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短編 r+ 山にまつわる怖い話

埋めると言われて育った家 rw+5,187-0201

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俺の父方の家系について、はっきりした記録はほとんど残っていない。

戸籍を遡っても、ある年代を境に情報が途切れ、地名だけが九州の山間部を指している。父は「昔は山奥の領主筋だったらしい」と軽く言うが、その話はいつも、曽祖父の思い出話とセットで語られた。

曽祖父は、生涯ほとんど笑顔を見せない人だったという。父の記憶の中の曽祖父は、怒鳴ることはあっても感情を荒らげることはなく、ただ淡々と恐ろしいことを口にする大人だったらしい。子どもの頃、何か失敗をすると決まってこう言われたそうだ。「次は埋める」。冗談めかした調子ではない。本当に、そのままの声で。

曽祖父自身も、幼い頃はそれを信じて疑わなかったという。田舎の名家では、しつけと恐怖の区別が曖昧だったのだろう。だが、怒られることよりも曽祖父の心に引っかかり続けたものがある。それが、家の裏に広がる山だった。

山のふもとまでは行ってよかった。柴を拾うのも、畑仕事を手伝うのも許されていた。だが、一定の場所から上へ登ることだけは、どんな理由があっても禁じられていた。境界には目印も柵もない。ただ、そこから先へ行こうとすると、必ず誰かに止められた。

理由を尋ねても、大人たちは答えなかった。「道に迷う」「獣が出る」と言うこともあったが、同じ山で薪を取っているのに、それは通らない。曽祖父は次第に、理由を聞くこと自体がいけないことなのだと察するようになった。

十歳になった年の秋、曽祖父は一人で山に入った。大人たちが田畑に出ている時間帯だった。禁じられていることはわかっていたが、境界の向こう側に何があるのかを知らずに生きることの方が、恐ろしく感じられたという。

山道は拍子抜けするほど穏やかだった。傾斜は緩く、足元は踏み固められている。風に揺れる木々の音が心地よく、なぜここが禁足地なのか分からなくなった。曽祖父は気をよくして、さらに奥へ進んだ。

森に入ると空気が変わった。音が吸い込まれるように消え、木漏れ日が地面に落とす影だけが不自然に濃く見えた。持参したおにぎりを食べ、帰ろうと腰を上げたとき、低い声が聞こえた。

助けを求める声なのか、呻きなのか、判別がつかない。ただ、生きているものの声だった。曽祖父は迷った末、その声を追った。音は一定せず、近づいたと思えば離れ、また別の方向から聞こえてくる。

やがて、小さな盛り上がりに行き着いた。落ち葉と土が積もり、小山のようになっている。その下から、声が漏れていた。曽祖父は落ち葉をかき分けた。

土の中から、人の首が突き出ていた。

目は開いているが、焦点が合っていない。皮膚は土色にくすみ、首元は地面に固定されているようだった。声をかけても、意味のある言葉は返ってこない。ただ、息をするたびに喉が鳴った。

背後で、枝を踏む音がした。

振り返ると、複数の人影が立っていた。男か女か分からない者もいた。髪は長く、衣服は布切れのように体に巻きついているだけだった。年齢も判別できない。彼らは、曽祖父ではなく、地面から突き出た首を見ていた。

その視線に、責める色はなかった。困惑も、怒りもない。ただ、確認するような目だった。

次の瞬間、誰かが曽祖父の腕を掴んだ。冷たく、力が強かった。何を言われたのかは覚えていない。声は聞こえたが、言葉として認識できなかったという。曽祖父は必死に腕を振りほどき、走った。

どこをどう走ったのかも覚えていない。ただ、気がつくと家の土間に転がり込んでいた。家族は驚かなかった。汚れた服と震える曽祖父を見て、祖父の父は短く言った。

「あそこを見たか」

曽祖父が頷くと、それ以上何も問われなかった。ただ、「二度と行くな」とだけ告げられた。

その後、曽祖父は山の話を一切しなくなった。父が子どもの頃に聞いたのも、ほんの断片的な話だけだったという。曽祖父が亡くなった後、家の古い納屋を整理した際、木箱の底から奇妙な帳面が見つかった。日付はなく、内容も断片的だった。

そこには、人数のような数字と、身体的特徴が書かれていた。「右耳が欠けている」「左手の小指が短い」「喉に傷」。それは病気の記録にも、戸籍の控えにも見えなかった。

父は気味悪がって帳面を処分したが、その話を聞いたとき、俺は妙な既視感を覚えた。俺自身、左手の小指が他人よりわずかに短い。生まれつきだと聞かされていたし、気にも留めていなかった。

東京で暮らすようになってから、夜中に目を覚ますことがある。夢を見た覚えはない。ただ、体が冷え切っている。耳を澄ますと、遠くで葉擦れのような音がする。もちろん、部屋はマンションの高層階だ。

その音を聞くたびに、曽祖父の言葉を思い出す。「次は埋める」。

誰が、誰に向かって言っていたのか。
それを考えると、どうしても眠れなくなる。

[出典:http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1237401411]

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