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短編 r+ 都市伝説

的場浩司のテンシンキアクリョウキョウ/聞いちゃいけない歴史的都市伝説 r+4482

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これは、テレビ番組『やりすぎ都市伝説』で紹介されたエピソードをもとにした話だ。奇妙な伝承の数々が語られる中でも、この話は特に不気味で、人々の記憶に焼き付いているらしい。

第二次世界大戦中のある日、疲れ果てた兵士がひとり、荒廃した街を歩いていた。空腹に耐えかね、手元には貴重な食糧である一つのオレンジがあった。それは、ようやく見つけた命の糧だった。しかし、街角で彼は妊婦と出会う。顔色の悪いその女は、やつれた声で「そのオレンジを分けてください」と懇願した。彼女の膨らんだ腹に目をやると、そこで命が育まれているのだと思い、兵士は自分の空腹を抑え、オレンジを差し出した。

だが、それが地獄の始まりだった。

戦況がさらに悪化し、兵士の所属する部隊も飢えに苦しむようになった。次第に兵士の心には後悔が芽生え、与えたオレンジのことばかりが頭をよぎる。自分が死ぬかもしれないこの状況で、あの親切は正しかったのだろうか。そんな時、再びあの妊婦に出会う。彼女の手には、あのオレンジがしっかりと握られていた。

「そのオレンジを分けてくれないか?」
兵士は、抑えた声でそう頼んだ。しかし、妊婦は冷たく首を振り、「これは私のものよ」と言い放った。その瞬間、兵士の胸の中で何かが壊れる音がした。極限状態の中で、感情が暴発する。手にした銃が振り上げられ――次の瞬間、妊婦は倒れていた。

戦後、兵士はその記憶を抱えながら生き続けた。しかし、夜ごと耳元で響く「コン、コン、コン」という奇妙なノック音に悩まされるようになった。最初は風の音だと思っていたが、次第にそれが決まって三回続く音であることに気づいた。どうしても眠れず、不気味な気配に押しつぶされそうになりながらも、彼は声を上げることだけはしなかった。なぜなら、同僚たちが同じノック音を聞いた際に、驚いて声を上げた途端、次々と不可解な死を遂げていったからだ。

この話を聞いた人は誰もが、その「コン、コン、コン」という音を耳にするという。音の発生するタイミングは予測できないが、一つだけ確実なのは、それに反応して驚きの声を上げたり、不用意にドアを開けたりしてはいけないということだ。もしその禁忌を破ると、どんな恐ろしいことが起こるのか――それを知る者はいない。

ただ、この話には奇妙な回避法が伝えられている。それは、音を聞いたときに「テンシンキアクリョウキョウ」という呪文を三度唱えることだという。これを実践すれば、何事もなく朝を迎えられるとされている。

ある友人が、この話を泊まったホテルで聞かされたという。そして話の直後、本当にノック音が鳴り響いた。部屋の薄暗い空間に、低い音が三度響く。「コン、コン、コン」。友人は青ざめた表情で声を上げようとしたが、咄嗟にこの呪文を思い出し、震える声で「テンシンキアクリョウキョウ…」と唱え始めた。

三度目を唱え終えた瞬間、ノック音はピタリと止んだ。しかし、彼がその夜どんな夢を見たのかは誰にも語られることはなかった。翌朝、彼の顔は異様に痩せこけ、目の下には深い隈が刻まれていた。部屋を出る際、ふと窓際を見ると――そこには、微かに指の跡のようなものがついていたという。

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