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短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚 n+2026

先に走っていた nc+

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夫は「駐車場で見つけやすいから」という理由で、歴代の車のナンバーをすべて同じ番号にしている。

自営業で、車を使うことも多いし、話のネタにもなるからというのも理由のひとつらしい。

私の今の車は夫のお下がりなので、当然そのナンバーのままだ。
満車の駐車場でも一瞬で見つかるのは確かだが、目立ちすぎるという欠点もある。

案の定、「あのナンバーの車は〇〇屋さんの奥さん」という認識が、夫の客の間ですぐに共有された。
「さっきスーパーで見ましたよ」
「今日は特売だからって朝言ってたでしょ」
そんな会話が当たり前になっていった。

最初のうちは、特に気にもしていなかった。
ところが、次第に妙な目撃談が混じるようになった。

「昨日の夜、奥さんの車とすれ違いましたよ」
その日は夫と家で夕食を食べていた。
「さっきコンビニに停まってましたよ。今日はお休みですか」
その時間、私は職場にいた。

私の行動はだいたい説明がついたし、変な疑いをかけられることもなかったので、見間違いだろうということで済ませていた。

ある日の昼過ぎ、仕事中に夫から電話がかかってきた。
珍しいと思いながら出ると、妙に声が低い。

「今どこだ」
「仕事中だけど」
「だよな……今、お前の車が前走ってる」

一瞬、冗談かと思った。
「なに言ってんの」
「いや、ナンバーが同じで……あ、曲がった」

電話口の向こうで、ウインカーの音が聞こえた。
追いかけているらしい。

仕事中に何やってるの、と怒鳴りたいところだったが、そのときは不思議と声が出なかった。
胸の奥に、理由のない冷たさが広がっていく。

「見失った」
「それ、本当に私の車?」
「間違えるわけないだろ。あの番号だぞ」

夫の声が急に小さくなる。
私も同じことを考えていた。

「……追いつかなくてよかったのかもな」

それだけ言って、電話は切れた。

その日の帰り、職場の駐車場を確認した。
朝乗ってきた車は、いつもの場所に、何事もなかったように停まっていた。

安心すべきなのに、そうは思えなかった。
夫が見たのは、見間違いではない。
あれは確かに「私の車」だったという確信だけが残った。

ドッペルゲンガーを見ると死ぬという話がある。
では、車の場合はどうなるのだろう。

車だけが壊れるのか。
それとも、乗っている私ごとなのか。

最近は、駐車場に停まっている自分の車を見るたびに、どこか数が合っていないような気がする。
通勤のたび、どうか自分自身が、私の車を目撃しませんようにと、それだけを考えてハンドルを握っている。

[出典:怖い話&不思議な話の投稿掲示板/投稿者「茉莉花 ◆YKNRA59o」 2018/12/01]

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