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うちのかみさんが、まだ旅行代理店でバスの添乗員をやっていた頃の話だ。

徳島の山奥にある木屋平村へ、会社の慰安旅行で行ったことがあるという。店らしい店はなく、深い森と澄んだ川ばかりの場所で、若いOLたちは退屈を持て余しながら三日間を過ごした。バーベキューをして、山道を歩いて、特に何も起こらないまま最終日を迎えた。

その日の午後、集落から少し外れた山道を歩いていると、向こうから馬の蹄の音が聞こえてきた。次の瞬間、鎧兜に身を包んだ人間たちが、馬に乗って連なって現れた。

時代劇の撮影か何かだと思ったらしい。装束は妙に本格的で、金属の擦れる音や馬の息遣いまで生々しかったが、OLたちは面白がって歓声を上げ、次々と写真を撮った。中でも一人のOLが、鎧武者のすぐそばまで寄って、ポラロイドで写真を撮っていた。

武者は何も言わなかった。ただ、じっとこちらを見ていたという。

そのまま観光を終え、帰りのバスが山道を下り始めた頃だった。突然、さっき写真を撮っていたOLが、喉を詰まらせたような声を上げ、座席で痙攣し始めた。口から泡を吹き、白目を剥いて倒れ、バスは急停車した。

救急車を呼び、上司が付き添って病院へ運ばれた。

それ以降、車内の空気は異様だった。誰も喋らない。特に、倒れたOLが座っていた席だけが、不自然に空白になっていた。そこに視線を向ける者はいない。近づこうともしない。

かみさんは添乗員として何とか場を和ませようと声をかけたが、返事はなく、肩を震わせて泣き出す者までいた。

次のパーキングエリアで全員が降り、運転手もトイレへ行った。バスに残ったのは、かみさん一人だった。

静まり返った車内で、ふと、例の座席が目に入った。足元に何か落ちている。拾い上げると、ポラロイド写真だった。

写っていたのは、あのOLと鎧兜の男だった。肩を寄せ合い、楽しそうに笑っている。だが、よく見るとおかしい。

男は笑っていなかった。目を見開き、歯を食いしばり、強い憎しみを向けている。その腕は横に伸び、宙を斬るような形で止まっていた。

写真の端に、違和感があった。

そこには、抜き身の太刀が写っていた。振り下ろされる瞬間で止まった刃が、OLの首元に深く食い込んでいる。血は写っていない。だが、刃の位置だけが異様に正確だった。

かみさんは息を呑み、写真を裏返した。裏面には、現像時についたはずの指紋が、何本も重なって残っていた。OL一人分ではなかった。

耐えきれず、写真を握りしめてバスを降り、ゴミ箱に捨てた。

それから、OLがどうなったのか、誰も詳しくは知らない。退院したとも、後遺症が残ったとも、聞かなかった。ただ、その会社から姿を消したことだけは確かだという。

かみさんは、その仕事を辞めた。

それからしばらくして、俺は気づいた。家のアルバムに、見覚えのない写真が一枚増えていることに。

山道を背景に、鎧兜の男が一人、こちらを見ている。笑ってはいない。その横には、誰も写っていないはずなのに、余白が妙に狭い。

首のあたりが、妙に切り取られたように。

かみさんは、その写真について何も言わない。ただ、アルバムを開くたび、必ずそのページを飛ばす。

俺はまだ、木屋平村のことを調べていない。

調べたところで、あの写真が消えるとは思えないからだ。

[出典:18 :風吹けば名無し:2015/07/14(火) 04:20:58.90 ID:J5URYVlJa.net]

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