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【コンプリート完全版】邪霊の巣窟【ゆっくり朗読】4500

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この話は十数年にも渡り自分と現妻や実兄、町をも巻き込み、恐怖のどん底に引きずり込んだ実話です。

原著作者:ホラーテラー 2009/10/17 01:58

かなり長い上に、自分が書き込みに慣れてない為、読みにくい部分もあると思いますがご容赦下さい。

全ての始まりは小学三年生の時でした……

兄と兄の友達三人に誘われて、この町で大人たちから『絶対に近づくな』ときつく言われていた場所に、内緒で行く事になりました。

その場所とは、今は誰もいない寂れた神社で、子供ながらにかなり不気味で嫌な感じがしました。

本当は乗り気ではなかったのですが、兄たちに半ば強引に誘われる形で行く事になり、仕方なく行くといった感じでした。

決行当日の昼に、自分と兄は少し様子見に現地に行きました。

するとその場所に、最近この町に町役所だか町長だかから仕事を頼まれてやって来たらしい、二十代半ばくらいの男性がいて、

「君達、ここには何があっても絶対に来ては駄目だよ、近づかない方がいい。早く戻るんだ。いいね?」

と言われ、追い返されてしまいました。

しかし兄達は、その夜に計画を実行してしまいました。

その神社は、町の高台から伸びる坂を上がった所にあります。

その坂には鳥居が幾つも連なっており、かなり不気味でした。

最初は皆固まって歩いていたのですが、誰かが「別行動しよう」と言い出して、兄と自分、兄の友達三人に別れて行動する事になりました。

そしてしばらく歩いていると、急に周りの空気というか空間自体というか……とにかく何かが変わりました。

自分は兄に『帰りたい』と言おうとしたら、

「帰るぞ、今すぐに」と兄がいきなり言い出し、自分の腕を引っ張って引き返しだしました。

あと少しで鳥居という所で兄が立ち止まり、正面を見て震えていました。

自分も恐る恐るそこを見ると、子供が数人ほど自分らの進路を遮る様に立っていました。

その顔を見ると、皆半ば白目を向いて無表情でした。

兄は恐怖に耐え兼ね、叫びながら自分を引っ張って走りだしました。

子供たちを突っ切り、もう出られると思った瞬間、兄が悲鳴を上げて倒れたんです。

自分が兄の方を見ると、なんと先程の子供たちが兄にしがみついていたんです。

自分は何とか逃げて助けを呼ぼうとしましたが、体が動きません。

自分の下半身がやたら重い事に気づき、目を向けると、なんと、白目を向いて歯を剥き出しにした老婆が、腰にしがみついていたんです。

自分は恐怖というより死を覚悟しました。

死を覚悟して目をつむると、自分にしがみついている老婆が、

「おいで……おいで……こっちにおいで……」

と、頭に直接響くような声で呟いてきました。

自分はそれを聞いた途端に、死を覚悟したはずが物凄い恐怖心を感じ、思わず目を開いてしまいました。

すると老婆が自分の身体をはい上がって来ていて、顔が目の前にありました。

自分は力の限り叫びましたが、あんなに大きく叫んでいたのに近所の人は何故気づかないのかと思っていました。

そして兄の友達はどうしたのだろうと思い、兄の方を見ると、兄は子供たちに神社の奥へ引きずられて行ってました。

自分は必死で助けを求めて叫びました。

すると、背後から聞いた事ある声が聞こえました。

「もう大丈夫だよ」

その声を聞いた途端に身体が軽くなりました。

振り返ると、昼間に会ったあの男性でした。

後ろからは大人たちが大勢やって来ていました。

怒ってる声や心配している声も聞こえました。

助かった?と思い、兄を見るとなんとか無事なようで、ほっとして腰が抜けてしまいました。

兄がまだ奥に何人かいる事を告げると、男性の顔色が変わり、

「まずい!早く助け出さないと大変だ!」

と言って、数人の大人たちと走って行きました。

それから、兄の友達は神社の中で見つかりました。

変わり果てた姿で……

命は助かったけど精神をやられていたそうで、その人たちはそのまま町から出て、病院へ行き入院したそうです。

自分たちは皆に、これ以上無いくらいに叱られました。

母親たちは泣いていました。

その後で聞いたのですが、あの神社は元は普通の神社で、それなりの力を持った神主がいたそうです。

しかしなまじ力が強い為、助けを求める霊が次々と集まって来て、最初はきちんと対処していた神主もやがて堪えられなくなり、そのまま逃げ出したそうです。

本来、神主が居なくなったり取り壊されてしまう神社は、ちゃんとした儀式などを行い場を清めてから、祭ってる神を別の場所に移すという事をしなければならないそうです。

しかし、この神社はそのまま放置された為、祭ってる神がいるのに祭る神主が居ない、そしてまだ助けを求める霊が集まって来ているという事から、神の性質が異常をきたし、結果、邪霊の棲家となってしまったとの事でした。

男性は町から依頼されて、退魔士関係の本山から派遣されて来ていた人物だそうです。

その人が言うには、この神社は過去に例が無いくらいに酷い状態だそうで、浄化するにはかなりの期間が必要と言っていました。

自分たちはお祓いを受けて、そのまま帰されました。

もう絶対にあの場所には近づかないと決めました。あんな思いは沢山だと思いました。

が、あの事件はまだ始まったばかりだったんです……

数年後……あの時とは比べものにならない恐怖を味わう事になりました。

自分が中学三年になった時に、クラスで何かと目立つ存在の水沼が、こともあろうにあの神社で肝試しをやると言いはじめたのです。

自分と自分の彼女(現妻)のルリ子も誘われましたが、それが引き金となり、また兄や町を巻き込む事件が起きてしまいました。

水沼があの神社に肝試しに行くと言い出したのを聞き、自分は震えが止まりませんでした。

そして水沼が「おい!マサヤ。お前も来るんだろ?ルリ子も誘ってるから当然来るよな?まさか逃げないよな?」

と、挑発とも思える言葉で誘ってきました。

自分は当然断りました。

「いや……悪いけど行かない……そっちもあそこへは絶対に行かない方がいいよ……悪い事は言わないから止めた方がいい」

と、止める事もしましたが、水沼は全く聞き入れず、逆に自分を、臆病者、知ったかぶりしてカッコつけている、等と罵ってきました。

何度説得してもダメでした。

自分もあの時の事を詳しく言えればよかったのですが、町の大人やあの男性から『あの事を人に言ってはならない』と固く禁止されていたので、言う事ができません。

禁止された理由を言いますと、人と人の繋がり、関係は普通に考えているほど簡単でなく、もっと深く複雑な物らしいのです。

例え少ししか会話した事なくても(挨拶程度でも)、その人同士はそれで関係を持った事になり、繋がってしまうらしいのです。(強弱はあるみたいですが)

例え本人たちの仲が悪くても、関係なく繋がってしまうらしいです。

有名な『言霊』も、この事が関係してると言っていました。

だからあの事を他人に話す事は、あの事件に関係した自分は当然として、あの邪霊とも繋がる恐れがあり、自分を通して奴らが事件の事を知った人を呼び寄せる可能性がある、という物でした。

だから自分は事件の事は言えませんでした。

言えば関係無い人まで聞いてしまったり、水沼が人に話す恐れがあるからです。

自分はなんとか行くのを止めようとしましたが、取り付く島も無いといった状態で、逆に学年中に「マサヤは臆病者」「彼女だけ行かせて自分は行かない卑怯者」とか言い回り、イジメとまではいきませんが、少し孤立してしまいました。

なぜ水沼が自分に対してあんな態度を取っていたのか。

その理由はこの事件の本当に最後……この時からさらに数年後に判る事になりました。

自分はルリ子だけでもと思い説得しましたが、

「はるみ(ルリ子の親友)も行くし、約束しちゃったから……今更断り切れないよ……」

と言って聞いてくれませんでした。

あの水沼が流した話を聞いて、自分に少し不信感を抱いていたみたいでした。

自分はルリ子を放って行く事はしたくない……でもあそこに二度と行きたくない……止めようにも真実を話せない。(ルリ子だけに伝えようにも、多分水沼やはるみが強引に聞き出す恐れがありましたし)

悩んでいると、一つ思い出した事がありました。

あの事件の後にあの男性から、

「また君たちに危害が及ぶ可能性もあるから、これを持っていなさい。肌身離さずとは言わないけど、なるべく近くに置いて置くんだ。これを持っていたら、余程の事じゃない限り大丈夫だから……いいね?」

と、数珠に似ているお守りを、自分と兄にくれた物があったんです。

自分はそれをルリ子に、

「自分はやっぱり行けないから、これを持って行って。忘れたり無くしたりしない様にね」

と言って渡しました。

ルリ子も少し悩んだけど、了承して受けとってくれました。

自分は二つ持っているので、一つ渡しても大丈夫だろうと思いました。

もう一つは兄が持っていた物ですが、兄はもう家にいません。

兄が何処に行ったかは後でお話します。

そして、水沼が計画した肝試し当日の夜がやって来ました。

自分らにとって悪夢の様だった夜が。

肝試し当日の夜、自分は少し後悔していました。

皆を無理にでも止めるべきだったかもしれない……

ルリ子が行ってるのに、自分は怖いからという理由で行かないなんて最低ではないのか?と。

自室で悩んでいると、下の階から電話が鳴り始めました。

両親がなかなか電話を取らないので自分が電話に出ると……

『あ!!マサヤ?ルリ子が……ルリ子が……大変なんだよ!!とにかくすぐにきて!!』

電話は、はるみからでした。

「大変って、何が起きたの?ルリ子はどんな状態なの?」

『とにかく助けて!!今神社なの!!早く来て!早く!!』

最悪の事態になったと思いました。

自分が臆病なせいでルリ子が大変なことになったと、激しく後悔しました。

もう恐怖心よりルリ子のことが心配でたまらなくなり、神社に行く決意をしました。

しかし、自分一人が行ってもどうも出来ないかもしれない……

少し悩みましたが、両親に相談することにしました。

初めからこうすれば良かったのですが、言えば水沼とかに『大人にいいつけた卑怯者』と罵られ、皆に……ルリ子に嫌われる。

そんな自分勝手で自己保身的な考えで言えずにいました。自己嫌悪な気持ちでいっぱいでした……

本当は兄に相談したかったのですが、兄はあの事件の後も霊現象に襲われていました。

どうやらあの事件の影響は兄のほうが深刻だったらしく、退魔士関係の本山(どう表現したらよいのか判らない為、とりあえずこう呼ぶことにします)で浄化されることになり、今はいないのです。

兄は出発時に、

「俺はあっちに行くから、これはお前が持ってな。一つより二つの方が効果あると思うから」

と、お守りを渡してくれました。

両親に言うと二人は物凄く慌てて、

「町の人たちを集めて、あの人たちに連絡しよう。お前は絶対に家から出るなよ!!」

と言って出て行きました。

自分もルリ子や皆が心配でたまらなかったので、一足先に神社へむかいました。

しかし、その時気づけばよかったのです。

自宅の電話番号は、ルリ子から聞いたり、クラスメイトだから知ってても不思議じゃありませんが、どうやって神社から電話をかけた?

あの頃はまだ携帯もそこまで普及しておらず、クラスの皆は誰も持っていませんでした。

入り口の鳥居にたどり着きました。

その不気味な雰囲気に、そのままで入るのに躊躇してしまいましたが、意を決して入りました。

恐怖に震えながら進んでいると、あの悪霊たちが姿を見せないので不思議に思いました。

神社の境内は静かなものでした。いや、静かすぎたんです。

何か起こっているなら、皆の叫びなり悲鳴なり聞こえてくるはずです。

さらに進むと、誰かが座り込んでいるのが見えました。よく見てみるとルリ子でした。

自分はすぐに駆け寄って、

「ルリ子!!大丈夫?何があったの?皆は?」

と、ルリ子の肩を抱きながら聞きました。

「あ……マサヤ……う……うう……」

と、ルリ子は泣き出してしまいました。

「一体何があったの?怪我とかはない?皆はどこにいったの?」

「わかんないよ……しばらく歩いていたら、皆急に無口になって、先に行っちゃって……追いかけようとしたら転んじゃって……いくら叫んでも答えてくれなくて……そしたらへんな子供が出て来て、ここまで引っ張られて……」

自分はそれを聞いて、まずいと思いました。あの時と酷似してると。

あの電話の事もその時気づきました。

とにかくルリ子を連れてここから出よう……

そう思って振り返ると、子供が二~三人こちらを見つめていました。

しまった!!と思い、ルリ子を立たせて逃げようとして、気づきました。

その子供たちは、表情があの時の子供と違うんです。

怒った顔でこっちを見ていました。

「あの子たちだよ……私をここまで引っ張ってきたの……」

とルリ子が涙声で言いました。

「帰れ」

「ここから早く出て行け」

と、その子供たちが自分らに言いました。

どうして?と自分が子供たちを見ていると……

知ってる。俺はこの子たちを知ってる。

そう感じた瞬間、その子たちが誰か判りました。

あの時巻き込まれた兄の友達でした。

「あぁ……そっか……そうなんだ……君たちがルリ子をここまで連れてきてくれたんだね?今、悪霊から守ってくれてるんだね?」

自分は泣いていました。

そしてルリ子に、

「あの子たちは大丈夫だから……今のうちに出よう……大人たちも後で来るから、それから皆を探そう」

と言って、落ち着かせました。

ルリ子は素直に頷き、歩き始めました。

ところが、いきなり周りの空気が変わったのです。ルリ子もそれに気づき足を止めました。

そして周りを見ると、悪霊たちが自分たちを取り囲む様に立っていました。

「ひっ!!」「きゃああああ!!」

ほぼ同時に悲鳴を上げ、その場にへたり込んでしまいました。

あの子達が抑えていてくれたのに、限界がきてしまったのでしょうか?

自分たちはお互いを抱き合い、恐怖に震えるしかありませんでした。

しかし、悪霊はこちらに近づいてこようとはしませんでした。

自分はすぐに、お守りがあるからだと気づきました。

ルリ子を見ると、ちゃんと腕にお守りをしていました。

お守りが二つあるから効果も高いのでしょうか?それ以上近寄ってこれないみたいでした。

「ルリ子……走るよ……お守りがあるから何とかなるかもしれない……いい?止まったり振り返らないように走るよ」

とルリ子に言いました。

ルリ子は頷き、手を固く繋ぎました。

自分はその辺の棒切れを掴んで、無駄な事とは思いながらもそれを振り回しながら走りました。

悪霊たちが追ってきているのを背中越しに感じながらも走りました。

そして鳥居が見えてきました。

「鳥居をくぐれば大丈夫だから!!もうすぐで逃げられるよ!!」

とルリ子に声をかけながら走り続け、ついに鳥居を抜けました……

逃げ延びた安堵感でいっぱいになり、二人してその場に座り込みました。

しかし顔を上げると、なんと悪霊たちがすぐ傍まで来ていました。かなりの数がいたと思います。

あの時は四~五体くらいだったのに……

浄化が少しづつ行われて数は減っているはずなのに……

しかも、どうして神社から出てこられるんだ?お守りを持っているのに、なんでそこまで近寄れるんだ?

さっきまで大丈夫だったのに……

恐怖に震えながらも、そんな考えが浮かび上がってきました。

そして悪霊たちが、自分らに更に近寄って来たのです。

「いゃああああ!!なんで?どうして?私たちが何をしたっていうの?許して!!許してよぉおお!!助けてー!お母さん!お母さん!」

ルリ子が泣き叫んでいました。

自分も叫んで助けを呼びましたが誰も気づきません。

それどころか、街灯や民家の明かりなどが一切無いことに気づきました。

そして、悪霊が自分らを引きずり始めました……

自分はあの時の様に、あぁ……俺……これで死んでしまうんだろうなぁ……と考えていました。

ルリ子は気を失ったのか、もう叫んでいませんでした。

自分らが鳥居の中に引きずりこまれ始めた時、バチ-ーーーン!!と大きな音がしました。

その音に我に返り周りを見ると、悪霊たちの姿は無く、街灯や民家の明かりも見えていました。

ルリ子も突然のことに呆然としていました。

「え?助かったの?」と、自分らは顔を見合わせました。

すると、腕につけていたお守りが、二人とも壊れているのに気づきました。

まさかこれが身代わりに?と考えていると、向こうから大人たちがやって来ました。

その中には退魔士の人たちや、なんと兄もいたのです。

自分は事情や状況を話しました。きついお叱りも受けましたが、皆優しく迎えてくれました。

中に残ってる人たちを連れ戻すために、退魔士と大人たちが行くことになりました。

それとなんと、兄も同行するらしいとわかりました。

「俺も無関係じゃないしな。俺をきちんと浄化するには、もう一度入らないといけないらしいし」

と言ってました。

そして、自分も同行を希望しました。

当然のように大反対をされましたが、自分の責任でもあるし、そしてなによりも、絶対に自分で確かめないといけないことがあるからでした。

自分も一歩も譲らず頼み込んでいると、絶対に単独で行動しない事、皆から離れない事を条件に、了承してくれました。

ルリ子を見ると、どうして自分が行こうとしているのか、確かめたいことがなんなのかを、解かっているようでした。

自分は恐怖心を振り払いながら、皆について再び神社の中に入って行きました

道中、兄に兄の友達のことを話すと、兄は涙を流しながら、

「うん……そうか……あのな……あいつら……ついこの間……息を引き取ったんだ……俺のとこにも来たよ……そっか……お前を守りに行ってくれたんだな……ありがとう、ありがとう……」

兄は泣きながら、あの子達にお礼を言ってました。自分も泣きながらお礼を言いました……

そしてしばらく歩いていると、兄に変化が出たんです。

いきなり倒れこんで、苦しそうに顔をゆがませていました。

よく見ると、兄に悪霊が圧し掛かっていました。

すぐに退魔士の人が除霊を施したのですが、なかなか祓えませんでした。

数人掛りでやっと祓うことが出来ました。

その後、クラスメイトは神社のご神体(と思われるもの)の前で見つかりました。

中は血の海でした。自分はたまらず嘔吐してしまいました。

すぐに救急車が呼ばれ、運ばれていきました。

幸い、重傷ではあるものの命に別状はないとの事で、少し安心をしました。

しかし、霊が肉体に直接傷をつける事ができるのかと疑問に思いました。

そして……神社の裏の大木で、水沼が遺体で見つかりました。

自分は見るなと言われて見ておりませんが、自分が確認したかったのはこれの事だったんだと改めて認識しました。

理由は後ほど語ることにします。

それから、もうこのままにしてはおけないと、退魔士の人たちが大掛かりな浄化を行うことになりました。

本来はまだ、変質しているとはいえ神がいる状態なので、少しづづ行い、神を徐々に元の姿に戻していくのが最善だったらしいのですが、事は急を要する為に、やむを得ず行うことになったそうなんです。

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数日後、その浄化の儀式が始まりました。

自分はマサヤなどで除霊儀式などを見たことありますが、全く規模が違いました。

自分とルリ子も当事者なため参列することになりました。

自分はこの光景を一生忘れることはないと思いました……

この事件ですが、死者が出たにも関わらず、新聞沙汰などにはなりませんでした。

どうやら、退魔士関係の人たちや町の人たちが根回ししたようでした。

自分は事実を知ることでの感染を防ぐ為だと思っていましたが、別の理由もあったのです。

その理由も先ほどの自分のことと同様に、この数年後に判明することになりました。

今回の事件の真相も……

あの後、自分は高校に進学して、高校を卒業するとそのまま就職して町を出ました。

ルリ子は高校卒業後は大学に進学して、自分と同じく町を出ました。

自分たちは同棲という形で一緒に暮らして、ルリ子の大学卒業後に結婚しました。

それからさらに月日が経って、自分たちに娘が出来て、その子が五歳になった時に、実家で法事がある為に帰省する事になったのです。

実家に帰る途中。自分たちはあの神社の前を通りました。鳥居や神社自体も新しくなり、昔と全く違う様子でした。

あの事件。一人の死者が出てしまった事件。

あの時、自分が水沼の死を確認しなければならなかった理由、それは……

「ねぇ……マサヤ……あの時さ……私たちがここで襲われてる時……あの悪霊の中に……水沼がいたよね?それを見たから、あの時確認に行ったんでしょ?」

ルリ子は思い出した様に言いました。

「うん……」

そう答えると、二人とも黙ってしまいました。

「ママ……おトイレ行きたい」

娘のユウカがそう言い出し、自分たちは実家へ急ぎました。

実家に帰って少しくつろいでいると

「ユウカ、お外で遊んでくるー」

と娘が言ってきたので、

「車に気をつけてなーあんまり遠くに行くんじゃないぞー」

と声をかけました。

そしたらなかなか娘が帰って来ないので、心配して探しに行こうとしたら、半ベソかきながら帰ってきました。

「どこに行ってたんだ。心配してたんだぞぉ」

と言うと、娘の口から信じ難い言葉が出てきたんです。

「あのね。変なお兄ちゃんが、こっちにおいでって言ってきたの。ユウカ行かないって言ったら、お手々引っ張られたの……それでね、後ろから違う人に引っ張られて、お寺(あの神社の事)に入れられて、出れなくなってたの」

自分は驚愕しました。まさか……と。

隣にいたルリ子も顔が真っ青になっていました。

「それで?どうなったの?何にも見なかった?体はなんともないの?」

とルリ子が慌てて確認すると、

「うん……なにも見てないよ……少し待ってたら、ドアが開いたから、帰って来たの……パパ、ママ、ごめんなさい」

泣き出したユウカを、ルリ子が抱きしめて必死でなだめました。

自分はすぐに兄に連絡を取りました。

兄はあの後に、そのまま本山に戻り修行をしたいと申し出たのです。

兄に色々思う所があったらしく、両親や退魔士の方たちの了承を得て本山に行きました。

兄は直ぐに電話に出ました。

『おぉ、マサヤか。久しぶりだなー。俺も明後日くらいに戻る……お前……なんでそんな状況になってるんだ?なんだそれは!お前何があった!』

兄は何か気づいたみたいで、自分が状況を説明すると、

『いますぐ町から逃げろ!いや……手遅れか……いいか?いますぐ両親やあの神社の管理人に言って、あの神社に立て篭もるんだ。絶対に出るなよ!俺らもすぐに行くから』

「は?冗談だろ?なんであの神社に……どういう事だよ!」

自分はサッパリ状況が掴めず困惑していると、

『お前らを狙ってる奴な、マジで洒落にならん!怨霊とか邪霊とかそんなレベルじゃない。まさに魔物だよ!信じられん……どうやったらそんな風になれるんだ……いいか。すぐに神社に行くんだ!』

と言って電話が切れました。

自分は困惑しながらも皆に事情を話し、また大騒ぎになりつつも神社に立て篭もりました。

そして、ご神体のある部屋で朝を待つ事にしたのです。

深夜遅くなり、そろそろ眠気がきた時、

「おい!俺だ!来てやったぞ!開けてくれ!」

と、兄の声が正面の入口から聞こえてきました。

しかし、自分たちは兄のはずがないと思い、

「入りたいならそっちの方から入ればいいだろう」

と言いました。

自分とルリ子は、そいつが誰だか判っていました。

「水沼……水沼なんだろう?判っているんだよ……どうしてなんだ?どうして俺たちを……」

と言った瞬間に入口が開き、そこには当時のままの水沼がいました。

「あ……ユウカを連れて行こうとしたお兄ちゃん」

とユウカが言いました。

やっぱり……自分はそう思いました。

そしておそらくは、ユウカを後ろから引っ張って神社にいれたのは、この神社に祭られている神様なんだと思いました。

正常に戻った神様は、あの事件の被害者である自分たちの娘を守ってくれたのだと感じました。

この神社に入ってご神体のそばにいて、そんな気がしていたのです。

「あのお兄ちゃん、どうして体が真っ黒でお目々がないの?」

と娘が言いました。

そして水沼を再び見てみると、全身がどす黒いオーラのように包まれていました。

目もないのではなく、真っ黒な目だったのです。

そして此処にいるだけで気を失いそうになるくらいの憎悪、怨念、殺意などの波動が溢れ出ていました。

魔物。

兄が言った事を思い出しました。まさに魔物でした。

どうやったら、人間だったものがこんな風になれるのか……

自分は家族を守る使命感と、目の前の存在に対する恐怖心で震えていました。

自分たちと水沼はしばらく睨み合ったままでした。

おそらく水沼は、自分たちに襲い掛かろうにも、ご神体が邪魔して入る事は出来ないのだろうと思いました。

自分は二人の盾になるように前に出て、ルリ子はユウカをしっかりと抱きしめていました。

そして、朝になれば水沼の力も弱まり、駆け付ける退魔士たちに今度こそ浄化される……

水沼はそれを解っているかの様に、自分たちとご神体を凄い形相で睨みつけていました。

そして何かを口走り、真っ黒な目で自分とルリ子、ユウカを交互に睨みながら、消えていきました……

朝日が昇っていたのです。

自分は終わった……と安堵しました。

ルリ子は泣いていました。

ユウカは寝ていました。

しばらくして兄たちが駆け付けて来て、改めて浄化を行う事になりました。

相手が相手なだけにかなり手こずってたみたいですが、無事に浄化が終わったと告げられました。

そして自分たちはご神体の部屋に呼ばれて、今回の事、そして前回の事件の発端と真相を語られる事になりました。

まず水沼ですが、あそこまで魔物化してしまうと浄化や浄霊は不可能との事で、消し去るしかなかったと言われました。

魂の消滅。

それは、前世から続いてる魂をなかった事にされ、あの世に行く事はおろか、生まれ変わる事も出来ない、本当の死。

これ程恐ろしい事はないと思いました。

そして、前回の事件で水沼は変死だと聞かされてましたが、真相は自殺だったそうです。

クラスメイトの怪我も、水沼の仕業だったと言われました。

あの悪霊たちをあの時操っていたのが水沼だった事も、始めから自分とルリ子を標的に計画された肝試しだったらしいという事も告げられました。

水沼を浄化した時に全て判ったと兄は言っていました。

水沼は自分を、些細な事から恨み(この時はまだ小さなものだったらしいです)始めたという事でした。

それからは何かと水沼は自分と比べて、殆ど逆恨みに等しい恨みになっていき、腹いせに自分の彼女(ルリ子)を取ってやろうと思い、言い寄った事があると言う事でした。

これについては、ルリ子からも聞かされた事があります。

しかしルリ子は全く振り向かず、次第に水沼はルリ子に本気になっていったらしいのです。

でもルリ子が全く振り向かない為、段々と憎しみに変わり、やはり恨みの矛先を自分に向けたという事でした。

そんな時に、あの神社の事件に自分が関わっている事を知った水沼は、(おそらく大人たちが話しているのを偶然聞いたのだろう、と言っていました)あの神社へ行き、あの大木に「マサヤを呪い殺せ」と叫びながら藁人形に釘を打ち込んでいたと言うのです。

神社の悪霊たちは水沼を取り込もうとしたけど、あまりの怨念の凄まじさに逆に利用される形になってしまったと……

そして水沼は、自分自身が悪霊になって俺を取り殺し、ルリ子を自分の元に引きずり込もうと、最悪の決断をしたのだそうです。

他のメンバーは、ただの生け贄程度にしか考えていなかったそうです。

最初はルリ子も他の人もろとも殺そうと考えましたが、お守りや兄の友人に邪魔されて、
急遽自分を偽の電話で呼び出す事にしたそうです。

あ、重要な事を言ってませんでした。

肝試しが始まった時は、水沼はすでに死んでいたそうです。

大木に打ち付けてある自分に見立てた藁人形を、睨みつけている様に首を吊っていたとの事でした。(だからあの時、自分だけが見ない方がいいと言われたのでしょう)

悪霊を使役して自分たちを取り殺そうとしましたが、お守りがあった為に上手くいかず、悪霊を神社の外に出れるようにしたりして手を加えましたが、あの時、自分たちは見えてなかったけど、兄の友人たちが必死で自分たちを守っていたと教えられました。

そして、お守りが身代わりになる様に弾けた為、その力で神社に押し戻されたという事なのです。

浄化の際には、大木に身を隠して浄化されたと見せ掛けて、怨みを募らせながら機会を伺っていた。

そして、ユウカを見つけた水沼が再び行動を起こしたというのですが、今度はかつて自分が利用しようとしたご神体に阻まれ、その憎悪に終止符を打たれたという事でした。

自分はなんて言っていいのか判りませんでした。

自覚なかったとはいえ、自分が発端になっていた事を知り、ショックを隠し切れませんでした。

「そっか……だから水沼は消える間際に……」

他の二人はよく聞こえてなかったらしいのですが、自分にはハッキリと聞こえていました。

「なんで……どうして……いつもお前ばかり……」

自分は泣いていました。

巻き込んだ人に対して、水沼に対して申し訳ない気持ちと、自分に対しての怒りで泣きました。

「もう終わったんだよ?大丈夫、大丈夫だから」

ルリ子も泣きながらそう言いました。

「パパ、ママ、どこか痛いの?さっきのお兄ちゃんになにかされたの?」

ユウカが心配そうに見つめていました。

自分は二人を思い切り抱きしめて泣きました。

もうあの悪夢は終わった……そう思い、自分は罪悪感と安堵感に包まれていました。

あの事件の後、自分たちは亡くなった人たちのお墓を回りました。

兄の友人たちのお墓で深い感謝の気持ちを伝え、毎年お参りに来ると約束しました。

水沼のお墓にも行きました。

本当は実家にもお線香をあげに行きたかったのですが、引っ越した後で行方が判らないとの事でした。

魂のないお墓……自分は水沼になんと言えばいいのか判らず……線香をあげて手を合わせて祈る事しかてきませんでした。

あの水沼に襲われて怪我をしたクラスメイトたちも、今は皆元気にしているそうです。
(神社に入ってからの記憶は無いみたいですが)

近々同窓会でも開こうと通達が来ました。

あ、それから、娘のユウカも今は小学校に上がり元気です。

あの後、どうも神様に触れられたユウカは特別らしくて、退魔士の方たちが

「うちにお向かえ頂く事はできないでしょうか?」

と頼み込んできました。

無論、丁重にお断りしましたが……

ユウカの霊的防御力は凄まじい物になっているらしく、並の悪霊とかは近づくことすら出来ないと言っていました。

喜んでいいのやら……ルリ子は苦笑いしていましたけど……

後、他の神社などに行った時に、自分たちは守ってくれている存在がいっばいいると告げられました。

皆が守ってくれている……自分は彼等に、感謝の気持ちを一生忘れないと思います。

最後にあの神社ですが、今では昔の面影も無く、境内で子供たちが遊んでいたり、たまに祭が開かれる等、大変賑わっています。

でも、自分たちはあの事件を忘れません。

亡くなった人の為にも、これから神社に行く人の為にも、この話をなるべく正確に伝え、忘れられない様にする為に、自分はこうして投稿を決意しました。

(完)

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