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学校行けますよね? r+6,149-6,682

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学生時代に聞かされたその話を、私は今でも妙なざらつきをもって思い出す。

語ったのは、ある女子高生だった。彼女の声には芝居じみた起伏もなく、ただ淡々と、それでいて微かに震える調子で語られていた。だからこそ、聞いているうちに私の背筋は逆立ち、耳の奥に冷たい風が吹き込むような感覚にとらわれたのだ。

彼女が通っていた高校は、川沿いの細い県道を抜けた先にある。朝の通学時間帯は車や自転車が入り乱れ、事故が起きても不思議ではない道だった。それでも彼女にとっては毎日の通学路であり、習慣のように同じ道を通っていたという。

最初の「事故」が起きたのは、ある春の朝だった。駐車場の出口から車が顔を出し、彼女と視線を交わした。互いに譲ろうとする一瞬の逡巡があったが、運転手が手で合図をした。「先にどうぞ」という仕草だった。そこで自転車を漕ぎ出すと、同時にその車も前へと進み、彼女の横をかすめて接触した。地面に投げ出され、膝から血が流れる。痛みよりも混乱が先に立ち、声も出ない。そんな彼女に運転手は小さく頭を下げるような仕草をしながら「大丈夫ですか?学校、行けますよね」と告げたという。奇妙なのは、その一言だった。

「行けます!」と反射的に答えてしまい、そのまま学校へ行った。保健室で友人に驚かれ、消毒されながらも、妙な会話の記憶だけが脳裏にこびりついた。名前も顔も曖昧な運転手の姿と共に。

それから半年が経った夏の日、再び同じ道で事故に遭った。横から突っ込んできたバイクにはねられ、彼女は道の中央に投げ出された。意識が霞む中、ヘルメットを外さない運転手が近づいてきて、言った言葉はやはり「学校行けますよね」だった。その言い回しにぞわりとしながらも、またしても返事をして学校へ向かってしまった。

恐怖よりも不可解さのほうが強かった。なぜ同じ言葉なのか、なぜ誰もそれを不自然と思わないのか。やがて彼女はその道を避けるようになった。

秋のある日、別ルートで学校へ向かっていた時、騒ぎに出くわした。見知った後輩が路上に倒れており、その傍らで運転手が「大丈夫ですよね、学校に行けますよね」と言っていた。汗が冷たく背中を流れ、呼吸が詰まった。あの声だった。間違いなく、彼女を二度はねた人物の声。

通行人が駆け寄り、病院から駆けつけた医師が応急処置を始める。その合間に誰かが警察を呼び、運転手は取り囲まれた。呆然と見ている彼女の前で、男はただ笑っていたという。

後日、警察から耳にした事実はさらに奇妙だった。あの運転手による事故はすでに複数報告されており、いずれの被害者にも同じ言葉を投げかけていた。「学校行けますよね」と。しかも驚くべきことに、被害者の大半はまだ学生で、登校途中だった。

ただ、そこから先の調書に残された記録は途切れがちで曖昧だった。運転手の身元もはっきりせず、免許証の住所には誰も住んでいなかった。さらに、被害者の中には「車だった」と証言する者もいれば「バイクだった」と語る者もいた。彼女にとっても、最初は車、次はバイク。形を変えて現れるその運転手を思い返すたび、頭がおかしくなりそうだったという。

彼女はそれ以来、あの道を避け、家族にも固く注意を促している。だが、それから何年も経った今でも、朝の通勤途中に信号待ちをしていると、耳の奥でふとあの言葉が蘇ることがあるらしい。「学校行けますよね」と。

まるで事故そのものが、学校へ向かわせるための儀式のように繰り返されているのではないかと、彼女は今でも思うことがあるという。もしあの時「行けません」と答えていたら、何が起きていたのか……彼女は考えたくもないと、最後にぽつりと呟いた。

(了)

[出典:http://kohada.open2ch.net/test/read.cgi/kankon/1418642426/]

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