短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

半身サラリーマン【ゆっくり朗読】

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客観的には微妙な話だろうけど書いてみる。

670 :本当にあった怖い名無し:2023/06/25(日) 18:10:22.16 ID:CihwVNlL0.net

先に言っとくとすっきりするようなオチはない。

自分の母方の家系が代々長女には霊感が宿るみたいな家系。
起源とか理由は一切わからないし、祖母や母の話を聞いてると年々薄まってるような印象で大層な力がある感じでもない。
自分なんか正直何も見えない、たまに奇妙な事がある?くらいで。

前置き長くなったけど、10年くらい前にある会社で事務員やってた。
確かに建物はそう新しくもなかったな。でも曰くなんか聞いた事もないようなごく普通の会社。もちろん自分も何事もなく働いてた。

働き始めて1年くらいかな、ある時書類整理の為に棚の中のファイル引っ張り出すみたいな作業してる時に違和感があって何となく振り返ったんだ。
いつもの事務室で働いている人が沢山いる中、壁の中に半身めり込んだサラリーマン風?の男がこっちをじっと見てるっていう異様な光景が目に入った。

しかも半身ってのがなんていうか、上半身と下半身じゃなくて所謂人体模型みたいな半分なのよ。
情報が処理出来なくて多分3秒くらい見つめあったけど、一緒に作業してた人に声を掛けられて我に返ってごたごたやってる内に気付いたら半身サラリーマンは消えていた。
結局疲れておかしなものを見たのだと処理したけど、次は半年後くらい。

またしても仕事中に違和感を感じて振り返ったら、そこにはまたそいつがいた。
しかも今度は上半身だけが壁から生えてるみたいにそこにあって、だらんと首や腕が垂れ下がっていた。
うわっと思ったタイミングで会社の電話が鳴り、またしてもそのごたごたの最中そいつは消えていた。

そんでそっから更に一年位だったかな。

その日は地下に保管用の資料を置くためにいくつかのファイルを手に持って事務所の扉を開けた。
その瞬間、目の前が突き当たりの短い廊下の向こうからそいつが文字通り鬼の形相でこっちにブワッて突っ込んで来た。
咄嗟に目を閉じたけど完全にぶつかる勢いで来たはずのそいつが体に当たる事は当然なく、ファイルがすごい音立てて落ちたもんだから人も集まって来て有耶無耶になった。
そしてそれ以降、その会社を辞めるまでそいつは二度と現れなかった。

何で最後に人を脅かしたんだろうなーとか思っていたけど、ついこの前、友人に何気なくこの話をしたら「それ、見えなくなったのはアンタに取り憑いてるからとかじゃないの?」って言われて何故か納得してしまう自分がいる。
それと同時に、もし見えたなら鏡越しとかにでもあのめちゃくちゃ怖い顔でこっち睨んでたりすんのかなって思って。
さらっと書きはしたけど、あの日廊下の向こうから突っ込んで来たあの顔は本当に怖かったんだよ。

実害なんかは実感してないからお祓いも今の所は考えてないけれど、頼むから霊感がある日突然出たりしませんようにってひっそり願ってる、自分的には洒落にならない話。

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