ヤマザキパンを手にした瞬間、友人がふと呟いた。
128 :怖いお話ネット:2024-06-09(日) 14:45 ID:AB123CD
「ねぇ、なんでこれカビないんだろう?」
この一言がきっかけで、私はカビの生えないパンの秘密に挑むことにした。
ヤマザキパンがなぜカビないのか。その答えを探るため、まずは渡辺雄二の『ヤマザキパンはなぜカビないか』に目を通すことにした。この本は、一部の消費者たちの間で大きな話題を呼んだ。
「パンにカビが生えないのは、発がん性物質の臭素酸カリウムのせいだ」という主張が、人々の不安を煽った。
しかし、鈴鹿医療科学大学の長村洋一教授の研究によれば、これは科学的根拠に乏しい理論に過ぎないという。
臭素酸カリウムは確かに小麦粉改良剤として使われるが、防カビ剤としての効果は期待できない。実際、パンに含まれる微量の臭素酸カリウムではカビを防ぐことはできないのだ。
長村教授はこう指摘している。
「ヤマザキパンがカビないのは、製造過程が非常に清潔であり、包装も無菌状態に近いからだ」と。
また、パンの保存期間を延ばす要因には、酵母の種類や発酵時間も大きく関わっている。
例えば、コモパンのような長期保存が可能なパンは、発酵過程で生成される有機酸がカビの成長を抑制する働きを持っている。ヤマザキパンも同様に、清潔な製造環境と適切な発酵プロセスがカビを防いでいるのだ。
しかし、疑問は尽きない。
なぜ一部の消費者は「添加物=悪」というステレオタイプに囚われてしまうのか。
これは、人間の心理が感情的な訴えに影響されやすいからだ。科学的根拠が乏しい情報でも、感情に訴える表現を使えば、多くの人々を納得させることができる。
『ヤマザキパンはなぜカビないか』も、その巧妙な語り口で多くの消費者を引き込んだのだ。
ある市民講座での一幕を思い出す。
参加者の一人が「市販のパンには保存料がたくさん入っているからカビが生えない」と発言した時、講師がこう答えた。
「市販のパンには保存料は入っていません。カビが生えないのは、製造過程が非常に清潔だからです」
それでも納得しない参加者が
「では、なぜ自家製のパンはすぐにカビるのか」と問うと、講師はこう返した。
「それは、あなたの台所がパン工場より汚いからです」
科学の世界では、どんな化合物もその量に応じて毒にも薬にもなる。
食品添加物も例外ではない。適切な量で使用される限り、それは人々の健康を守る重要な役割を果たすのだ。
しかし、感情に訴える情報に影響されやすい消費者心理が、この事実を見過ごしてしまうことがある。
ヤマザキパンがカビない理由を科学的に解明することで、我々は日常的な疑問の背後に隠れた真実に目を向けることができる。
科学的知識を持ち、冷静な判断を下すことが、現代社会で生きる上での大切なスキルだ。
カビの生えないパンは、清潔な製造過程と適切な保存技術の結晶であり、科学の力を信じることで、我々は安心して美味しいパンを楽しむことができるのだ。