マサルってダチがいた
705： 本当にあった怖い名無し：2010/06/27(日) 12:59:29 ID:dSWMMDU50
小学校の頃はよく遊んでた
良いやつだった
何歳の頃だったかもおぼえてないけど
誕生日会に呼ばれた
リビングにとおされると部屋の中が暗かった
マサルがなきそうな顔だった気がする
マサルのお母さんがでてきてカーテンを開けた
すると一部だけぬれた布団がベランダで干されていた
マサルは母親の袖をひいて泣き喚いていたが
当の母親はにたにたと笑っていた
マサルがおねしょをするたびにどれだけ大変か
その誕生日会はマサルの母親の自慢話大会となった
その翌日からマサルはオネションというあだ名をつけられた
またある時遊びにいくと
マサルの母親が突然部屋にどなりこんできた
その手には、殆ど○がついた答案用紙がある
俺なんて半分は×だったからどなられるくらいはなれっこだが
マサルは俺の目の前で往復ビンタをされた
マサルの母親はやはりにたにたと笑っていた
「ケンイチ君はこんなささいな間違いしないわよね」
俺は首を横にふった
丁度その日に小テストがあったので
その答案用紙の惨憺たる有様を見せた
「おかあさんはどういう教育をなさってるのかしら」
勝ち誇ったような笑みだった
マサルはよく体育を休んだ
喘息の俺が最後尾を走ってる姿すら
うらやましそうに見ていたところをよく見かけた
マサルは頭が良いやつだった
良い点をとるとにっこり笑っていたが
だんだんそれもなくなってきた
誰かへのあてつけのように
白紙の答案用紙を提出して
校長室に呼び出されることも増えてきた
中学二年くらいになると
マサルにとって友達といえるんは俺だけになった
マサルは夏場でもよく長袖を着ていた
俺はマサルに何がおこってるか気付いていた
校長室に度々足を運んで
マサルを助けてくれと教師達に懇願した
ある日マサルの母親が学校にどなりこんできた
俺のクラスまでやってくるといきなり首をしめられた
嘘つきと連呼されながら気が遠くなっていった
問題にはならなかった
その日を境にマサルは俺にも声をかけなくなった
俺からは挨拶をしていたのだが返事もしなくなった
学校にはマサルの母親がたびたびくるようになった
俺は途中まではがんばって戦った
だがマサル自身が虐待がないと証言した
俺こそが嘘つきであるといったのだ
マサルが起こした事件がテレビをにぎわせたころ
テレビの中でマサルの母親がこう答えていた
「しかるべき罰をうけるべき」
俺はその場で気を失うほど怒り狂った
迷わずテレビ局に電話をかけて
マサルの弁護士の連絡先を教えてもらい
俺はマサル側の証人として立つことを決めた
現役を退いた昔の校長先生などもきていた
マサルの父親すらマサルのために証言台にたった
マサルへ加えられていた虐待の内容が
法廷ですべて明らかになっていった
唯一無二といえる友達とも絶縁せざるをえなくなった
マサルの悲しいこども時代が皮肉にもマサルを救った
恒常的な性的暴行
公衆の面前で我が子を辱めることも多々
常に完全であることを要求し
できないと暴行を加えることも多々
マサルの住まう家は地上にあらわれた地獄だった
それをおこなっていた悪魔は
一体何をかんがえていたんだろう
マサルの母親の罪状は明らかになった
マサルの母親は表向き被害者へ詫びるとして自殺した
しかしその実態は
自らの時効を迎えた犯罪暦が
公判記録として公のものとなったからに違いない
病院に収容されて数年
あいつは病室のベッドからろくにおりもしないでいる
筋肉が衰えてもはや立つこともできないらしい
がりがりひょろひょろの体だ
極稀に正気に見えるときがある
そのときは決まって自傷行為をはじめる
「おんなじ！おんなじ！」
加害者になってしまった自分が許せないという意味だと思う
被害者のご遺族からの手紙に
許すという言葉があることを何度
教えてやっても
マサルはけして喜ばない
生きている限り
彼は償わなくてよくなった罪を償い続けるのだろう
地獄の家は崩壊したが
地獄は彼の心の中にある
