だった。

かすかな声がする。

「……あなたは歩きながら探します。……いつもと違うところはないか。……いつもと違うところはないか」

いつもと違うところはないか。僕は客間の電気をつけた。

真ん中の畳の上に、切り取られた手首がおちていた。

僕は息を飲んだ。

人間の右手首。切り口から血が滴って、畳を黒く染めていた。

この部屋にいてはいけない。

僕は踵を返して部屋を飛び出した。

廊下を突っ切り一階の居間に飛びこんだ。

ダイニングのテーブルの上に足首がころがっていた。

僕はあとずさる。まずい。失敗だ。この霊はやばい。

もう限界だ。僕は目を明けようとした。

開かなかった。僕は叫んだ。

「出してくれ!」

だがその声は、誰もいない居間に響くだけだった。

僕は走った。家の勝手口に僕の靴があった。

履く余裕もなくドアをひねる。だが押そうが引こうが開かない。

「出してくれ!」

ドアを両手で激しく叩いた。

どこからともなくかすかな声がする。しかしそれはもう聞き取れない。

僕は玄関の方へ走った。途中で何かにつまずいて転んだ。

痛い。痛い。本当に痛い。

つまづいたものをよく見ると、両手足のない人間の胴体だった。

玄関の扉の郵便受けがカタンと開いた。何かが隙間から出てこようとしていた。

僕はここで死ぬ。そんな予感がした。

そのときチャイムの音が鳴った。

ピンポンピンポンピンポンピンポン

続いてガチャっという音とともに、明るい声が聞こえた。

「おーっす!やってるか~」

気がつくと僕は目を開いていた。

暗闇だ。だが、間違いなくここはKOKOさんのマンションだ。

「おおい。ここか」
部屋のドアが開き、蛍光灯の眩しい光が射し込んできた。

KOKOさんとみかっちさんの顔も見えた。

「おっと邪魔したか~?スマン、スマン」
助かった。安堵感で手が震えた。

光を背に扉の向こうにいる人が女神に見えた。

その時KOKOさんが「邪魔したわ」と小さく呟いたのが聞こえた。

僕は慌ててKOKOさんから手を離した。

僕は全身に嫌な汗をかいていた。

僕は後日、師匠の家で事の顛末を大いに語った。

しかし、この恐ろしい話を師匠はくすくす笑うのだ。

「そいつは見事にひっかかったな」

「なにがですか」

僕はふくれた。

「それは催眠術さ」

「は?」

「その心理ゲームは、本来そんな風に喋りつづけてイメージを誘導することはない。いつもと違うところはないか。なんてな」

僕は納得がいかなかった。しかし師匠は断言するのだ。

「タネをあかすと、俺が頼んだんだ。お前が最近調子に乗ってるんでな。ちょっと脅かしてやれって」

「やっぱり知りあいだったんですか」

僕はゲンナリして、臍のあたりから力が抜けた。

「しかしハンドルネーム『京介』で女の人だったとは。僕はてっきりKOKOさんの彼氏かと思いましたよ」

このつぶやきにも師匠は笑い出した。

「そりゃそうだ。KOKOは俺の彼女だからな」

翌日サークルBOXに顔を出すと、師匠とKOKOさんがいた。

「このあいだはごめんね。やりすぎた」

頭を下げるKOKOさんの横で師匠はニヤニヤしていた。

「こいつ幽霊だからな。同じサークルでも初対面だったわけだ」

KOKOさんは昼の陽の下に出てきても青白い顔をしていた。

「ま、お前も、霊媒だの下らんこと言って人をだますなよ。俺が催眠術の触りを教えたのは、そんなことのためじゃない」

KOKOさんはへいへいと横柄に返事をして、僕に向き直った。

「茅野、歩く、と言います。よろしくね、後輩」

それ以来、僕はこの人が苦手になった。

その後で師匠はこんなことを言った。

「しかし、手首だの胴体だのを見たってのはおかしいな。いつもと違うところはないかと言われて、お前はそれを見たわけだ。お前の中の幽霊のイメージはそれか?」

もちろんそんなことはない。

「なら、いずれそれを見るかもな」

「どういうことですか」

「ま、おいおい分るさ」

師匠は意味深に笑った。

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