ある日、俺はいつも通り、家の裏にある神社で読経をしていた。
不破の祭りで唱える決まりの経だ。分家も本家も途絶えてしまって、せめて自分の代だけは、と思って続けている。
一回目の読み始めで、喉の外側だけが妙に熱くなった。
同時に、喉の内側が生ぬるい水で満たされる感じがした。真夏の川に沈められて、首から下だけが水に浸かっているような感覚だ。
おかしいと思った。舌を噛んだわけでも、息を詰まらせたわけでもない。意識ははっきりしているし、苦しくもない。ただ、溺れている。
一度目を終えて、二度目に入る。
溺れている感覚は消えない。それどころか、首の周りが少しずつ締まっていく。誰かに触られている感じはないのに、締められている。
早く終わらせて帰ろう、そう思った。
三度目に入ったとき、溺れる感覚と首を絞められる感覚が、完全に重なった。息はできる。意識も澄んでいる。ただ、水の中にいるという確信だけがあった。
読み終えた瞬間、それは嘘みたいに消えた。
その後、境内の手水舎を見て、妙なことに気づいた。
水は張っていなかった。
[出典:225 :本当にあった怖い名無し:2025/08/29(金) 21:32:54.62ID:FzX0ypvc0]