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短編 山にまつわる怖い話 n+

土まみれの男 #1262n

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これは、登山が趣味の叔父が懇意にしている土産物屋の主人から聞いた話だ。

259 :1/3:2022/04/20(水) 22:26:54.45 ID:6IYzsthN0.net

その主人は登山口でおにぎりなどを売っており、夜明け前から店を開けるのが常だった。

ある日、店の前で登山客の団体が夜明けを待っていた時、彼らが突然ざわつき始めた。
主人も何事かと思い店前に出てみると、皆の視線の先に土まみれの男が山から下りてきていた。
異常なのは、その男が誰かを背負っていたことだった。

その場にいた誰もが言葉を失い、動けずにいたが、男は店の前まで来ると力尽きて倒れてしまった。
ようやく正気に戻った人々は、救急車を呼び、二人を介抱した。

背負われていた男は気絶していただけだったが、背負っていた男は全身を骨折していて、すでに腐敗臭が漂うほどに死後時間が経っていた。

「事故で亡くなった友人を置いていくのが忍びなくて、背負って下りてきたんだろう」と皆は言い合った。子供や軽い女性を背負うことすら大変なのに、同体格の男性を背負って山道を歩くことの困難さは登山経験者ならよく理解できた。彼の勇気と決意に畏敬の念を抱かずにはいられなかった。

救急車が到着し、応急処置が施されると、男は意識を取り戻し、
「友人が縄場で落ちて谷に落ちました。助けに行ってください」と言った。
もう一人いるということで、登山客や青年団から有志が集まり、すぐに救助に向かった。
叔父の懇意にしていた店主も店を任せて参加した。

彼らは一か所しかない縄場に到着し、熟練者が下りていったが、転落したはずの場所には誰も見つからなかった。落下の距離を考えると無事なはずはなく、そのまま山中を彷徨っているかもしれないと皆は恐怖に駆られた。日暮れを迎え、捜索は一旦打ち切られた。

翌日、病院で男からより詳しい話を聞くと、彼は全身疲労で動けなかったが、頭ははっきりしていた。

彼の話によると、前日の午後三時頃、友人が縄場から転落し、谷底に向かって何度も名前を呼んだが返事はなかった。どうにか下りられる場所を探していたが見つからず、薄暗くなってきたので応援を呼びに麓に下りることにしたという。しかし、歩いても歩いても進んでいる感じがなく、同じ場所をぐるぐる回っているような感覚に陥ったそうだ。

青年隊の一人が、「縄場から麓まで何事もなければ1時間ほどで着くはずだ。どうして半日もかかったのか?」と疑問を呈したが、男も「そうなんです。月が出ていたので真っ暗というわけでもなかった。それなのに歩いても歩いても進まない」と声を荒げた。疲れがピークに達し、意識が途切れかけながらも必死に歩き続け、ようやく麓に着いたのだという。

その必死な表情に疑う者はおらず、青年隊の一人も自分の疑念を恥じた。
しかし、最後に確認された事実が場を混乱に陥れた。

「あなたは3人で登山していて、あなた以外の2人が滑落した。1人は死に、もう1人は見つからなかった。あなたはその1人を担いで山を下りた。もう1人はまだ見つかっていないのか?」

と問われた男は、不思議そうに答えた。

「いや、僕と友人の二人で登山していました。」

場は騒然とし、男が背負っていたのは一体誰なのかという疑問が浮かんだ。
病院の霊安室に連れて行き、運ばれていた遺体に対面させると、男は涙を浮かべて「見つけてくれたんですね。ありがとうございます、ありがとうございます」と言った。

多分、友人が置いて行かれるのが嫌で彼に取り憑いていたのだろうと、皆はぞっとして背筋が凍る思いだった。

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