ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚 n+2025

呼んだのはどちらか nw+318-0217

更新日:

Sponsord Link

平成が始まった翌日、塾へ向かう夕暮れの新宿で、私は一人の幼子を見た。

二歳ほどの男の子だった。母親に手を引かれ、こちらを見上げていた。
その黒い瞳だけが妙に澄んでいた。

私は胸の奥が熱くなり、勝手に名前を与えた。
「平成生まれのコージくん」と。

誰にも言っていない。声にも出していない。ただ心の中で、そう呼んだ。
すれ違いざまに「強く生きろよ」と祈った。それだけだ。

その瞬間、確かにあの子は私を見ていた。

それから十七年が過ぎた。

神戸のコンビニで、若い男がレジに立っていた。二十歳前後。茶色い髪。どこにでもいそうな顔。

会計を済ませ、背を向けたときだった。

「どーも。平成生まれのコージです」

はっきりと聞こえた。

その言い方は、初対面の挨拶ではなかった。
確認のようだった。

振り返れなかった。
ただ曖昧に「どーも」と返して店を出た。

外の湿った夜風の中で、私は思い出した。
あのとき、すれ違いざまに名付けた瞬間。
あの子は、私をじっと見ていた。

目が合ったのかどうか曖昧だったはずなのに、今ははっきり思い出せる。
あれは、見られていた目だった。

私はずっと「偶然」だと言い聞かせてきた。
聞き間違いだ、と。

だが、ひとつだけ説明がつかないことがある。

あの若者は、名乗ったあと、ほんの少し首を傾げた。
まるで「覚えていますよね」と確認するように。

平成は終わった。

だが、ときどき街で若い男とすれ違うと、無意識に思ってしまう。

この中の誰かに、私は名前を与えてしまっていないか。

もし心の中で勝手に呼んだことが、向こうに届いているとしたら。

もしかすると、あの日からずっと、私は見られていたのかもしれない。

あの夕暮れに。

あの澄んだ瞳に。

そして今も。

[出典:381 :本当にあった怖い名無し:2011/07/14(木) 22:02:57.50 ID:/ske0H7HO]

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2026 All Rights Reserved.