短編 洒落にならない怖い話

妻の荷造り【ゆっくり朗読】4075-0106

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友人の話。

彼は来週にせまった山登りのために、自宅で準備をしていた。

妻は毎度の彼の行楽に、少々あきれていたようにみえたが、一緒に荷造りを手伝ってくれたそうだ。

登山二日目、彼は水にあたったのか、ひどい下痢に見舞われた。

脱水になり疲労困憊。

救急セットの中に何か使えるものはないかとあさっていると、入れた覚えのない整腸剤が入っている。

服用するといくぶん楽になり、歩きだす事ができた。

家に帰って、妻にその事をいうと、自分が入れたと言う。

「なんとなく、必要になる気がしたの」

彼の細君は、たびたびその妙な勘の冴えを発揮し、家にいながら彼の窮地を何度も助けているそうだ。

同じ友人の話。

いつものように山登りの準備万端ととのえた夜。

彼が地図を眺め明日のルートをおさらいしていると、玄関で物音がした。

そっとドアを開けて覗くと、寝ていたはずの妻がごそごそ何かしている。

「な、なにしてんの?……」

「ん……なんとなく。入れといた方がいいかな~って思って……」

寝ぼけ眼の妻が、ザックに包帯やらガーゼやら詰めていた。

一体いくつ入れたのか、ザックはぼこぼこに変形し膨れ上がっている。

これが必要な事態って、いったいどんな状況なんだ?

ぞっとした彼は、その登山を取り止めたそうだ。

(了)

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