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雨宮ファイル r+1952

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友人から聞いた、かつて警察に勤めていた人物の話だ。

彼が警察に配属されたのは、東京都のある下町の署。いわゆるキャリア組で、将来を期待されるエリートだったそうだ。周りのお偉いさんたちからも自然と目をかけられ、彼自身、忙しくも充実した日々を送っていた。

そんなある日、署長に誘われて一緒に飲みに行くことになった。彼が帰り支度を整えて待っていると、署長が「ちょっと待ってろ、最後にメールを一本打つから」と自席に戻る。暇を持て余して自分の席に戻り、室内をぼんやり見回していた彼の前に、突然、バインダーが投げられた。表紙に『雨宮さん』と書かれた分厚いファイルだ。

「そのうち君も知ることになる。暇つぶしに読んでおけ」

署長はそう言うと、またキーボードを叩き始めた。

不思議に思いながらも、ファイルを開いてみると、ページの中には調書や現場写真、捜査資料がびっしりと並んでいた。しかし、その内容が異常だった。ありふれた事件ではなく、この世のものとは思えない異様な事件の数々が、詳細に記されていたのだ。特に、キツネ憑きと疑われる窃盗事件の容疑者の写真には背筋が凍った。人間の顔とは思えない奇妙な表情を浮かべていたからだ。調書には、まるで動物のように『ケーン』や『キキキ』と奇声を上げていたことが記されている。

背中に冷たい汗が滲むのを感じつつ、ページを進めていた彼に、署長がふいに声をかけた。

「そこでストップ。続きは、君が署長になったときに見せてやる」

署長はファイルを取り上げ、自席の鍵付きの引き出しにしまい込んだ。

その夜、二人は飲みに行った。署長は口を滑らせるように話し始めた。K察の所轄には成績表のようなものがあり、事件解決率で評価がなされる。だが、科学捜査では到底解明できない事件が一定の地域に多発することがあり、そのような事件は評価対象から暗黙のうちに除外される、というルールがあるらしい。

「……で、雨宮さんって誰なんですか?」

彼がそう尋ねると、署長はニヤリと笑い、ボールペンで和紙の敷物に『霊』の字を書き、こう言った。

「ほらな。上の部分を見てみろ、『雨』だろう?」

その謎めいた一言に、彼は返す言葉を失った。

後日、どうしても気になって再びファイルを見せてくれるよう頼んだが、署長は「気にするんじゃない。忘れておきなさい」とぴしゃりと一喝した。

その後、彼と署長との間には何かしらのいざこざがあり、彼は警察を辞めた。今はただのサラリーマンだというが、その『雨宮さんファイル』のことが頭をよぎるたび、体が冷えたように感じると言う。

どうやら、都内の他の署にも、同じようなファイルが存在しているらしいのだが、彼はそれ以上知ることもなく、ただ、その記憶を胸の奥に封じ込めている。

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