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短編 山にまつわる怖い話

正丸峠(しょうまるとうげ)【ゆっくり朗読】3253-0105

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高校生の頃の話です。

当時、和食屋でバイトをしていたんですが、バイト仲間には自分含めバイク乗りが多く、しょっちゅう大人数で遊んでいました。

バイトが終わる夜中から、数台の車と排気量様々なバイクを乗り回し、肝試しや花火などしてはバカ騒ぎしていました。

そのうち、400ccの中型バイク乗り同士が特に仲良くなり、バイトが無い日も峠に走りに行くようになりました。

あの日は夏真っ盛りの猛暑の日でした。

日中から正丸峠に行こうとなり、四人で走りに行くことになりました。

正丸峠(しょうまるとうげ)は、埼玉県飯能市と同県秩父郡横瀬町の境界にある峠。標高636m。秩父・奥武蔵にある峠の一つである。江戸時代、江戸と秩父と結ぶ道の一つとして秩父札所巡礼などに用いられた「正丸峠」は、現在の「旧正丸峠」である。

峠より西の様子(2008年11月)

正丸、奥多摩はしょっちゅう走りや肝試しに行っていたので、軽い暇つぶし感覚でした。

確かその日は、今まで走ったことのない旧道に行ってみようとなり、やけに細く曲がりくねった道を走ったのを覚えています。

不慣れな初見の道というのもあり、あまり飛ばせずそろそろと走り、頂上辺りでタバコを吸って下らない会話をし帰路につく事に。

来た道を戻り、走り慣れたいつもの道に出ましたが、この辺から記憶が薄れています。

いや、記憶はあるのですが、ただただ暑く、異常な喉の渇きを感じながら前を走る友人のバイクを追う。

そんな記憶しかありません。大概は悪ふざけをしたり、蛇行したりするのですが、ただもくもくと1列に並び走っていました。

皆軽い脱水症状だったのかもしれません。

ふと先頭を走る一台が、反対車線にある白砂利が敷き詰められたスペースに入りました。

それに続き皆が右折する形で白砂利のスペースへ流れ込み、バイクを降りました。

自販機も日陰もないこんなスペースに急にどうした?と、仲間の一人が話しかけると、先頭を走っていた友人が、暑いから川に入ろうと言うのです。

見ると白砂利の先は斜面になっており、下には川が流れていました。

川は山間で日陰になっており、大きな岩がありました。

皆暑かったのは同じなようで、さっそく斜面を降り始めました。

斜面を降りる途中、白砂利のスペースからは見えませんでしたが小さな畑がありました。

色とりどりの野菜が実っていて、畑の真ん中におじいさんが腰掛けていました。

クワかスキを肩に掛けていたような気がします。

私たちは川に入りたいので畑を横切らせて下さいと頭を下げると、おじいさんはとても穏やかな表情で頷いてくれました。

私たちも軽く一礼して畑を横切り、大きな岩の上で服を脱ぎ川へ飛び込みました。

川は冷たく、火照った体にはとても気持ちよかったです。

水を掛け合ったり潜ったり、とても綺麗な水だったので飲んだりもしたかもしれません。

もっと上流まで泳いでみようか、なんて話をしていた時、仲間の一人の様子がおかしい事に気付きました。

真っ青な顔をして震えているんです。

表情は強張り、ガタガタ震えながら寒い寒いと連呼していました。

確かに川の水は真夏でも冷たく、初めこそ身の引き締まる冷たさですが、友人の一人はまるで真冬の雪の中に裸でいるかのような震え方でした。

じゃあ上流探検はやめて、そろそろ上がろうとなり、陸地に向かおうとした時。

なぜか川に入らずにいた友人にせっかくだからと岩の上から写真を撮ってもらいました。

そして何事もなく帰路につきました。

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数日後、現像した写真ができたので見ていると、一枚の写真に目が止まりました。

あの時の川での写真です。

中央に写る震える友人と、1メートルほど左右に離れた私ともう一人。

よく見ると震える友人の後ろにもう一つシルエットが写っています。

重なって写っているようで、友人の体のラインからはみ出る体がはっきり写っており、足も写っていました。

パッと見ると、友人の足が三本あり、体がひと回り太ったように見えました。

その事を本人に伝えたのですが、足が消えてるなら怖いが、増えてるならムスコがデカくなるのかな?なんて言って、気にも留めない感じでした。

まぁ察しは付いているかと思いますが、それから数週間後、その友人は正丸で大事故を起こしてしまいました。

対向の四輪と正面衝突だったそうです。

今思えばあの日、旧道を出てから自分達以外の車やバイクを見なかったような気がします。

川に入っている時も、すぐ上は走り屋御用達の国道なのに、川のせせらぎ以外は無音だった気もします。

何かに引き寄せられたんですかね。

補足

すみません書き忘れていました。友人は首と体の右半身に複数の骨折を負いましたが、後遺症もなく今は元気です。

例の写真で、何かの体が重なって写っていたのも右半身でした。

自分達は埼玉に住んでいましたが、都心よりのエリアだったので、正丸は仲間が集まらないと行かないのですが、事故当日友人は一人で向かったようです。

なぜ誰も誘わず一人で行ったのか聞いたのですが、本人もなんとなく、ふと思い立った、と言うような曖昧な返答でした。

49 :名無しさん@おーぷん :2015/03/12(木)05:51:34 ID:KEZ

(了)

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