ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

中編 r+ 山にまつわる怖い話

闇夜に消えたサーチライト r+4358

更新日:

Sponsord Link

これは、あるバイク好きの男性が体験した、十五年経っても忘れられない奇妙な話だ。

バイクの免許を取ったばかりの若者だった彼は、林道を駆け巡ることに胸を踊らせ、地図を頼りに未踏のルートを探し求めていた。

ある晩、彼は相模湖から奥多摩へ向かう林道のひとつに惹かれ、闇の中でエンジンを響かせながら進んでいた。しかし、夜も深まってくると、静けさの中に異様な空気が漂いはじめる。片側通行の赤信号に差し掛かり、軽快に走っていた足を止めると、アイドリングの弱々しい音が林の中に吸い込まれ、ヘッドライトも暗く揺らぎはじめた。まるで、夜の闇が徐々に彼の存在を飲み込もうとしているかのように――。

そんな中、突然、後方からもうひとつの光が近づいてくるのが見えた。振り返ると、それはバイクのライトのようで、どうやら同じく林道を走る好き者がいたらしい。少し心が和らいだ彼だったが、何かが妙だった。そのバイクは信号を無視して、スピードを緩めることなく彼を追い越していったように見えたのだ。しかし、追い抜かれたはずの視界に、その姿はまるで消え去るようにして影も形も残っていなかった。

心の底に不穏が浮かび上がり、背筋に冷たい汗が流れるのを感じながらも、焦るな、と自分に言い聞かせ、バイクを再び走らせた。やがて林道のカーブを抜けたところで、遠くに数台の車と焚き火の光が見え、そこに一目散に向かっていった。夜の林道で誰かに出会うことは稀で、仲間のように感じた彼は、「こんばんは、こんなところでバーベキューですか」と声をかけた。すると、陽気な笑い声とともにその場に迎えられ、一緒に焚き火を囲むこととなった。

見知らぬ者同士とはいえ、焚き火とバーベキューの香ばしい煙の中で話が弾んでいたその時、不意に女性が「あれ?あの光は何?」と山の頂を指差した。その光は遠くの闇に浮かび上がり、次第にこちらへ向かってきているように見えたのだ。彼もついさっき体験した奇妙な出来事を思い出し、恐怖と好奇心が交差する複雑な気持ちで光の動向を凝視した。

「なんだ、あれ?」と声が上がり、誰かが「逃げたほうがいい」と言うが早いか、場にいた全員が車に駆け込んだ。彼も内心逃げ出したい気持ちに駆られたが、何かに突き動かされるように焚き火の影に身を潜め、じっと光を見つめた。

その光はまるでサーチライトのように、焚き火の跡を照らし出し、次第に近づいてきた。彼は心の中で、「まさかUFOじゃないよな」と思いながら、冷静な顔を保とうとしていたが、やがてその光が自分のバイクに焦点を当てていることに気づいた途端、冷静さは消え去った。思わずバイクに飛び乗るも焦って手元が狂い、バイクを倒してしまう。急いで立て直しエンジンをかけようとするが、セルモーターがないため、二速で走りながらのエンジン始動を試みる羽目になった。息が詰まるような暗闇の中で、ようやく「ブウォーン!」というエンジン音が鳴り響き、彼はバイクを猛然と走らせた。

背後から迫ってくる光は、まるで彼を標的にしているかのように一定の距離を保ちつつ追いかけてくる。その異様なスピードに恐怖を覚え、彼はただ必死に林道を駆け上がり、目に見える全てのカーブを最大限の速度で駆け抜けた。しかし、その光は追っては遠のき、また近づいては消え、まるで猫が獲物を弄ぶかのように彼を追い詰めている。

やがて、彼の前に、さっき逃げていった四輪駆動車が見えてきた。だが、その狭い林道で彼もその車も限界速度に達しており、前後から押しつぶされそうな圧迫感が襲いかかる。その時、ふと脇に車止めの隙間が見えた。考える間もなく、彼はバイクをその僅かな隙間に向けて飛び込むと、なんとか車止めをかいくぐり、後ろを振り返った。

すると、例の光は彼を見失ったのか、四輪駆動車の方に向かっていった。そしてそのまま、車を照らしながら林道の奥へと消え去ってしまったのだ。

夜明けが近づき、薄明るくなり始めた山中で、彼はひとりバイクを止め、真っ暗な静けさに耳を澄ませていた。遠くで鳥の鳴き声が聞こえ、夜がようやく終わりに近づいていたが、林道に戻るべきか迷いながら、あの四輪駆動車の運命を案じずにはいられなかった。

そのまま彼は奥多摩の麓まで戻ったが、そこに四輪駆動車の姿も、事故の形跡も見当たらなかった。彼はふと、「きっと彼らも無事に逃げられたのだろう」と信じ、安堵するようにバイクのエンジンをふかして家路へ向かうことにした。

道中、ふとしたミスで慌ててヘルメットを林道のバーベキューポイントに置き忘れてしまったことに気づくが、その日はなぜか振り返りたくはなかった。そして十五年近く経った今でも、その光の正体も、四輪駆動車がどうなったのかも分からないまま、彼はその夜のことをずっと心のどこかに留めている。

もし、この話を聞いて「あの時の焚き火のメンバーだ」と思い当たる者がいれば、ぜひ知らせてほしい。

[出典:343 名前: あなたのうしろに名無しさんが……03/12/26 00:34]

Sponsored Link

Sponsored Link

-中編, r+, 山にまつわる怖い話

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2024 All Rights Reserved.