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中編 r+ 集落・田舎の怖い話

集落の先輩の話 r+7256

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これは、俺が新入社員として入社した会社の先輩にまつわる話だ。

俺はその会社の宣伝部に配属され、仕事は先輩と二人で取引先への外回りだった。先輩は入社して約十年が経つベテランで、頭の回転が早く、明るく、正義感が強い。人としても社会人としても男としても尊敬できる、理想的な先輩だった。実際、会社の女性社員からもモテモテで、同僚や上司からも厚い信頼を寄せられており、まさに「完璧」という言葉が似合う人物だった。

そんな人が自分の直属の先輩になったのは、入社早々大ラッキーだと感じた。仕事中はもちろん、プライベートでもご飯を一緒に食べに行ったり遊びに連れて行ってもらったりと、非常に親しくしてくれた。

それから三年ほど経ったある日の夜中、突然先輩から電話がかかってきた。「今すぐうちに来てくれないか」と言うと同時に電話は切れた。先輩は普段そんな意味不明なことを言う人ではない。何か大変なことが起きたのではないかと直感し、急いで先輩のアパートへ向かった。

アパートに到着し、インターフォンを鳴らしても反応がない。ただし、部屋の明かりは点いている。不安になりながら先輩に電話をかけると、すぐに繋がった。「今、ドアの前にいます。どこにいるんですか?」と言った瞬間、カチャリとドアが開いた。そこに立っていたのは、顔が青ざめ、目がどんよりと曇った先輩だった。

部屋に上がると、特に乱れている様子もなく、普段と変わらない整った部屋だった。ただし、先輩自身は体が震えており、明らかにただ事ではない様子。何があったのか問い詰めると、先輩は一枚の茶封筒を取り出した。中には手紙らしきものが入っており、それを見せてもらうと、達筆な文字で奇妙な文面が書かれていた。

「赤子ノ中絶、灰汁(?)ト脂肪ニ?????烏ス火ノ……」(実際にはもっと長く、意味不明な文面だった)

「これは一体……?」と尋ねると、それは先輩の父親から届いた手紙だという。手紙の中身はほとんど解読不能だったが、先輩にはその意味がわかるらしい。要点を簡単に説明すると、「緊急事態が発生した、すぐに戻って来い」という内容だという。

先輩はG県にある集落の出身で、その集落を中学生の頃に出た(というより逃げた)らしい。それ以来、先輩は家族と一切連絡を取っておらず疎遠だったが、父親から手紙だけは一方的に何通も送られてきていた。先輩の生い立ちについては、それまで全く知らされていなかったが、その夜初めて聞かされた。そして、「一緒にその集落に行ってほしい」と頼まれた。

日頃からお世話になっているし、初めて自分の過去を話してくれたことへの嬉しさもあり、深く考えずに「いいですよ」と答えてしまった。行く日を決め、その日は家へ帰った。しかし、今になって考えれば、なぜあのとき先輩があんなに震えていたのか、もっと詳しく聞くべきだったと後悔している。

約束の日、車で5時間ほどかけて先輩の故郷である集落に到着した。話には聞いていたが、そこは驚くほどの田舎だった。未だに汲み取り式トイレがあり、電気さえ通っていないような家も点在している。というより、家自体がボロボロで、人が住んでいるようには見えないものばかりだった。

周囲は田んぼや畑が広がっているが、真昼間だというのに耕作している人影は一切なく、住人がいる気配が全くない。ざっと見たところ、家は10軒にも満たないようだ。そのとき、頬かむりをしたおばあさんが、ボロボロの家から出てきた。俺たちに不思議そうな目を向けている。明らかに警戒されているようだった。

先輩はそのおばあさんに近づき、持参していたあの手紙を見せながらしばらく話し込んでいた。戻ってきた先輩の後ろからも、おばあさんはまだ俺を凝視している。時折、何かブツブツと呟いており、その姿が不気味だった。

気にする様子もなく、先輩は舗装されていない泥だらけの道をどんどん進んでいった。そして、やがてたどり着いたのが先輩の実家だった。他の家とは違い、ここだけは立派で大きな屋敷のような建物だった。

中から出てきたのは、体格の良い大柄な男性。どうやら先輩の父親らしい。その瞬間、先輩は地面にひざまずき、いきなり土下座をして謝り始めた。

「すみません、もう私はこの家には戻りません。集落へも来たくないです」

そう告げて、頭を下げ続ける先輩。その姿を見た父親は、「とにかく中に入るんだ」と一言。そして、無理やり先輩を立たせると、そのまま力づくで屋敷の中へ押し込んだ。俺だけは外に取り残され、ポツンと一人。

数分後、戻ってきた先輩が無言で俺を屋敷の中に通した。正直、入りたくはなかったが、断る余地もなくそのまま中へ足を踏み入れることになった。

玄関から居間へ向かう途中、長い廊下を歩いた。古い木の床がギシギシと軋む音が響き、不気味な雰囲気が漂っていた。廊下を進む中でいくつかの部屋を通り過ぎたが、そのほぼ全ての部屋には外側から鍵がかけられていた。そして、あの手紙の文面のように解読不能な文字が、部屋の名前のように書かれている。

建物全体は、カーテンや板で目張りされており、薄暗い。窓ガラスは埃まみれで、一度も掃除された形跡がない。どの部屋も陰鬱な雰囲気に包まれていた。

居間に通されると、そこには大量の額縁が並べられていた。数えてはいないが、百を軽く超える数で、白黒写真や肖像画のようなものが多い。部屋にはテレビすらなく、ただ広い空間に無数の写真だけが鎮座していた。

俺が居間で呆然としている間も、父親は俺の存在を完全に無視していた。挨拶もされず、まるでそこにいないもののように扱われた。

先輩と父親の間で親子喧嘩が始まった。先輩は「ここに戻ることはできない」と強く主張する一方で、父親は「お前はしきたりでここに居なくてはならない」と譲らない。その押し問答は延々と続いた。

途中、俺はトイレに行きたくなり、暗い廊下を進んで汲み取り式のトイレを見つけた。恐る恐る用を足して居間に戻ると、まだ二人は言い合いを続けていた。しかし、その会話の中に、時折不気味な言葉が混じる。

「お前がここを出て行くなら、俺を殺していけ」
「母親はお前を恨んでいた」
「奇形をこれ以上増やしちゃならん」
「土偶にされたいか」

思わず背筋が寒くなった。やがて深夜12時を回り、俺は疲れ切ってそのまま居間で眠ってしまった。

目が覚めると、俺は布団の中にいた。どうやら先輩が運んでくれたらしい。時計を見ると、朝の10時過ぎ。静まり返った屋敷の中を歩き回り、外で水を汲んでいる先輩を見つけた。「すいません……寝てしまいました」と謝ると、先輩はいつものようにニッコリと微笑んだ。「ごめんなぁ、つき合わせちゃって」と、爽やかに言われた。

夜中の3時まで父親と話し合った結果、何がどうなったのかを先輩に聞いてみた。すると、長い話を簡単にまとめて説明してくれた。

この集落は、全ての住人が血縁関係にあるらしい。つまり、兄弟同士で結婚をし、子供を設けることで代々家系をつないできたのだという。先輩の母親は先輩が生まれてすぐ病気を患い、病院もない環境のため治療を受けられずに亡くなったそうだ。

この集落の掟として、一度集落を出た者は二度と戻ってくることが許されない。しかし、先輩は例外として呼び戻された。その理由が、この集落で奉られている神に関係しているという。

その神を祀る「神の日」という祭りが毎年2月に行われるらしい。そして現在、集落は壊滅的な状況にあり、その神の日には「生贄」が必要とのこと。その生贄として選ばれたのが先輩だという。

正直、話を聞きながら「何を言っているんだ?」と困惑した。だが、先輩は真剣な顔で話し、冗談や作り話を言っているようには見えない。どうやら、本当にそのような風習が存在し、それが今も続いているようだった。

俺は「今の時代に生贄なんてあり得ないだろ」と言い、先輩に早く逃げた方がいいと促した。しかし、先輩は「お前にはここまで付き合わせて悪かったが、もう帰ってくれ。この話は忘れてほしい」と言った。腹をくくった表情で、それ以上は俺の言葉に耳を貸そうとしなかった。

何とか説得しようとしたが、先輩はだんだんと苛立ちを見せ、ついには無言で屋敷に戻ってしまった。俺は取り残された形となり、とにかくここを出ようと決意した。

屋敷を後にして来た道を戻り、泥だらけの道を歩きながら車を目指した。その途中、遠くに数人の人影が見えた。その中には小学校低学年くらいの子供がいたが、性別もわからないほどの姿だった。髪が長く、額が腫れ上がっているように見え、歩き方もどこかぎこちない。

さらに、大人らしき二人も目にした。彼らは顔に大きなコブのようなものをぶら下げており、年寄りでもないのに杖をついて歩いていた。服装もボロボロで、その姿は異常で不気味だった。

先輩の話が本当かもしれないと思うと、恐怖が一気に込み上げてきた。俺は足を速め、車まで猛ダッシュで駆け込んだ。エンジンをかけ、バックで泥道を抜け出そうとしたが、車がぬかるみにハマったらしく、タイヤが空回りするばかりで動かなかった。

その時、不意に視界の端にあの頬かむりをしたおばあさんの姿が映った。車のすぐ横に立っている。いつの間にそこに来たのか、全く気付かなかった。

おばあさんは、鋭い目つきでこちらを見ながらこう言った。

「ここで見たこと、聞いたことは誰にも話すんじゃないよ」

「どう考えても普通じゃない」とつい返してしまったが、その言葉におばあさんは激怒した。

「うるさい、よそ者は出て行け!土偶にして埋めるぞ!」

その剣幕に圧倒され、俺は車が動かないことに焦りを感じながらも、どうにかしようと必死だった。おばあさんはそのまま家へ戻っていったが、ここが異常な場所だという直感がさらに強まった。

何とか車を動かし、その集落を脱出することに成功した。家に帰るや否や、すぐに警察に駆け込んで起きたことを全て話した。しかし、警察は信じてくれなかった。

そもそも、地図にはそんな集落は存在しておらず、付近にはただ山が広がっているだけだと言う。だが、先輩が消息不明になっている以上、一応付近の山を捜索してくれることにはなった。しかし、その後、警察からの連絡は一切なかった。

集落を出て以降、先輩とは連絡が取れない。あの場所では携帯の電波が届かなかったため、どうしようもないのだ。それ以来、俺はあの集落に行っていないし、絶対に行きたくない。

(了)

[出典:30 本当にあった怖い名無し 2012/05/31(木) 14:39:36.35 ID:0mjhv6GZ0]

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