お稲荷さんもそうですが、水にまつわる場所――特に水が溜まるような場所を作ると、必ずと言っていいほど「水の神様」が宿る、なんて言われていますよね。
井戸はもちろん、池なんかもその類だとよく聞きます。つまり、水が静かにとどまり続ける場所には、何かしらの神性が宿るという考え方があるのでしょう。
そう考えると、そうした井戸や池を埋め立てる際には、やはり神様に「ここから退いてください」と丁寧にお願いし、感謝の気持ちを込めて送り出す――いわゆる神事を行う必要があるのではないかと、強く思うのです。
実際、近所でかつて池だったか井戸だったかを、そのまま何の儀式もせずに土で埋めてしまった家がありました。
その家族は結局、数年のうちに全員亡くなってしまったんです。
私が昔聞いた話では、井戸を埋めるときには、必ず感謝の気持ちを込めたお祓いをしてから、地中に竹筒――いわば空気を通すパイプのようなもの――を一本刺しておくそうです。これは、井戸の中に宿る神様が呼吸できるようにするためなんだとか。
そのまま何もせずに埋めてしまうと、井戸の神様が窒息してしまい、怒りや呪いのようなものを引き起こすと信じられています。
実際に竹筒を入れずに井戸を潰した家では、病に倒れたり、原因不明の失明をしたりと、次々に不幸が訪れたという話もあるほどです。
ちなみに我が家でも、昔使っていた井戸が枯れてしまった際には、儀式を行い、きちんとパイプを立ててから埋めました。
祖母から聞いた話によると、あの亡くなった一家が埋めたのは、井戸ではなく庭に作った小さな池だったそうです。とはいえ、その池はプロの職人が造ったような本格的なものではなく、そこの家のおじさんが日曜大工の延長で作ったものだったとか。
だからなのか、神様が宿るような大層なものじゃないと思っていたのかもしれません。
「自分で作った池を自分で潰して何が悪い」と周囲の忠告にも耳を貸さず、そのまま埋めてしまったようです。
最初の数ヶ月は何事も起きなかったらしいのですが、半年ほど経った頃でしょうか。急に子どもが亡くなり、続けて奥さんが病に倒れ、そして最後におじさん自身が亡くなった――という流れだったそうです。
細かい順番までは曖昧ですが、祖母の記憶では、そのすべてが1~2年ほどの短い間に起きたとのことです。確か、奥さんは病気で、おじさんは事故か、その逆だったか……私もその頃は地元を離れていたので、記憶が曖昧なのはお許しください。
祖母が言っていたのはこうでした。
「池や井戸の出来が立派かどうかは関係ない。とにかく水が溜まったなら、そこには水神さまが降りてくる。あそこの場合は龍神さまだったみたいだから、ちゃんと礼を尽くさなかったことが、あの一家の不幸を招いたんだよ」
信じるか信じないかは人それぞれですが、自然の中には人智の及ばない存在があるのだと、改めて感じさせられた話でした。
[出典:810 :おさかなくわえた名無しさん:2011/09/19(月) 20:55:11.73 ID:UGCnAXlC0]