短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

娘の様子がおかしい【ゆっくり朗読】

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Rさんには、Mちゃんと言う幼稚園に通う一人娘がいます。

308 :227:2005/03/22(火) 21:40:54 ID:NX8fGAkqO
いつも元気なMちゃんなのですが、ある時から様子がおかしくなりました。
夕方になると体調を崩し、夕食を戻したり熱を出す有様。
しかもMちゃんは具合が悪い筈なのに、虚ろな表情で延々とおもちゃで遊んでいるのだそうです。
病院に行っても原因は不明。
気味悪く思ったRさんは友人のAさんに相談、霊感の強いAさんは異常事態に気付きRさんにKさんを紹介。
最初は戸惑ったRさんでしたが、ワラにもすがる思いでKさんに頼む事に。
KさんはAさんに連れられRさんの家にやってきました。

Kさんは早速様子を見る事にしました。
部屋に籠もっておもちゃで黙々と遊ぶMちゃんと二人切りになったKさんは、
Mちゃんにしがみつく小さな白い影を見たのだそうです。
それはMちゃんより幾分年上の女の子でした。
Kさんが話し掛けようとすると、女の子の霊は怯えてMちゃんの体の中に入ってしまいました。
途端にぐったりとするMちゃん。
無理矢理霊を剥がそうとすると、Mちゃんの体に悪影響を及ぼします。
まして霊とは言え相手は子供です。
Kさんは困ってしまいました。
考えた末に思いついたのは、Mちゃんのおもちゃ箱のぬいぐるみ。
ぬいぐるみを使って霊に話し掛け、何とかきっかけを作ろうとしたのです。

霊は完全にMちゃんに取り憑いています。
アンパンマンのぬいぐるみを使って、なるべく優しく女の子に話し掛けるKさん。
霊は怯えながらも、Mちゃんの口を使って話出す。
女の子の霊は自分を「Hちゃん」と名乗った。
「Hちゃんは幼稚園の年長さん」「Mちゃんが羨ましい」「ここはおもちゃがいっぱいある」
しかし、KさんがHちゃんに家に帰る様言うと、何故か激しく抵抗。
再びMちゃんの体に入り込んで、出てこなくなってしまいました。

Kさんは霊から聞き出した話を、RさんとAさんに伝えました。
Rさんは驚愕。
Mちゃんの通っている幼稚園の年長さんに、Hちゃんと言う女の子がいて、
その子はつい先日交通事故で亡くなっていたのです。
しかも、HちゃんはRさんとMちゃんがいつも行くスーパーの側で事故に遭い、
その場で即死したとの幼稚園の先生から話を聞いていました。
もちろんお葬式にも参列していたのです。

KさんはRさんからその話を聞きますます困惑。

Mちゃんに取り憑き悪影響を与えているのは幼い少女。しかも知っている子だったのです。
Mちゃんへのダメージ覚悟で無理にでも剥がすべきか?そうするとHちゃんは成仏出来ません。
でも放っておけば、死者に憑かれたMちゃんが体を壊す事は間違いない。
ですがRさんは、幼くして亡くなったHちゃんが可哀想でなりません。
Rさんは、何とかHちゃんを成仏させて欲しい、親御さんの元に帰してあげて欲しいとKさんに頼んだ。
Kさんも女の子の霊を傷つけたくはありません。
Kさんは、家に帰りたくないと言うHちゃんの霊を何とか説得すると決意。
明日再挑戦するする事にしたのです。
霊がいる事で淀んでしまったその場を清め、Kさんは帰りました。

次の日の夕方、おもちゃを持ってAさんと共にやって来たKさん。

Mちゃんに向かって優しく「Hちゃん、遊ぼう」「お話しよう」と語りかける。
最初は出てこなかったHちゃんですが、根気よく語りかけるKさんにようやく心を許したのか、
ぽつぽつとMちゃんの口を使い話すように。
何故お家に帰らないのかと問うKさんにHちゃんは、
「帰れないの」「ママが帰って来ちゃダメって言ったから」「F(恐らく妹)ちゃんがねんねしてるの」
と言ったそうです。
Kさんは必死で説得した。
「きっとママも会いたがってる」「Fちゃんも、もう起きてまってるよ」
「このおもちゃ持って行って、Fちゃんと遊んであげようよ」

約一時間の説得の後、ようやくHちゃんは頷いたそうです。
ですが、Hちゃんは家に帰ることは同意したものの、まだ恐いのかMちゃんにすがりついて離れません。
再び困り果てるKさん。
ヤケクソになったKさんは、Hちゃん憑きのMちゃんを連れてHちゃんの自宅に乗り込む事にしたのです。

Mちゃんを助けたい、そして家に帰れず迷うHちゃんも助けてあげたい。

そう思ったRさんはKさんに同意。
Mちゃんを抱っこし、Aさんの運転でHちゃんの家に向かいました。

Hちゃんの家に着くと、お線香をあげたいと言う名目で家に上がり込む。
やつれ果てたHちゃんの両親は驚いていましたが、お悔やみの言葉を述べたKさん一行に頭を下げる。
戸惑う母親にKさんは単刀直入に言った。
Hちゃんが家に帰れずMちゃんに取り憑いている事を。
当然、Hちゃんの父親は怒り狂い、Kさんの襟首を掴み帰れと怒鳴った。
Kさんは父親を無視して母親に言ったそうです。
「ママが帰ってきちゃダメって言ったからHちゃんは帰れない」
「Fちゃんがねんねするの邪魔したらダメだからお外にいるの」と。
Kさんの言葉を聞いた母親は、突然肩を震わせ狂った様に号泣し始めました。

父親もがっくりとうなだれKさんから手を離した。

詳しい経緯はこうでした。
生まれたばかりの妹Fちゃんが可愛くてしようがないHちゃんは、
幼稚園から帰ってくるとFちゃんについついチョッカイをかけてしまいます。
悪気が無くても、寝てる所を起こされるFちゃんは泣きだす。
出産の疲れ、家事・育児に追われ苛立っていた母親は、ついHちゃんをぶってしまい、激しく怒鳴ってしまいました。
「出ていきなさい」「Fちゃんが起きるまで帰ってくるな」と。
そして驚き家から飛び出したHちゃんは交通事故で亡くなり、
自分かどうなったかも分からないまま、家に帰れず淋しさからMちゃんにすがりついてしまったのでした。
話を聞いたRさんもAさんも、涙が止まらなくなってしまったそうです。

KさんはHちゃん(Mちゃん)に向かって、
「Hちゃん、お母さん帰って来ていいよって」と語り掛けました。
ぐったりとして眠っていたMちゃんは目を開けると、
Hちゃんの母親に向かって「ママ、Fちゃんと遊んでいい?」と言ったそうです。
母親は泣きながら頷きました。
その時、Kさんは無論、AさんもRさんも見たのです。
Mちゃんから離れ、Fちゃんの部屋に駆け出していくHちゃんの姿を。
事故から一月以上もたってから、ようやくHちゃんは自分の家に帰ってくる事が出来たのでした。

ちなみに、Hちゃんの父親に襟首を掴まれたKさん。後からひたすら頭を下げられたそう。
怪しい宗教団体だと思われてたみたいです。
そらそうだw

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