友人が体験した、夏の夕暮れの話。
近所のスーパーに買い物に行った時の出来事らしい。
夕方六時、まだ日が落ちきらない蒸し暑さの中、チャリを漕いでスーパーへ向かったという。夕飯の材料を軽く揃えるつもりで、軽い気持ちだったと語っていた。
入口に着くと、白いシャツに半ズボンの小さな男の子が走り回っていたらしい。見たところ、五歳くらいの子どもだ。夕方のスーパーは混みがちだし、危ないなと少し気を留めつつも、特に気にせず中へ入った。
その時――子どもがふっと消えた。まるで霧に溶けるように、突然視界から消え失せたのだ。
「見間違いだろう」と自分に言い聞かせたが、なんとなく胸に引っかかる感覚があったという。
買い物を済ませ、会計を終えて出口へ向かうと、またあの子がいた。今度は静かに歩いていた。先ほどのことがあったので目をそらさず見つめていると、また消えた。同じように、何の前触れもなく。
二度目ともなると、ただの偶然や見間違いでは片付けられない。胸の奥にぞわぞわとした恐怖が広がり、彼は買った品をリュックに詰め込み、足早に家路へ向かった。
部屋に戻っても、その不安は完全に消えなかった。いつも貼り付けている壁のメモ用紙が、突然ひらりと床に落ちた。テープがしっかりと貼られていたはずなのに、そんな簡単にはがれるものではない。
「あれは、幽霊だったのかもしれない」――そう考えると、冷たい汗が背中を伝う。
幽霊というのは、見たつもりがないだけで、案外とすれ違っているのかもしれない。
ただしその子の姿が、目に映った理由があったとしたら――。
それが警告か、それとも誘いか、誰にも分からないのだ。
[出典:897 :本当にあった怖い名無し:2016/07/29(金) 17:40:58.15 ID:1PHKKifI0.net]