あなたは座ると死んでしまうという、呪いの椅子の存在をご存じだろうか。
そんなものあるはずがないと思うかもしれないが、ウィークリー・ワールド・ニュース誌(超自然現象や超常現象に関するフィクションに紙面の多くを割いていることを特徴としている週刊タブロイド紙)が、1989年に『今までに61人の死者を出した』と報じた。
この新聞は度々この椅子に関する記事を掲載しており、1990年、1992年、1995年にもそれぞれ新たな犠牲者が出たと報じている。
その椅子の名前は「バズビーズチェア」
「ザ・バズビー・ストゥープ・チェア」
「デッドマンズ・チェア」とも呼ばれている。
イギリスのノース・ヨークシャー州で1702年に絞首刑にされた、殺人者トーマス・バズビーが生前に愛用していた椅子である。
生前のバズビーは貨幣贋造者で大酒飲みだったといわれていて、村の美女であるエリザベス・オーティと結婚したが、彼女の父親であるダニエルは結婚に反対していた。
そしてある日バズビーが自宅に戻ると、義父のダニエルがバズビーのお気に入りの椅子に座っているのを見つける。
ダニエルは娘を家に連れ帰るためにここにいると告げたが、バズビーはこれを拒否し、ダニエルを絞め殺してしまった。
バズビーはこの殺人により絞首刑となり、その生涯を終えた。
バズビーの死後、この椅子は妻が家財道具を処分した一環で「バズビー・ストゥープ・イン(2012年に閉鎖)」というパブに置かれることになった。
ちなみにこのパブの名前は、処刑されたバズビーからつけられたものだという。
パブに置かれた椅子は、それが元殺人犯のものであること、持ち主が絞首刑になったことなどから呪いがかけられていると噂になり、酔った勢いで座る者が後を絶たなかった。
しかし信じられないことに、この椅子の呪いは本当だった。
第二次世界対戦中、パブで酒を飲んでふざけて椅子に座った兵士たちは、全員戦死した。
その後も噂が噂を呼び、ますます有名になったこのイスはパブで酒を飲んで気が大きくなった若者たちが度胸試しをするのに格好のネタとなった。
24歳のある空軍パイロットは、仲間たちと酒を飲んでいた時に「俺はそんな呪いなんて信じないよ。」と言い出し、椅子に座ってみせた。
そしてその数時間後、彼は交通事故に遭って亡くなってしまう。
とある建築作業員は仲間が止めるのもきかず「バズビーズチェア」に座り、その翌日屋根から足を滑らせて地上に転落。首の骨を折って命を落とした。
その後もパブに置かれ続けた椅子には面白がって座る者が続き、1972年までに61人が座り、病気や事故などの原因で極めて短期間で死亡した。
バズビーズチェアは、現在では地元のサースク博物館の「The Cottage Kitchen(コテージのキッチン)に展示され、二度と誰も座ることがないよう天井から吊り下げられている。
追記
ウィークリー・ワールド・ニュースが1989年の記事で61人という具体的な数字をどうやって知り得たのかは謎である。
そもそもウィークリー・ワールド・ニュースの記事はサンチアゴ航空513便事件に知られるようにデタラメである可能性が高い。ただし、513便はデタラメだったが、椅子そのものは実在し観光名物となっている。