短編 怪談

国立競技場が見える広場【ゆっくり朗読】

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俺も結構昔の話だが聞いて欲しい。

223 :本当にあった怖い名無し:2023/03/16(木) 20:51:41.42 ID:Y3Q9LbwF0.net

昔だが、場所は具体的に示そうと思うので、もし同じ体験をしていたり、何かその場所の曰く的なことを知っていれば教えてくれ。

あと最悪、これはただの夢だった可能性もある。

もう何年前になるか記憶にないが、国立競技場が新しくなる数年前(工事が始まる数年前ね)、千駄ヶ谷の駅から東京体育館の脇を通って、左側に国立競技場が見える広場的なところを進むとその先の道に出られる場所があった。

小道とかではなく、公園ぽくなってる広い場所で行きも帰りもいつも大勢の人が通ってる。

国立競技場周辺に行ったことある人なら「ああ、あの場所ね」ってわかると思う。
新しくなった今もその場所自体はあるので行くとすぐ分かる。

それで昔はその場所に磨いた石で出来たベンチがあって、そのベンチの真ん中が灰皿になっててタバコが吸えたんだ。

今の時代では考えられんがな。

ベンチはまだあるかも。

その頃の俺の職場はそこを抜けた先の道沿いだったから、いつも千駄ヶ谷の駅で降りてそこを抜けつつ途中でタバコを吸ってから会社に行き、帰りもそこを通って一服してから駅に向かってた。

当時は冬で、20時くらいに仕事が終わって会社を出て、イヤホンを付けて音楽を聴きながら、いつも通り帰り道のベンチの灰皿でタバコを吸ってたんだ。

既に先約が数人いてベンチには座れずに俺は立ってた。

ただ吸ってるわけではなくて、スマホでニュースを見ながら吸ってたんだが、途中で突然ニュースの更新が出来なくなって、よく見たらスマホが圏外になってた。

こんな東京のど真ん中で圏外なんてあるかよと思ったが、まあ、いいやと思い顔上げたら違和感に気づいたんだ。

誰もいない。

急いでイヤホンを外したら怖いくらい静かだった。

車も走ってない。

数年その現場に通ってたが、21時前でこんなに人が居なくなるって始めてだったが、その時は珍しいこともあるもんだ。
くらいだった。

タバコを吸い終わって駅に行ったが道中も駅も誰もいない。

自動改札は開いたままになっていて、近くに駅員もいないし、でもまあ通勤定期だし降りる駅で事情を言えばいいかと思って駅に入ってホームで電車を待ってたんだがこの時間で30分待っても全然来ない。
次の電車を示す掲示板を見たら、それは映ってなかった。

さすがにおかしいと思ったんだが、その時点ではまだオカルト的なものではなく、政府から緊急避難命令みたいなものがでて、俺が音楽聴いてたから聞きはぐったのかもしれないとか思ってた。

そんなこともあるわけ無いんだが当時は本気でそう思った。

駅前に交番があるからそこなら警察官か誰かいるだろうと思って向かったんだが誰もいなかった。

おまえらも避難したのかよと少し頭に来たんだが、さすがにこれは違うなど思い始めた。

避難したにしても音楽聴いて下向いてたからといって東京の都心部で万単位の人が気付かずに短時間でいなくなるわけない。

だんだん怖くなってきて、取りあえずさっきの喫煙所まで戻った。

そこに戻ったのは大した意味は無くタバコを吸って落ち着きたかった、それだけだ。

喫煙者なんてそんな感じだ。

タバコを吸いながら取りあえず友人に電話したが、圏外なので当然繋がらない。

それでもスマホを再起動したりして何とか誰かと連絡を取ろうと思ったが状況は変わらなかった。

ダメだと思って顔を上げたらまた異変に気づいた。

雪が降ってる。

しかも足首あたりまで積もってる。

冬だから雪が降ることはあるだろうがそんな短時間に積もるか?
オカルトなんて信じない方だがさすが怖くなって何かいるのかと辺りを見回したら、いた。

いてほしくなかったが。

東京体育館の方に白いワンピース?のような服を来た女性が。

しかもワンピースは半袖だ。
しかも裸足なのが分かる。
足首あたりまで雪が積もってるのに裸足なのが見えたのは浮いてたからだ。

何で浮いてると思ったかというと足が地に着いてる感じではなくだらんとしてたから。

咄嗟に目をそらした。

明らかに普通じゃないもので見てはいけないもののような気がしたから。

俺は再度誰かと連絡を取ろうとまたもやスマホを再起動とかしはじめた。

スマホをいじってたので目線は手に持ったスマホを見てたので少し下を向いていたのだが、また急に異変に気づいた。

手元のスマホの先にさっきのワンピースの女性の身体が見える。

つまり目の前にいる。

また変化に気づかなかった。

足元はやっぱり浮いているように見えたが、目の前で俺は下を向いていたから顔はわからない。

一番怖いのはその女の吐息のような音が聞こえたことだ。

生きてる人?よくわからん。

どうしていいかわからず固まってた。
さすがに目を逸らせなかったが動くことも出来ない。

どれくらい硬直していたかわからない。

ものすごく長く感じたが、実際は数分かもしれない。

向こうも特に動かなかったのだが、吐息だけは聞こえていた。

どれくらいかして、女の手が動いたような気がした。

その瞬間にとっさに走り出した。
とにかく女を見ないように自分の会社に向かって走った。

会社ならセキュリティーキーを持ってるから中に入れると思ったから。

そこからはそんなに遠くないからとにかくダッシュで走ってその時間は地下からしか入れないから地下に行って通用口からセキュリティーキーを使って中に入った。

本来はビルの警備員がいるところも通ったがやはり誰もいない。

とにかく8階の自分たちのオフィスに行き中に入ったが誰もいない。
うちの会社はシステムの運用系の仕事もあったから、本来は夜勤が誰かしらいるのだが、誰もいなかった。

オフィスの窓から走ってきた方を恐る恐る見ると、このビルに向かう道沿いの少し離れた位置にそいつはいた。

さっきいた場所から少し移動したことになる。

追ってきたのかと思うと本当に恐ろしかったが、そこからだと距離があったので、今度は少し観察出来た。

間違いなく女だ。
遠く視線まではわからなかったが、向こうもこっちを見ている気がする。

どうしようかと思っていたが、一瞬目を離したすきにいなくなってしまった。

ビルに入ってきたのかもしれないと思って軽くパニックになったが、しばらくしても女が現れることは無かった。

自分の席で座っていると、疲れからか寝てしまった。

朝になって会社の同僚に起こされた。

徹夜したのかとか、何かトラブルでも発生したのかとか聞かれたが、自分も記憶が混乱して曖昧にというか何も答えられなかった。

ひょっとして、仕事が終わって疲れてここで寝てただけで、全部夢?
ただ、コートは来たままだったから外には出たんじゃないかと思う。
窓のそばに行くともちろん女はいなくて、雪もなくなっていた。

同僚に「一晩で雪は溶けちゃったんだな。」と言ったら「ハぁ?雪なんて降ってないだろ?」と言われた。

やっぱり夢だったのかもしれないが、今でもよくわからない。

ただ、夢にしては今でも女の吐息まで思い出せるくらい明確な記憶だ。

近くに心霊スポットもある場所ではあるが過去に何かあった場所なんだろうか?

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