中編 怪談

門番への断罪【ゆっくり朗読】1500

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昔、海外に留学していた頃の話。

810 :本当にあった怖い名無し:2016/01/25(月) 00:38:41.47 ID:wrr7n7Ow0.net

国名を言ったら身元がばれそうだから伏せておくけど、ヨーロッパの小国とだけいっておく。

一年間の留学中、大学近くの寮に住んでいた。

その大学というのが、すごい田舎にあるボロボロの校舎。

ヨーロッパって街並み守るために建築の法律が厳しいらしくて、大学も歴史的建造物みたいなのに指定されていて、下手にリフォームしたり取り壊したりができない。

だから壁ボロボロだし床が板張りだし、しかも冷暖房もついてない。日本だったら地震で一瞬で崩れるんじゃないかって思った。

大学がそんな状態なわけだから、まあ寮も負けず劣らずボロボロ。

水の出は悪いわ隙間風吹きすさぶわネズミ住んでるわで最悪。もちろん冷暖房は無い。

共有スペースみたいな場所にはいちおう暖炉があったから、冬はそれでなんとか凌いでた。

で、寮は周りをレンガの壁で囲まれてて、入るには正面の門を通るしかなかった。

その門の横に小さいプレハブ小屋のようなのがくっついていて、そこには門番の爺さんが常に駐在していた。

この門番が俺が寮に入って少ししてから新しく入ってきた奴なんだけど、昔話に出てきそうな典型的に性格悪い爺さんだった。

寮の門は閉門時間があって、その時間までに寮に帰らなくちゃいけなかった。

遅れたら入り口近くにある詰所小屋にいる門番に声をかけなきゃならない。

門番は違反生徒の名前を記録しておいて、後日寮長に報告する。

違反生徒は呼び出されて、説教やら反省文やらの罰則が課されるわけだ。

前の門番はずいぶん長く働いてたみたいで、生徒にも理解のある優しい爺さんだった。

俺も一回だけ閉門時間を10分くらい過ぎてしまったことがあったんだけど、「早く入れ。俺は何も見てない」ってウインクしながら言って見逃してくれた。

本当にダンディーでイケメンな爺さんだった。ビール腹でボールみたいな体型だったけど(笑)

だけど新しい門番は違った。

とにかく細かいことにうるさいし、何より陰険だった。

5分くらい遅れただけでも説教、そして寮長に報告。

説教が終わらないと入れないから大人しく聞くしかないんだけど、それがまた長い割にしょうもない内容で聞いてるのが辛くなる。

門番は小屋の窓から顔しか出さないから、外が大雨だろうと大雪だろうとお構いなし。

むしろそんな日の方が説教は長かったし、そのせいで風邪ひいたやつなんかもいた。

俺の使ってた部屋は二人部屋で、もう一人の留学生と一緒に使っていた。そいつの名前を仮にカロヤンとしておく。

カロヤンはヨーグルトで有名な某国の留学生だったんだけど、学費とか寮の費用を全額国が支援するほど頭のいいやつだった。

そんでもって性格も良くて、寮の中でも一目置かれていた。

初めての留学で人見知りが激しかった俺にも気さくに話しかけてくれた。

慣れない環境で俺が鬱にならなかったのは、本当にカロヤンのおかげだったと思う。

 

前置き長くなったが、ここからが本題。

 

ある日、カロヤンが新しい門番の所業に耐えかねてそいつに直談判しに行った。

さっきも言ったけど、門番の説教は悪天候の時の方が長かった。

とある生徒が雪の日にその説教に捕まってしまい、氷点下の中長時間外に立たされていたことが原因で体調を崩した。

その生徒(仮にアントニオとしておく)はもともと体が弱くて、以前からちょいちょい風邪をひいたりしてたんだけど、その事件で重めの肺炎にかかってしまい、留学を中止して母国に帰らなくてはならなくなった。

そもそも雪の日にアントニオの帰りが遅れたのは、病院に行っていたからだった。

国に帰らせるほどの病気を悪化させた原因は門番にあるし、責任をとらせるべきだとカロヤンは主張した。

具体的にはカロヤンに謝罪すること、慰謝料を支払うこと、あと閉門のルールの見直しも頼みに行った。

ほかにも細かいことを言ってたような気がするけど、当時の俺の語学力では理解できなかった……

結果、カロヤンは留学を続けることができなくなった。

突然カロヤンの奨学金の打ち切りの知らせが来た。

当然のことながら原因は門番。直談判に来たカロヤンを邪魔に思い、不良生徒として大学に報告していた。

寮でしょっちゅう問題を起こしてるって嘘の内容を寮長に送りまくったことで、その一部がカロヤンの母国の大学に報告された。

カロヤンはいわば国の代表として留学に来ていた訳だから、ちょっとでも悪い知らせが来ると国のイメージダウンになるというので、すぐに奨学金が止められた。

俺はその時はじめて、普段は温厚なカロヤンがブチ切れたのを見た。

こんな言い方はなんだけど、たぶん今まで優等生として生きてきたのに、勝手な言いがかりでダメ人間に認定されたことにプライドが傷つけられたんだろうとおもう。

あの時の怒りようは凄まじかった。気が狂ったのかとも思った。

もしかしたらあの時本当に狂ってたのかもしれない。

知らせを受けた後カロヤンはすぐに行動に出た。

ただし今度は直談判ではなく『復讐』のためだ。

ほかの生徒たちの鬱憤も溜まっていたし、人望のあったカロヤンの提案だったため寮に住む生徒のほとんどが賛成した。もちろん俺も。

とはいえ俺は「明日の夕方、寮の地下室に来てほしい」としか言われなかった。

翌日、俺は言われた通りに寮の地下室に行った。

地下は小さいホールになってるんだが、その日はなぜか電機の照明がすべて切られ、壁の隅に置いた燭台でろうそくが燃えているだけだった。

ホールの中にはすでにかなりの数の生徒が集まっていて、全員が黒い布みたいなのを被っていた。

地下だからもちろん外から明かりは入ってこない。

薄暗い部屋にひしめく黒マスク達はかなり迫力があって、俺はマジでビビった。

黒マスクの一人が俺に寄ってきて、同じマスクを渡してくれた。よく見たらそいつはカロヤンだった。

「それを被って、あとは待っていてくれればいい。周りの奴が何か叫んだらそれを繰り返して叫べ」

そんなことを言われたけど、正直俺は怖すぎてすぐに部屋に帰りたい気分だった。

ホールにいるのは寮生全員のうち半分くらいだった。

全員がいなくなると門番が怪しがるっていうので、残りの連中は普段通りにしているらしい。

俺もそっちの役になりたいと切実に思った。

しばらく待っていると上から降りてくる足音がした。

すごくゆっくり、なるべく音を立てないようにしているのが分かり、何かに警戒しているようだった。

気づいたらカロヤンともう一人が、階段を下り切ったすぐ横の壁にへばりついて上の様子を伺っていた。

そして足音が近づいてきたところで腕を伸ばし、降りてきた人物を捕まえた。

……門番だった。

門番は何が起こったのかよくわかってないみたいで、ろくに抵抗する間もなくカロヤン達に引きずられホールの真ん中に連れていかれた。

そこで初めてホールの真ん中に斧が置いてあるのが見えた。普段は暖炉の薪を切るのに使っていたものだ。

それを見た門番、真っ青。もちろん俺も真っ青。

こいつら門番を殺す気なのか?流石にやりすぎじゃないか?と思った。

部屋に戻って警察に電話しようとも考えたが、俺の周りは黒マスクらに囲まれていてどうしようもない。

俺もマスクで顔隠れてたけど、内心パニックで泣きそうになってた。

そんななかカロヤンがマスクを取って門番の前に立ち、

「泥棒じゃなくてよかったな」

と言った。

後になって知ったんだが、一人の生徒が

「地下室から不審な物音がする。強盗じゃないか」

と言って門番をおびき出していたそうだ。

階段を下りるときに警戒していたのはそのためらしい。

カロヤンは門番に向かっていろいろ話していたけど、パニクった俺はよく聞いていなかった。

かろうじて

「貴様の悪辣なる精神へ罰を」

「青年の進路を絶った罪に裁きを」

みたいに、芝居がかった話し方をしているのは分かった。

そして最後の「斬首によって断罪する」という締めくくりは、なぜかしっかりと理解できた。

門番に細い布で目隠しをして肩を押さえつけて、土下座のような状態で固定した。

門番はものすごい量の脂汗をかいてぶるぶる痙攣していた。

俺はもうこれから起こることへの理解が追い付かずに頭が真っ白になっていた。

そしてカロヤンは斧ではなくポケットからハンカチを取り出した。

ハンカチを三角に折って、両端を持って引っ張ったまま門番の首にそっとあてた。

門番は土下座のまま飛び上がった。

そこで俺は理解した。カロヤンは門番を殺すつもりではなかったのだと。

目隠しをした門番は完全にハンカチを斧だと思いこんでいる。

それを思いっきり首に当てると、本当に切られたと錯覚するだろう。

よく見たらカロヤンの横で別の黒マスクがカメラを構えていた。

門番のみっともない姿を残して赤っ恥をかかせてやろうという算段だったのだ。

一気に肩の力が抜けた。

冷静になってみてみると、カロヤンは満面の笑みでハンカチ構えてるし、黒マスク達もちょいちょい声に出さないように笑ってるし。

どこの国でも学生なんてみんなこのレベルの頭脳なんだな(笑)

「彼に裁きを!」

カロヤンがそう叫ぶと、周りにいた黒マスク達も「裁きを!」と叫びだした。

俺も叫んだ。

カロヤンがハンカチを振り下ろし門番の首に当てた。

門番は「ンノフォ!!」みたいな謎の叫び声をあげて横に倒れた。

パニックになったようでそのまま魚みたいにビクンビクン跳ね上がった。

カメラのフラッシュが光る。俺たちは爆笑。

ひとしきり笑った後、カロヤンが門番の目隠しを取ろうとした。

が、門番はかなり時間がたったというのにいまだにビクビク震えてる。

震えながら思いっきり体を丸めたり、逆にエビぞりになったり異常な動きをしていた。

心配になったのかカロヤンが門番の肩に触れた瞬間、

「ンヂェェェェルルルルウルウウウ!!!」

という雄叫びを上げて動かなくなった。

口からよだれと泡が溢れ出てきた。

一気に地下室が静まり返った。

誰から見ても明らかだった。

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門番は死んでいた。

おそらくあまりの緊張状況に心臓発作でも起こしたのだろう。

すぐに処置すればどうにかなったのかもしれないが、残念ながらただの若造の俺たちは、何もすることができずに突っ立ってみているだけだった。

しばらく沈黙が続き、俺はこの事件が大学にばれたら退学だろうな、とか考えていた。

たぶんみんなおんなじことを考えていたんだと思う。そしてどうすればそれを回避できるのかということも。

「こいつ埋めっちまおう」

突然カロヤンが言った。

俺たちは何も言わなかったが、皆カロヤンに賛成しているのは明らかだった。

ここで起きたことは俺たちしか知らない。黙っていれば門番失踪したというだけで片付くのではないか。

都合のいいことに、地下室は地面をくり抜いて壁をレンガで補強しただけの簡単な作りで、ホールの地面は土のままだった。

壁のレンガが崩れかけている所の下に穴を掘って、門番を横たえた。

まだ死んでから時間が経っていないためか体がぐにゃぐにゃしていた。目隠しはしたままだった。

土をかけてならし、その上に崩れ落ちたレンガを適当にのせて誤魔化した。

地下室から戻ると部屋にいた待機組が集まってきたが、門番の姿が無いことを不思議がった。

カロヤンが「門番とは和解した。事情があって彼はしばらく寮からいなくなる」とか言って適当に流した。

もちろんみんな疑わしそうな顔をしていたが、あまりの俺たちの異様な様子に何も言い返してこなかった。

数日後、門番から連絡が途絶えたことに大学が気づき、調査が入った。

警察が来て寮の中を調べたり、学生に聞いたりもしていたが、結局門番は見つからなかった。

門番は行方不明扱いになったそうだが、その後の詳しい話は特に聞いていない。

が、まさか地下室に埋められているとは考えてもいないだろう。

そのさらの数日後にカロヤンが帰国した。

それまで俺とカロヤンはそれまで通り仲の良いルームメイトとして普通に過ごした。

その後は特に何かが起こるでもなく、俺は普通に留学を終えて日本に帰ってきた。

本当に心霊現象とか金縛りとかも一切なく、至って平和な留学生活だった。

これが八年前の出来事。

今となってはあの門番のことは夢だったんじゃないかとも思っていた。

先日、老朽化が激しかった寮が取り壊され、地下から白骨が発見されたという話を聞くまでは……

[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1449924627/]

 

参考資料・ノーシーボ効果

ノーシーボ効果とは医学的には無害なものでも有害であると思い込むことにより病気になったり、症状を悪化させたり場合によっては死にいたるとう現象。

偽ギロチン刑

ある国でギロチンにかけられ、まさに殺される寸前の死刑囚に対してある実験を行った。
それは……

ギロチンを落としたと見せかけて囚人の首に数滴の水をたらすというもの。

「これから死刑を執行する!」

執行人が宣言すると同時に、ギロチンを止めていた縄を切った。

《バーン!!》という音とともに執行人が囚人の首に数滴の水を垂らした。

すると、囚人はギロチンが首に落ちたのだと思い込み、死んでしまった。

実は、ギロチンは今回の実験のために囚人の首に達する前に、止められるようになっていたのだ。

 

ブアメード実験(ヴードゥー死心理実験)

1883年、オランダにおいてブアメードという国事犯を使って一つの実験が行なわれた。

実験の内容は、「一人の人間からどれだけ血液をとったら人間は死ぬのか」というもの。
医師団は、ブアメードをベッドの上にしばりつけ、その周りで話し合いを始めた。

そして、「三分の一の血液を失ったら人間は死ぬだろう」という結論に達した。

医師団は、「これから実験をはじめる」といって、ブアメードの足の親指にメスを入れ、用意してある容器に血液をポタポタと落としはじめた。

数時間が過ぎて、医師団は「どれぐらいになりましたか?」「まもなく三分の一になります」と会話をしました。

それを聞いていたブアメードは静かに息を引きとったという。

実は、医師団はこの実験で心理実験をしていたのだ。

ブアメードの足にメスを入れるといって痛みだけを与え、実際にはブアメードの足はメスで切られていなかった。

当然、容器には血ではなく用意しておいた水滴をたらしていただけだった。

しかし、ブアメードは、メスで自分の足を切られ、自分の体内から血液がどんどんなくなっていったと思い、死んでしまったのだ。

 

思い込み凍死

アメリカのある鉄道会社の作業員が、冷凍車の中に入って作業をしていた。

ところが、中に人が入っているとは思わず、外から扉を閉めて鍵をかけてしまった。

それから一日後に、作業員は、凍死して発見されたそうだ。

しかし、冷凍車の電源は切られていたのだ。

作業員は室温がどんどん下がってきたと思い込み凍死してしまったという。

 

参考文献

自らを死に至らしめる力は、自らを癒す力でもある 悲しみ、喜び、驚き、怒り、不安、恐怖、ストレス、絶望、暗示……、 人間は自らの「心の力」だけで死んでしまうことがある。

本書は、極度の心理状態がもたらす究極の死=「心因性死」の謎を、実際にあったエピソードをもとに解き明かしたサイエンス・ノンフィクションです。

たとえば、重病でもないのに手術台に横たわっただけでショック死した患者、ホームシックが原因で集団死したスイスの傭兵たち、黒魔術によって呪い殺された未開民族、大事故にあった娘の無事を確認した途端に死んでしまった母親など、本書で例示された心因性死のエピソードは500を超え、そのどれもが「まさか、そんなことで死んでしまうなんて!」と驚きを禁じ得ないものばかりでです。

なかでも日本のビジネスマンの「過労死」を、自己目標を達成できなかったことが原因で生じる心因性死であると論じている点は、多くの読者の興味を喚起するはず。そして本書の結論として導き出された「自らを死に至らしめる心の力は自らを癒す力でもある」という見解から、幸福な人生を築いていくための数々のヒントを見つけ出すことができるでしょう。

本書は、2001年にドイツで発表されるやいなや、テレビや新聞など多くのメディアがこぞって取り上げ、一種の「心因性死ブーム」にもなったほどの評判を巻き起こしました。また邦訳版として、精神科医の春日武彦氏が解説を寄稿。そのなかでも記されているように、本書は人間の「死」と「生」という根源的テーマに迫った嚆矢の1冊であると言えるでしょう。

[出典:Amazon]

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