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奇怪な登山者 r+3100

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これは、友人が筑波山で体験した話だ。

平日、珍しく休みが合ったということで彼女と一緒に筑波山に登ったらしい。週末の混雑を避けられると、二人で喜んでいたが、日頃の運動不足がたたってか、すぐに息が切れ、会話も途切れた。ただ黙々と登るだけの時間が続いたそうだ。

その山道はさすがに平日だけあって、人影はまばらだった。登り始めたのが朝早かったこともあり、下りてくる人ともほとんどすれ違わない。そんな中、一人だけ同じ方向に登っている登山者が目に入った。

大学生くらいの若い男性。青いジャージに、金属フレーム付きの大きなリュックを背負っていた。その男の登り方は独特だったという。数歩進んでは戻り、大岩によじ登ったり、藪に分け入ったりと、奇妙な動きを繰り返していた。訓練中なのかと最初は深く考えず、見送っていた。

男が最初に追い抜いていった時、小さく「こんにちは」と挨拶してきた。登山ではよくあることだ。友人も「こんにちは」と返し、その背中を見送った。妙な動きをする割には足が速く、すぐに見えなくなったという。

しばらくして、ふいに耳元で「こんにちは」と聞こえた。振り返ると、またさっきの男が追い抜いていくところだった。あまりに自然で、すれ違ったことに気づかなかっただけかと思い、特に気にしなかったそうだ。

だが、男が見えなくなるたびに、同じ出来事が繰り返された。三度目の「こんにちは」が聞こえた時、さすがに友人は動揺した。

道の分岐はなく、追い抜かれるほどの速度で歩いていたわけでもない。それなのに、あの男がまた背後から現れる。何度も後ろ姿を見送るたびに、嫌な予感がじわじわと胸を締め付けた。

「こんなに不自然なことがあるだろうか?」

休憩できる開けた場所に着いた時、耐えきれず、彼女に話を振った。
「さっきの大きなリュックの人、何だったんだろうね?」

彼女は怪訝そうな顔をして答えた。
「え? そんな人いた?平日だから誰もいないなーって思ってたんだけど」

背筋に冷たいものが走った。

その後、頂上に着くまで男の姿を見ることはなかった。達成感も喜びもなく、二人はそそくさとケーブルカーで下山した。

真昼間の出来事だった。幽霊らしきものではなかったし、普通の人間にしか見えなかったという。だが、思い返すほどに「普通」ではなかった。

「あれは一体何だったんだろう?」
友人は今もそう呟く。

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