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先にかかってきた電話 rw+1,762

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電話が昔から苦手だ。

理由ははっきりしている。子供の頃、夜中に鳴った一本の電話で親戚の訃報を知らされた。それ以来、呼び出し音が鳴るたび、身体が先に嫌な予感を覚える。理屈じゃない。反射だ。

ある休日の午後、昼飯を済ませ、録画していた映画をソファでぼんやり眺めていた。少し意識が沈みかけたところで、電話が鳴った。胸の奥が一瞬、ひやりとする。仕方なく受話器を取った。

「はい、もしもし、カトウです」

自分でも分かるくらい、眠気混じりで素っ気ない声だった。時計を見ると午後二時二十五分。相手は男の声で、「近くまで来ているので、これから伺ってもいいですか」という。再配達を頼んでいた宅配便だと思い出し、「ええ、大丈夫です」と答えた。

電話を切った直後、玄関のベルが鳴った。

早すぎる。ここはマンションの七階だ。下から電話していたなら、どう考えても一分はかかる。それでも、考えすぎだと思い直す。霊感はない。死んだら終わりだとも思っている。ただ、オカルト話は嫌いじゃない。妙な落ち着きがあった。

ジーンズを引っかけ、インターホンに出ると、さっきの男の声で「宅配です」と言われた。念のため玄関脇のゴルフクラブの位置を目で確認し、覗き穴から外を見る。制服姿の配達員が立っていた。それ以上、気になる点はなかった。鍵を開け、短いやり取りをしてドアを閉めた。

ソファに戻り、映画の続きを見ようとして違和感に気づく。受話器が見当たらない。戻し忘れたのかと思い、玄関へ戻ると、靴箱の上で電話が鳴っていた。さっきと同じ呼び出し音だ。

嫌な汗がにじむ。受話器を取り、外線ボタンを押して耳に当てる。

「はい、もしもし、カトウです」

俺の声だった。

一瞬、意味が理解できなかった。電話の中から、さっき自分が話した会話が、そのまま流れてくる。「ええ、大丈夫です」「今家にいますんで、はい」。背後で流していた映画の音まで混ざっている。だが、電話越しの映画は、今見ている場面とは違うセリフだった。

背中がぞわりとした。

その瞬間、また玄関のベルが鳴った。モニターを見ると、電話で聞いていたのと同じ映画のシーンが、画面に映っている。インターホンに出ると、また同じ男の声で「宅配です」と言われた。

部屋を見渡す。さっき受け取ったはずの荷物は、どこにもない。

思考が追いつかないまま玄関を開け、もう一度、同じ荷物を受け取った。鍵を閉め、時計を見る。午後二時二十七分。

二分間。

何が起きたのか分からない。分かるのは、同じ時間を、同じ動作で、二度なぞった感覚だけだった。

ソファに戻り、受話器を置き、映画を巻き戻して時間を確認する。最初の電話からベルが鳴るまで、確かに二分少々。もう一度の一連も、ほぼ同じ長さだった。

段ボールを開けると、中には注文したスリッパが入っていた。一つだけだ。

最初に来たのは、本当に宅配だったのか。それとも、俺が聞いたのは、これから起きる会話だったのか。今でも答えは出ていない。

電話の呼び出し音だけが、今も少し怖いままだ。

(了)

[出典:573 :本当にあった怖い名無し:2014/01/30(木) 05:23:35.16 ID:4EiqMZNt0]

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