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女に生まれてよかった(親友の告白)【ゆっくり朗読】3900

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高校の卒業式に、友人の恒雄は同級生で親友だった政一に告白された。

恒雄はショックで混乱しつつも、政一を傷つけないよう丁寧にお断りしたそうだ。

しかし政一から「一度だけデートして欲しい」と懇願され、情もあって承諾したらしい。

で、実際デートしたんだが、(というか二人きりで映画を見て食事をしただけ)別れ際に、

「俺が女だったら、恒雄は俺とつき合ってくれたか?」

と聞かれた。

政一は県外に進学する予定だったし、恐らくもう一生会わないだろうという思いと、二人で楽しく過ごした学校生活を思い出したこともあって、急に寂しくなり、

「お前が女だったら、つき合うどころか結婚してたかも」と答えたらしい。

政一はそれを聞いて泣きながら、「ありがとう、ごめんな、さようなら」と言って去り、恒雄も涙が止まらず、政一の背中が小さくなって消えるまで見送った。

それから数年後

恒雄はバイト先で知り合った恵美子という女の子に告白され、つき合った。

恵美子はことあるごとに、「ああ、女に生まれてよかった」と言うクセがある子だった。

ある日、恵美子がやたらこのセリフを繰り返すので、いつもは聞き流す恒雄も「なんで?」と聞いた。

すると恵美子は、「だって私が男だったら、恒雄は私とつき合わなかったでしょ」と答えた。

その時、恒雄の頭に浮かんだのが政一の顔。

それまでは滅多に思い出すこともなかったのに、恵美子のこの言葉が、政一が別れ際に言った言葉と、まったく同じ話し方だったらしい。

しかもこの会話があった場所は、政一と別れた場所と同じ(地元の駅前)だった。

その時は偶然だなぁ、と思っただけらしいんだけど、それから恵美子の行動を注意して見ると、驚くほど政一とそっくりなことに気付いた。

笑い方、食事の仕方、本の読み方とかの仕草、好きな食べ物、好きな音楽や映画などの嗜好物も、実はまったく一緒だったらしい。

恒雄は「政一は性転換と整形をして恵美子になり、俺に近付いたのか?」なんてことも思ったが、恵美子の親(当然政一の親とは別人)にも会っていたし、恵美子の女子高時代の友人にも会っていたし、第一身長が全然違う。

政一は170cm越え、恵美子は150cmちょっととかなり小柄。

だから、ただの偶然だ。似てると思うからそう見えるだけだ。と自分に言い聞かせたらしい。

しかしある日のこと。

恵美子の家でで恒雄と恵美子が二人でテレビのロードショーを観ていた時。

恵美子が、「これ懐かしいね。最初のデートで観たよね」と言ってきた。

恒雄はぎょっとした。

その映画は政一とのデートで観たもので、恵美子とは観に行っていないからだ。

「この映画やったのって俺等知り合う前だよ。前彼と勘違いしてない?」と言うと、「嘘、一緒に見たよ」と言ってきかない。

それどころか、その日の恒雄の行動を細かく話す。

ホットドックのケチャップをこぼしたこととか、釣り銭間違えられて得したこととか……しかも、それは全て事実。

さすがに怖くなって、恒雄は適当な理由をつけて帰宅した。

それから恒雄は恵美子のことが怖くなり、好意もなくなってしまったので、別れを告げた。

別れ話は修羅場で、恵美子は泣くわ暴れるわ死のうとするわ、手がつけられなかったらしい。

結局恒雄はバイトを辞めて、一時は家族や友人一同にも音信不通となって県外へ逃亡。

連絡が取れるようになってからことの顛末を聞き、「男らしくないなぁ」と私が言うと、

「だって『結婚するって言ったじゃん!だからこの女になろうと思ったんじゃん!』

って恵美子が言ったんだよ。手首切った後に。絶対やべぇって思うじゃん」

と恒雄は答えた。

恒雄は映画デートの一件を恵美子に話していたから、最初話を聞いた時は、仕草や嗜好物の一致は偶然、映画云々の話は恒雄と恵美子の勘違いだと思ってたんだけど、「この女になろうと思った」という恵美子の言葉は怖いな、と。

ちなみに、恒雄は政一に告白されたことを、恵美子にもバイト仲間にも話していません。

今、恒雄は再び音信不通状態……

(了)

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