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短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚 n+2026

降霊陣 nc+

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これから書くことは、かつて出版社に勤めていた父が、ある人物から預かっていた体験談である。

事情があって長く表に出なかったが、書いた本人は「自分のような軽率な人間が一人でも減るなら、それでいい」と言っていたそうだ。

一九七九年八月十四日。私は二十一歳だった。若さと好奇心に余裕で頭を支配されていた頃だ。五月の連休に、中学時代からの友人である井上、村山、井出と、UFOが出ると噂される山に登ったが、成果はなかった。今度こそ何か掴もうという空気のまま、夏休みに再挑戦することになった。

万一、UFOが出なかった場合の保険だと誰かが言い出し、当時流行っていた降霊陣を腕に描くことになった。私は左腕の付け根、BCGの痕のあたりに、それを描いた。理由は覚えていない。ただ、軽い遊びの延長だった。

夜八時に実家近くで集合し、私の車で南へ二時間ほど走った。目的地は、アルバイト先の先輩から聞いた、とある山村だった。そこは母方の祖母の村の隣だが、標高は一キロ近く高く、当時は登る道が二本しかなかった。そのうち一本は祖母の家の前を通る細道で、ほとんど使われていなかった。

私たちはその祖母の家に立ち寄った。祖母はすでに亡くなり、祖父も引き取られていて、家は空き家だった。鍵は簡単な心張り棒だけで、針金で外せた。車は道端に停め、誰も通らないだろうと高を括って、缶ビールを飲み始めた。

家は前後を山に挟まれており、道の向こうには汲み取り式の便所と五右衛門風呂があった。その隣には墓地がある。街灯はなく、曇り空で星も見えなかった。

一缶飲み終えた頃、村山が用を足しに外へ出た。直後、血相を変えて飛び込んできて、扉を叩きつけ、心張り棒までかけた。「電柱のところに、人がおった」。光っていて、輪郭が曖昧で、目が合ったという。誰も確かめに行けなかった。

明るくなるまでここにいようと決めた。酒が進むと、緊張は一時的に緩んだ。しかし午前二時過ぎ、山側の部屋の窓が、一定の間隔で叩かれ始めた。谷があるため、人が立てる位置ではない。虫だと言い聞かせたが、音は止まらず、次第に唸り声のようなものが混じった。

「なんで、はなしたんや」

その言葉だけが、やけにはっきり聞こえた。

そのとき、腕の降霊陣を思い出し、慌てて台所で洗い流した。しかし、音は激しくなる一方だった。耐えきれず、逃げることにした。

車で山道を登る途中、見覚えのない開けた場所に出た。草が伸び、袋小路のようになっている。祖母から聞いた、戦時中のヘリポート跡だと気づいたとき、車が後ろへ引かれ始めた。ギアが入らない。私たちは飛び降りた。

車は谷へ落ちた。

井上の声がした。崖際で草にしがみついている。引き上げようとしたが、彼は泣きながら言った。「足、引っぱられとる」。その瞬間、耳元で、あの声がした。「なんでやぁ」。

恐怖より、妙な怒りが勝った。離したら終わる、そう思った。腕に激痛が走り、血が出たが、構わず引き上げた。村山と井出が駆けつけ、塩を振りかけた。叫び声がして、井上の体が軽くなった。

夜明けだった。

私たちは何も言わず、山を下り、バスで帰った。後日、陰陽師に聞いたところ、降霊陣は月の状態によっては、戻れないものを呼ぶという。

あれから、私は遊びでそういう場所に行かない。今でも、左腕の傷が疼くことがある。あれが誰だったのか、考えないようにしている。

[出典:579 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/30 08:45]

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