中編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

飼育されていた記憶【ゆっくり朗読】3200

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私は数年前まで、ある一家に、まさに飼われていた状態だったと思うのです。

513 :本当にあった怖い名無し:2015/01/24(土) 22:07:18.40 ID:9+fFTbph0.net

私は現在都心から離れた関東地方に一人で暮らしていますが、数年前まで今思うと不思議な生活をしていました。

元々の私は普通の家庭で普通に育ち、ごくごく一般的な人生だったはずなのです。

顔立ちや背格好も、可もなく不可もなく、頭の出来も平凡な人間でした。

今の生活に戻ってから実家を確認したり、同窓会に参加したりしてみましたが、やはり私は私の記憶通りの普通の人間だったので、私の気が違ってしまったということもなさそうです。

精神科などの病院にはまだ行っていませんが、恐らく「妄想」として片付けられてしまうことが目に見えているので、今も病院は考えていません。

もし同じような経験がある方がいらっしゃったら話を聞きたいと思い、書きます。

これが書いてはいけないことなのか、誰かに言ってはいけないことなのか、今の私には判断もつかないのですが、なんとなく大丈夫な気がします。

特に犯罪に巻き込まれたというわけでも、私が「被害にあった」とも思っていないからです。

前置きが長くなってしまいましたが、一つ一つを思い出しながらていねいに書いていきたいと思います。

私は関東の大学を出たあと、同じく関東の会社に内定をもらい、一人暮らしの部屋も確保してあとは四月を待つだけ、という形で三月に大学を卒業しました。

大学を卒業し、卒業式の何日か後に用意していた部屋に移り住み、実家から持って来た電気カーペットの上で寝転びながら、新しい家具を携帯でネットサーフィンしながら探していました。(当時は携帯とスマホの割合は半々でした)

そこまでが、私が覚えているかつての生活の私の最後の記憶です。

本当に説明の仕方がわからないのですが、そこから先は「気がついたら」としか言いようがありません。

物心が着く頃からという感じで、気がついたらある一家と一緒に暮らしていました。

それは今思うと、ただの居候などではなく、明らかに「ペット」としての扱いでした。

しかし当時の私はそれを不満に思うことはなく、まるでこれが私のあるべき姿であるかのように受け入れ、満足した日々を過ごしていました。

その一家は若い父と母(お互い三十代前半くらい)と、小学校中学年くらいのお嬢さんの三人でした。

私は実名でなく、明らかにペットにつける名前で呼ばれていました。

犬っぽい名前。ポチ、とかゴン、といったそういう名前でした。

かと言って、裸にさせられていたわけではなく、私だけが着るユニホームのような扱いでスウェット生地の服がありました。

それは毎日同じ色ではなく、時に茶色だったり時にベージュだったりと、地味な色ではあったものの、汚らしいものではなく、いい匂いのする清潔感のある服でした。

しかし首には当然の様に首輪がはめられていました。確か青だった気がします。

本当に犬用の、ホームセンターのペットコーナーに売っているようなやつです。

また、私は毎日お嬢さんからご飯をもらっていました。

それは自分の手で食器を使って食べるという形ではなく、お嬢さんの手から私の口に運んでくれるというものでした。

食べ物はパンやおにぎりが主でしたが、私はそれに不満など感じず、毎日お腹いっぱい食べていたように思います。

しかし飲み物は水だけで、これは大きなペットボトルを逆さにしてストローをつけたものでした。

ウサギやハムスターなどの小動物のゲージで良く見るやつと同じ仕組みだと思います。

お風呂は毎日ではありませんが、定期的に入れてもらっていました。

毎日お嬢さんが私の髪をブラッシングしてくれていたおかげか、自分の体臭が気になったことはありません。

というよりも、その当時の私にはお風呂という概念がなかったようにも思えます。

髪と書きましたが、当時の私の容姿は間違いなく人型でした。

お嬢さんと一緒に遊んでいた時も、ふと鏡を見た時も私は二足歩行でしたし、見た目も間違いなく人間でした。お嬢さんとあやとりをしたことも覚えています。

あの一家と暮らしていた家は和室もありましたが洋室がほとんどで、少し手狭な様な気もしますが普通のどこにでもある一軒家といった感じでした。

庭は庭と呼べるほどの大きさではありませんでしたが、お母さんプランターでガーデニングをしていて、お嬢さんはプチトマトがなるのを楽しみにしていました。

私は普通に日本語を話しており、お嬢さんはいつも私に話しかけてくれました。(一家は全員現代の日本人という感じでした)

私はお嬢さんの話をうんうんと聞くだけでしたが、何か問いかけを受けた時だけ言葉で返事をしていました。

例えばその日お嬢さんが着る服について「赤がいい?青がいい?」と聞かれると「赤がいい」などいうふうに。

時間という概念にも疎く、お嬢さんに起こされて起き、ご飯を食べ、お嬢さんが学校へ行き、お父さんが仕事に出かけ、お母さんが仕事部屋に入ると私は与えられた寝床に寝転がる。

うとうとしながら気がついたら寝て、また帰ってきたお嬢さんに起こされるといった、はっきり言ってなんの役にも立たない存在として生活していました。

お母さんは何か家で作業する仕事をしていたのだと思います。

たまに疲れたように首を回しながらコーヒーを入れに部屋から出てきました。

たまに私が「お疲れ様です」と言うと優しく笑って頭をなでてくれました。

私の世話はほとんどお嬢さんがしてくれていて、お父さんやお母さんとはあまり話した覚えはありません。

とくにお父さんとはあいさつ以外の会話をしたことがないように思います。

そうして私はその生活を「満喫」していました。

お嬢さんや一家の顔や声はまだちゃんと覚えており、会えば絶対にわかります。

お嬢さんの名前もわかるのですが、さすがにここで書くのはやめておきます。

お父さんとお母さんの名前はわかりません。

名字も正直あいまいで、多分これじゃないか……というくらいです。

そしてここまで書いておいて本当に申し訳ないのですが、話はこれで終わりなのです。

この「ペット」としての生活をどのくらい過ごしたのか、いつ、どうやって抜け出したのか。何も覚えていないのです。

生活の終わりは突然でした。

その家でいつものように寝床で寝ていて、庭に出ていたお嬢さんがリビングに入ってくる気配がしました。

私の寝床はリビングにあり、深緑のカーペットの上が私のスペース。という感じでした。

そこに無印良品の、人をダメにするクッションソファーがあり、それが私の寝床でした。

そして、私のペットとしての名前を呼ばれ、返事をしようと振り向いた時、次の瞬間には私は今の私に戻っていました。

これが、私が覚えている最後の状態(一人暮らしの部屋で携帯をいじっていた状態)のままなら「長い夢だった」で終わるのでしょうが、私が今の私として気がついたのは、交差点の信号待ちの状態だったのです。

瞬きもした覚えはありません。

寝転がった状態から肩越しにお嬢さんを視界に入れようと、頭だけ後ろに動かした瞬間に、私は都心の交差点に立っていたのです。

そこは大通りというわけでもありませんでしたが、何度か通ったことのある横断歩道でした。

全くわけがわからないまま、歩行者信号は青になり、周りの人の動きに合わせるように自然に足が動きました。

とりあえず信号を渡り終わったあと、その場で止まって周りを見回していたらベビーカーを押す女性に「通ります」と言われて、歩道の真ん中にいたことに気づいて道を譲り、それをきっかけに妙に冷静になりました。

幸い知っている道だったので、最寄りの駅まで歩きながら持ち物を確認しました。

その時の持ち物と服装は、いつものリュックにいつもの「ちょっとそこまで」程度の服装でした。

リュックの中には飲みかけのペットボトルのお茶と、数千円入った財布と、ポータブルの充電機器。それとなぜか買った覚えのない新品のイヤフォン。

携帯電話は上着のポケットに入っており、日付を確認すると大学を卒業して二週間弱ほどたった平日でした。時間は夕方の四時過ぎ。

そこからは、なにがなんだかわからないまままっすぐ一人暮らしの家に帰りました。

その日はお風呂にも入らず着替えもせず、カーペットの上で上着を着たまま寝てしまいました。

次の日、実家や友達に電話をしましたがどう説明すればいいかもわからず、悩んだ末に

「ここ二、三日の間に私と連絡を取ったという人はいないか」

と聞いてしまい、両親にも友達にもいぶかしがられてお終いでした。

その後は予定通りに入社し、なんの変哲もない毎日を過ごしています。

未だにあれが夢であったとも現実であったとも判断がつきません。

夢だとしたら長すぎるしリアル過ぎたし、交差点にいたことを考えると夢遊病など他の心配も出てきます。

かと言って、現実だとしたら異常過ぎますし、なにより時間軸がおかしい。

いくら時間に縛られない生活をしていたとはいえ、あれは間違いなく二、三日という短い期間ではありませんでした。

最低でも一ヶ月……ヘタしたら半年近い期間だったように思います。

当方女です。

明日は休みなので、もし何かあれば質問にお答えします。

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533:本当にあった怖い名無し:2015/01/25(日)00:57:55.26ID:8m6SsKWzf
就職はどうなったの?

536:本当にあった怖い名無し:2015/01/25(日)01:14:36.39ID:8+R8hUkM0.net
大学の卒業式が三月の初旬で、交差点で気がついた日はその二週間弱後の三月の末近くでした。ちょうど入社式の前だったので仕事はセーフでした。

その期間はバイトもしておらず貯金で生活していて、人生最後の自由時間と思って、なんの予定もいれていませんでした。

その部分に関しては自分も出来過ぎていると思い、ここを考えると本当に妄想なのかと思ってしまいます。

そうなると、こんなにもリアルな妄想してしまう自分が本気で心配でたまりません…

535:本当にあった怖い名無:2015/01/25(日)01:06:11.67ID:JvnpBrsh0.net
その空白の二、三日の足取りは分かったのですか?会社は無断欠勤って事になっていたのですかね?

そのペットになっていた期間のもっと深い部分の話を聞きたいですね。

538:本当にあった怖い名無し:2015/01/25(日)01:25:20.33ID:8+R8hUkM0.net
ちなみに、ペット期間の足取りは結局つかめていません。

というよりも、私の記憶が間違っていなければ実際に記憶が飛んでいるのは十日間前後だと思います。

日記をつけたりという習慣がないのであいまいですが、恐らく記憶が途絶えたのはこの日だろうという日は覚えています。

ペット期間の思い出は妙に温かい思い出ばかりです。

お嬢さんが私に寄り添って眠ってしまい、お母さんに「自分の部屋で寝なさい」と叱られていたり。

お父さんがニュースを観ている隣で「どういう意味?」などとわからない文言を聞いてくるお嬢さんに説明したり。

お母さんが庭のプランターに水をやっていると虹が出ていて、それをお嬢さんに教えてあげたり。基本的にはお嬢さんが中心でした。

自分のことをペットとして割り切るなら、とても大切にしてもらえていたと思います。ちなみに、トイレは私専用のトイレがありました。和式でした。

539:本当にあった怖い名無し:2015/01/25(日)01:36:40.70ID:j5q34K0A0.net
それ現実じゃないだろどうみても。妙にリアルな夢遊病体験みたいなもんだろ。

気づいたら交差点ってのも、単なる寝ながら見る夢でなく、意識がぶっ飛びながら、元の体のほうもちゃんと動いてたってことだ。

特殊体験であることは間違いないが、なんでそれを現実だと思い込んでるのか……100%その家族?お嬢さんとか両親とか、はあんたが2chに書きこんでるこの世界にいないよ。

まあ、この世界自体が夢みたいなもんかもしれないけど。

542:本当にあった怖い名無し:2015/01/25(日)01:45:04.30ID:8+R8hUkM0.net
そうですよね。その通りだと思います。現実なわけがないんです。

でもその「こんなわけわからん体験ありえない」と思うのと同時に「あんなリアルな体験が夢だなんてありえない」と思う自分もいるのです。

お嬢さんは本当にいい子で、あの子がこの世には本当はいないんだと思うと少し悲しくなったりもします。

あの家での生活がよほど心地よかったのか、たまに夢で(普通に夜見る夢)で見ることもあります。起きてから「良かった、普通の夢だった」と思うのと同時に少しだけガッカリします。

もう会えないのかと思うと切ないような悲しいような……

現実の友達に話したりしたら確実に気味悪がられると思います。私自身も明確な自覚がないだけで、少し頭がおかしくなってしまったのかと思ってます。

537:本当にあった怖い名無し:2015/01/25(日)01:23:01.37ID:c6q0P78D0.net
オカ板でよく聞く、別次元(パラレルワールド)の自分に同調し、意識のみ「あちら側」へ行ってしまったのではないですかね?

自分の場合はあなたとは違いますが、夢と認識しているわけではないのですが、寝ている間だけ「あちら側」に繋がって、途中で起きても「続き続き……」と無意識に口ずさみ、「あちら側」へ行く事があります。

まぁ、ただの明晰夢で済ませられるんですけどね。

ただ、あなたの場合は「あちら側」に行っている間も、「こちら側」のあなたは活動していた事が、他の話と違う所なので気になる次第です。

540:本当にあった怖い名無し:2015/01/25(日)01:37:14.16ID:8+R8hUkM0.net
パラレルワールドですか。なるほど……

正直、私は今までこの体験以外は本当に平凡で、心霊現象の一つにもあったことがありませんでした。

小中学生の時にこっくりさんなど試してみたこともありますが、十円玉はピクリとも反応しませんでした。笑

なので、そういったファンタジックなことは全く信じていなかったのですが、そう言われてみたらそうなのかも……と思えてきます。パラレルワールドについても、調べてみます。

記憶のない約十日間の私についてなのですが、私は少なくとも部屋には戻っていなかったのではないかと思います。というのも、部屋に置いてあった花が枯れていたからです。

卒業祝いに後輩からもらった花だったので、ちゃんと世話をして長持ちさせようと決めていましたし、私の母の仕事が花屋ということもあり、花の扱いには慣れています。

あの花の種類を考えてもきちんと世話をしていたとしたら十日程度で枯らすことはまずありません。

ということは、部屋に戻っていなかったか、もしくは花の世話をしない別の私があの部屋を出入りしていたことになるかと思います。

……なんだか怖いですね。もう数年前の話ですが。

541:本当にあった怖い名無し:2015/01/25(日)01:43:04.74ID:j5q34K0A0.net
>私は現在都心から離れた関東地方に一人で暮らしていますが、数年前まで今思うと不思議な生活をしていました。
>私の記憶が間違っていなければ、実際に記憶が飛んでいるのは十日間前後だと思います。

についてだけど、たった十日間の生活を、「数年前まで今思うと不思議な生活をしていした」と書くかねえ?その生活はもっと長かったけど、戻ってみたら十日間程度だったってこと?

あと、今は何してはるん?その内定もらってた関東の会社で働いてるん?

543:本当にあった怖い名無し:2015/01/25(日)01:51:56.12ID:8+R8hUkM0.net
そうですね、私の体感時間としては絶対に十日間程度ではないんです。最低でも一ヶ月以上。

四季の移り変わりがあったかどうかが明確に覚えていないので、恐らく一年はたってないくらい、長くても半年程だと思います。

確かに書き方が中途半端ですね。下書きするべきでした。すみません。

一応内定をもらった会社に就職したのですが、お恥ずかしながら一年で転職し、今は違う会社にいます。住まいは変わらず関東です。

544:本当にあった怖い名無し:2015/01/25(日)01:52:02.37ID:c6q0P78D0.net
そうだ!匂いはどうでしたか!?
匂いはありませんでしたか!?
そのお嬢さんの匂いを思い出して下さい!

自分は明晰夢?ですが、必ず共通する事があったのは、「匂い」でした。多分鮮明に匂いをイメージする事が出来ると思います。

547:本当にあった怖い名無し:2015/01/25(日)02:01:00.44ID:8+R8hUkM0.net
お嬢さんの匂い、というよりも家の匂いなら覚えています。多分なんですけど、現在の日本で市販されている柔軟剤の匂いでした。

最初に入社した会社の先輩の匂いがとてもいい匂いで、どこかで嗅いだことある匂いだ……と考えていたら「あの家の匂いだ!!」と思い、なんの香りか聞いたので間違いないと思います。

私に与えられていたスウェット生地の服もその匂いでした。

お嬢さんはその匂い+シャンプーの匂いでした。シャンプーの銘柄まではわかりませんが、たまに電車で「あ」と思う時があります。

さすがに知らない人に聞く度胸はないので銘柄はいまだわからずにいます。

(了)

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