短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

雨宮さん【ゆっくり朗読】1700

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自分、数年前までK察の人間でした。

178 :雨:03/04/27 21:59

大学を出てすぐ東京都T島区の警察署に配属。

自分はT大出のいわゆるキャリア組で(自慢に聞こえたらスマソ)、いわゆる期待の星。

そういう背景もあって、お偉いさんたちには自然可愛がられる傾向に。

で、ある日署長サンに飲みに誘われた。

自分はもう着替えおわって、帰り支度が済んでいたけど、署長はまだ制服姿で、しかも「もうひとメール打つから待て」と言う。

暇を持て余して、また自席につき、ぼんやりと閑散とした室内を眺めていると、目の前にぽん、とバインダーが投げ出された。

「キミも、いずれ知ることになるだろうから。暇潰しに読んでて」
そう言うと署長はまた席に戻り、カタカタとキーボードを叩く。

厚さ2cmほどのプラスチックバインダの背表紙には、『雨宮さん』と書いてある。

なんだろう。パラパラとページをめくる。

調書や現場写真。いわゆる捜査資料の類がファイリングされている。

そして、その内容を読んで愕然とした。

本当に、なんというか、このスレにあるような、オカルトチックな事件の集大成。

そして、そのほぼ全てが未解決。1ページめくる毎に、ぞくぞくと背中に悪寒が走る。

キツネ憑き(?)の窃盗事件容疑者の写真とか、顔つきが半端じゃない。

人間の顔じゃない。洒落になってない。怖い。

事情聴取の調書にも、素で『ケーン』とか『キキキ』とか書いてある。

いろいろ他にもあったけど、マジでこれ以上は勘弁。割愛します。

三分の一ほど読んだところで、署長にファイルを取り上げられる。

「はい、そこでストップ。続きは、キミが署長になったらね」
そう言うと、署長はそのファイルを自席の鍵付きの引き出しにしまった。

頭がボーっとして、脇にイヤな汗をかいていたのを覚えている。

池袋の小料理居酒屋で署長に話を聞く。

簡単に言うと以下のような感じ。

K察にも所轄毎に、いわゆる『成績表』がある。

検挙率とか、そういうふうに考えてもらえばいい。

で、K察とはご存知、地域密着型のサービスゆえ、様々な側面で『地域格差』が出るのは否めない。

例えば、所轄により、どう頑張っても『科学捜査では解明できない事件』が多発するエリアがあるらしい。

そういったエリアでは、当然事件解明に至る確率は低下する。

そのような地域による評価の較差をうめるべく、70年代あたりから、特定の条件を満たす特殊な事件に関して、その評価の対象から暗黙のうちに除外される、というルールができていたらしい。

それが雨宮さんファイルに綴じられているような事件である、と。

「で、雨宮さんて、誰なんですか?あのファイルの名前……」
自分がそう聞くと、署長は胸のボールペンを取り出し、和紙の敷物に一文字、『霊』。

「な、上のとこ。雨、だろう」

ニヤニヤする署長さん。

また後日、俺はそのファイルの事が気になり、署長に再度見せてくれと頼んだところ、「気にするんじゃない。忘れておきなさい」と、ピシャリと一喝されてそれ以来。

その後、その署長といろいろゴタゴタがあって、K察も辞めてしまい、今はお気楽サラリーマンやってます。

なんていうか、まんまXファイルでした。

同期の話では、B京区、A立区の所轄にも同様なファイr(ry

書いたあとで、ちょっとヤバいかなと思ってるんで、とりあえず、フィクションですということでよろしくです……

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